大分県と愛媛県を結ぶ「豊予海峡ルート構想」の実現を目指す大分市は、新幹線用の海底トンネルを整備した場合の調査結果をまとめたそうなのだ。従来から海底トンネルや橋で結ぶ「豊予海峡ルート」について工事手法や費用・完成後の経済効果を試算した調査結果は公表されてはいたが、この「豊予海峡ルート」はフェリーで1時間以上もかかるが新幹線なら片道38分で結ぶことができるという。私は仕事で伊方町の佐田岬の先までよく行ったことがあるが、ここから大分県の東端の佐賀関半島の関崎はすぐそばに見えるのだ。調査結果ではJR大分駅とJR松山駅間で1日往復32本の運行が可能で、最速約36分で結ぶことができるとし1日当たり約6800人が利用すれば採算性が確保できると結論づけているという。
この「豊予海峡ルート」は道路と鉄道とを総称するもので、平成 9 年度に種々の横断技術として橋梁案とトンネル案や交通モードとして自動車と鉄道を比較する調査を行っており、「豊予海峡ルート輸送方式比較検討調査報告書」を公表している。その報告書によると橋梁の場合は道路橋単独なら技術的に可能であるがスパンが長大化するため、鉄道橋や併用橋としての供用は困難であるとされている。橋梁案では 大分県と愛媛県は平成 7 年から共同で架橋の技術的可能性についての調査や自然条件や社会的条件などの基礎的調査を行っており、平成 10 年 2 月に公表された 「豊予海峡架橋調査報告書」において、架橋は技術的に可能であるという結論に達し国の総合的な開発項目にもなっている。
この「豊予海峡架橋調査報告書」での架橋案は中央主塔高 376m で中央支間長 3,000m の橋長約 8,400m の 4 径間吊橋を主橋梁とし、 2 つの橋梁により豊予海峡を結ぶもので総延長は約 12.7km としているが、橋の費用はトンネルの2倍になるため、大分市は海底トンネル案を軸に国や大分県に四国各県に整備の必要性を訴えている。 海底トンネル案では四国新幹線建設を前提として豊予海峡のトンネル部分の調査を行っており、海底トンネル方式の場合トンネルは最深部で -335m となるが、青函トンネルの技術を活用することで実現可能であるとされ、「豊予海峡ルート輸送方式比較検討調査報告書」ではトンネルの場合には鉄道については特に制約がなく、自動車についても換気技術の限界があるものの対応は可能としている 。
現実に豊予海峡に新幹線を建設するならば岡山方面からの四国新幹線や、小倉方面からの東九州新幹線とセットになるという。調査結果によると単線のためすれ違いや追い抜きに必要な中間駅を大分市佐賀関と愛媛県伊方町や大洲市付近に設けた場合、松山駅から大分駅に直行する下り列車の所要時間は約36分で上り列車は約43分となり、各駅停車は下りが約59分に上りが約53分と見積もっている。この結果1日往復32本の運行ができるとしており、北海道新幹線や九州新幹線を参考に旅客運輸収入や経費などを計算したところ、1日当たり約6800人が利用すれば営業収益は年間141億円となるとし、大分市は調査で1日当たりの利用者数を約1万8000人と推計していることから採算性にも問題がないとしている。
大分市はトンネルと橋だけでなく鉄道と道路を組み合わせた計11パターンの概算事業費を試算し、新幹線を海底トンネルで通す場合が最も安い6800億円になると導き出している。この海底トンネル案が最も実現可能性が高いとして、専門業者に委託してルートやダイヤに営業損益などを調査したところ初年度から黒字になると見込まれるという。大分市企画課は「豊予海峡を新幹線でつなぐことは実現性があり、地域活性化に向けて大きな意義がある。国や四国側の自治体だけでなく、県内でも機運の醸成を図っていきたい」と話している。また大分市の佐藤樹一郎市長は「国が1973年に基本計画路線とした大阪-四国-大分間の四国新幹線が最も現実性が高い」と国へ働きかける方針だという。
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