コンビニエンスストア大手である「セブン-イレブン・ジャパン」はキリンビールと組んで、首都圏の数店舗でビールサーバーによる生ビールのテスト販売を始めると明らかにしたという。Sサイズ100円に設定し仕事帰りなどの「ちょい飲み」需要を掘り起こすという。テスト販売後に売れ行き動向を分析し今後の展開を検討するというが、サーバーを店頭のレジカウンター横に設置し客はレジで年齢確認を受け、SサイズとMサイズの専用カップを受け取り、サーバーのボタンを押して注ぐというレジ横のコーヒーマシンを使う「セブンカフェ」と同じスタイルだという。コンビニ各社はカウンターでの「100円コーヒー」を本格展開し喫茶店などの客を奪ったが、生ビールの導入が広がれば外食店などにも影響を与えそうだといわれていた。
私も「より多くのお客様に完璧な生ビール体験をお楽しみいただく」ため、黒ラベルのイメージカラーである黒を基調にデザインされた キャンピングトレーラーが全国 7 都市をキャラバンする移動式のビヤガーデンが私の住む松山市にやってきたときに、そのキャンピングトレーラーでビールを 2 杯立ち飲みするほどのビール好きなのだが、コンビニでサーバーからつぎたてのビールが100円で飲めるとなると普段はコンビニなど利用しない私でも興味を持っていたのだ。ところが残念なことにセブン-イレブン親会社のセブン&アイ・ホールディングス広報は「想定以上の需要が予想され供給が追いつかないと判断した、今後の販売日程は未定」ということで、この生ビールのテスト販売開始を中止したというのだ。
連日 35 ℃を超えるというこの暑さでビールがうまい季節となっているが、一方で「ビール離れ」も盛んに報じられ、新聞で「ビール冷え続ける人気」とか「今年上半期の出荷 最低更新」という見出しの記事を見かけたのだが、ビール会社大手 5 社の発表によると上半期の出荷量が前年比でビールがマイナス 6.3 %で、発泡酒がマイナス 8.4 %の第 3 のビールはプラスで 1.9 %増となり、全体では前年比マイナス 3.6 %の 1 億 8338 万ケースになったという。大手 5 社全体としての出荷量が落ちていることはわかったが、しかし大手メーカーのナショナルブランドの出荷量が落ちたからといって「ビール冷え続ける人気」とかいうのは早計らしく、サッカーW杯人気でビールの消費量が増えたともいわれているのだ。
また「地ビールメーカー動向調査」ではクラフトビールも 7 割以上のメーカーが前年より売上を伸ばしているという結果が出ているし、都内ではいま自家醸造ビールを飲ませる「マイクロブルワリー」が雨後のタケノコのような勢いで増えているという。「ナショナルブランドでなければビールにあらず」という時代はもう過去のものと言ってよく、実はこの「大手ビール離れ」と「他飲料のシェア増大」や「クラフトビール好調」という流れは海外特にアメリカのアルコール飲料市場の動きと酷似しているというのだ。アメリカも近年までは「アルコールと言えばビール」で、「ビールと言えば大手」という風潮だったが、気鋭のワイナリーやクラフトビールを醸造するマイクロブリュワリーの躍進もあってより多様なアルコール飲料が飲まれるようになっているという。
そのうえ 20 ~ 30 年前に比べれれば居酒屋の宴会場で大量のビールの飲み残しを見ることもずいぶんと減っており、適正量のビールが注文され飲まれるようになっただけなのに「ビール 冷え続ける人気」という見出しを打たれてしまうのが現実のようなのだ。「冷え続け」ているのは国内の「ビール」そのものではなくビール市場を取り巻く環境で、ビールに関わるプレイヤーが多いほどそしてそのすそ野が広いほど文化は多様になり熟していくのは、アメリカも日本も変わらないはずで、大手ビールメーカーのあのジョッキで「クーッ」とやるのもいいし、マイクロブルワリーのあの 1 本をゴクゴクと味わうのもまた楽しいのだ。悩ましさが増すほどのどを潤したときの多幸感は増幅するわけで、今年もビールがとびきりおいしい季節がやってきたのだ。
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