電柱や電線の地中化促進に向け政府が制度整備に着手するというが、災害時に救急車や物資輸送の車が通る「緊急輸送道路」での電柱の新設を禁止するないようだという。地震などで電柱が倒れ緊急車両の通行や住民の避難行動に遅れが出るのを避けるのが狙いで、国が管理する緊急輸送道路では昨年 4 月から電柱新設が禁止され、昨年末には新設抑制などを促す「無電柱化推進法」も施行されている。緊急輸送道路での電柱の新設を禁止している自治体は 10 都府県と 2 政令市となっているが、私の住む愛媛県の道路維持課は「電柱を減らしていくきっかけにしたい」として、行政や電力・通信事業者などでつくる「県無電柱化協議会」などを通じて各市町村にも積極的な取り組みを呼び掛ける方針だと聞く。
日本でも電線地中化の流れが戦前からあったそうで、東京都文京区などで整備が進められていたという。戦前の満州の植民地に日本軍が建設した都市でも電線地中化が行われていたそうなのだ。太平洋戦争時の米軍空襲により都市は焼け野原にされ、戦争のショックから速やかに復興するために「一時的に」という名目で電柱が立てられていったというのだ。電線を地中に埋設すると架空線をかけるよりも高い費用がかかり、「まずは電柱で電気を送り、余裕が出てきたら地中化しよう」ということになったというのだ。ところが日本は高度経済成長期に突入し電気や電話の需要がどんどん高まり、電柱を次々に立てて対応しなければならず本来は「一時的」のはずだった電柱が「当たり前」のものになっていったのだ。
今回の無電柱化は幹線道路を中心に進められ道路法を改正し、歩道も無電柱化の対象に含めることなどが柱だが、政府は2020年東京五輪・パラリンピックを契機とした国内全域の「バリアフリー都市」化を目指しており、まずは高齢者や障害者の通行の妨げになる電柱について地中化を義務づける方針だという。政府・自民党が推進する無電柱化プロジェクトを「景観・観光」だけでなく「安全・快適」や「防災」の観点から民間の立場で応援するというものだが、無電柱化を目指す「~上を向いて歩こう~無電柱化民間プロジェクト」が公募していた公式キャラクターのネーミングが「無柱君(むちゅうくん)」に決定したという。選考理由は無電柱化を進めていることがわかりやすく「むちゅう」という愛嬌のある響きがその選考の理由だという。
「日本には 3500 万本の電柱があり、さらに毎年 7 万本増えています」と、日本の無電柱化は諸外国に比べ進んでいないと訴えている電柱をなくそうというプロジェクトの公式キャラが電柱では、愛嬌はあるけどつぶらな瞳から切なさを感じるという人も少なくなさそうだという。「~上を向いて歩こう~無電柱化民間プロジェクト」は葛飾北斎の赤富士に電柱が写り込んだキービジュアルを発表したところ、「たしかに電柱は邪魔」と賛同する声があがった一方で、「逆にいいかも」とか「これも日本の原風景」といった意外な反応があって話題となったというのだ。このキービジュアルには葛飾北斎の名画が電柱や電線で台無しになってしまうさまを表現したものなのだがツイッター等では「逆にかっこいい」という意見も多いという。
街を歩きながらふと視線を上げたら電線にとまって羽根を休める鳥たちの姿が、こういった光景は日本ならではのもので、先進国では電柱のあいだに空中に張り渡した電線を通すのではなく地中に電線を埋める方法が主流となっているのだ。今回の道路法改正のほか電気事業者の工事費用に対する補助金制度を新設するとされ、電気事業者の負担を軽減することで工事を加速する狙いがあって、これらを盛り込んだ「無電柱化推進計画」を今春頃までに策定する方針となっている。日本には現在、約3550万本の電柱があるうえ年に7万本ずつ増えており、無電柱化が比較的進んでいる東京23区で8%に大阪市で6%にとどまっており、100%のロンドンとパリや95%の台北だけでなく46%のソウルなどと比べ率の低さが際立っているという。
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