開催された国会では午後の本会議で行った首相指名選挙で、安倍晋三自民党総裁を第98代首相に選出し、安倍首相が312票と定数465の3分の2超の得票を集めたという。立憲民主党の枝野幸男代表は60票で希望の党の渡辺周元副防衛相は51票だったし、民進党の大塚耕平代表が16票だった。衆議院議長に自民党の大島理森前議長と副議長に立憲民主党の赤松広隆元副議長が本会議で選出された。菅義偉官房長官は首相官邸で第4次安倍内閣の閣僚名簿を発表したが、第3次安倍第3次改造内閣の全閣僚が再任された。安倍晋三首相は皇居での親任式・認証式を経て第4次内閣を発足させ、その後に記者会見を行い政権運営方針などについて説明することになる。
その国会運営だが自民党が仕掛けたのは野党の質問時間を制限する作戦で、通常国会から首相らの頭痛の種となってきた「森友・加計学園疑惑」はまったく解明が進んでいないのに、安倍首相は「真摯に丁寧に説明する」と繰り返してきたが今回の質問時間見直しの動きは、「国会審議で野党追及の時間短縮を狙ったものであることはミエミエ」なのだ。安倍首相らは自民圧勝という結果にも「謙虚」を合言葉に笑顔も封印してきただけに「早くも地金が出た」と批判されても仕方がない暴挙なのだ。野党側は「とんでもない暴論で妥協の余地もない」などと猛反発しているが、与野党の国会でのそれぞれの質問時間は国会運営上の慣例として議席数に比例させずに野党側に多く配分されてきているのだ。
論戦の主舞台となる予算委での質問時間配分をみると政権交代前はおおむね与野党は「 3 対 7 」だったが、民主党政権下で強力野党だった自民党の要求で「 2 対 8 」となり、第 2 次安倍政権以降も基本的にそれが踏襲されてきた。自民圧勝で多くが勝ち上がった当選 3 回組の一部議員が「われわれは『魔の 2 回生』と呼ばれ、大勢なので質問の機会も少なく、週刊誌などで『働かない議員』などと批判されてきた」として党執行部に議席数に見合った質問時間の確保を直訴した。これに安倍首相も理解を示したことから自民党側が時間配分の「 7 対 3 」への逆転を提案したというのが経緯だというが、自民党の幹部も「あれは言い値で、落としどころは『 4 対 6 』あたり」が本音とみられている。
この提案に野党側は「もともと野党時代の自民党が要求したもので、手の平返しも度が過ぎる」と折り合う気配もないが、野党側も民進分裂の後遺症などで国会戦略はまだ定まっていない弱みもあるというのだ。特に希望の党は代表質問などで自民追及の先頭に立つはずの共同代表が不在で特別国会後の選出を想定しており、このため自民党が当初提案した特別国会の会期 8 日間を 1 カ月程度に拡大した場合は、会期中の共同代表選実施という異常事態ともなりかねないという。それでは野党が要求する安倍首相の所信表明演説と各党代表質問や、衆参両院での予算委審議や疑惑解明のための集中審議や証人喚問に対応するための野党態勢づくりがすべて後手に回り「与党を利する結果」にもなりかねないという。
今召集されている国会はいわゆる「加計疑惑」に絡んで政府が先送りしてきたとされるが、文科省大学設置審議会での加計学園・獣医学部新設認可に関する最終決定や、森友学園問題での会計検査院の検査結果公表は、いずれも 11 月中に予定されているというのだ。だからこそ政府・自民党は「本格的な野党の追及」を年明けに先送りしたい思惑もあって、質問時間配分や国会会期設定で野党を揺さぶっているというのだ。しかも8月に発足した改造内閣を「結果本位の『仕事人内閣』」と命名しているのに、閉会中審査を除けば既に本格論戦なく3カ月がたっても全員が留任されている。政治学者も「仕事人のはずが国会にこれだけ閣僚が来ないのは前代未聞。国難ってモリカケのことなのか」と憤っているというのだ。
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