残業時間の上限規制や非正規労働者の待遇改善など企業にとっては規制が強化されるが、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」を導入する規制緩和策も盛り込まれた 働き方改革関連法が成立した。労働者はそれぞれの立場から、成立をどう受け止めたのか。「会社は絶対に高度プロフェッショナル制度を適用してくると思います。年収要件が引き下げられ対象が拡大したら体を壊す人が増えるでしょう。責任感のある誠実な人間ほど無理をしてしまうんです」と東京都内の外資系IT企業で働くシステムエンジニアの男性は言う。いわゆるバブル世代に就職したが何度か大規模なリストラがあり、入社時に200人いた同期は片手で数えられるほどになったそうなのだ。
この外資系IT企業で働くシステムエンジニアの男性顧客は金融業界や流通業界だというが、常に複数の仕事を抱え深夜労働が常態化しているという。新規プロジェクトの開発やシステムの入れ替え時には徹夜になることも多く、裁量労働制を適用され何時間働いても「みなし労働時間」分の給与しか支払われないというのだ。効率的に仕事を進めれば次の仕事が回ってくることもあって「裁量はありません」と言い切っている。職場では午後10時に「蛍の光」が流れるのだが賃金の深夜割り増しの合図で働き方改革の一環で始まってはいるが誰も席を立たないそうなのだ。割増賃金の受け取りは上司への事前申請が必要だが「理由を問い詰められるのが苦痛で、出してません」と話している。
高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度では、対象が年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントに研究開発職など、「働いた時間と成果の関連性が高くない仕事」が想定されその職種は省令で定められることになっている。高度プロフェッショナル制度は労働時間を管理する必要がなくなる分過労死しても事後の検証は難しくなるとされ、労働法制上で初めて労働時間規制をなくす制度に「会社による労働時間の管理から外れれば、働かされるだけ働くことにならないか。制度を適用される時には、社員は言われるままにハンコを押すことになると思う」との懸念がなされている。適用者は本人の意思で離脱できるという規定はあるが「働く側に選択の余地はあるのだろうか」とされている。
都内で派遣社員として働く女性 は「非正規は、チャンスさえ与えてもらえない。努力だけではどうしようもない理由で差別されているんです」と言うが、正社員との待遇差で納得できないのは賞与だという。今回成立した働き方改革関連法は同一労働同一賃金で仕事内容が同じ場合の差別的な扱いを禁じ、さらに仕事内容が同じでなくても「不合理な相違を設けてはならない」としている。基本給の格差解消はハードルが高いというが手当や賞与にはある程度の効果があると期待されているという。この都内で派遣社員として働く女性女性は「賞与が労働者への利益配分なら、派遣社員や契約社員にも還元してほしい。悔しい思いをしながら、みんな頑張っているんです」と改善に期待しているという。
野党は「長時間労働を助長し、過労死を増やす」として法案からの高度プロフェッショナル制度の削除を求めていたし、残業時間の規制は最長「月100時間未満、複数月の平均で80時間」とする上限が過労死ラインにあたるとの指摘があったものの見直されなかったという。 参院厚生労働委員会は省令で定める高プロの対象業務の明確化などを政府に求める47項目の付帯決議をしているが、この働き方改革関連法の適用は人手不足への配慮や制度運用までの準備期間として先延ばしにされる項目があって、残業時間の上限規制は中小企業が一年遅れの2020年4月となり、自動車運転業と建設業や医師はそれから4年後だという。また同一労働同一賃金も大企業が2020年4月なのに中小企業は1年後の施行だという。
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