悪法と言われている働き方改革関連法が順次施行されるのに伴い、来年4月から年次有給休暇の取得義務化が始まるという。私の住む愛媛県でも職場への配慮やためらいなどで有休取得率は低迷し、厚生労働省の全国調査では一昨年度の有給休暇取得率は全国平均の 49.4 %を下回る 45.7 %にとどまっている。義務化で大幅改善が期待される一方で人手不足に悩む業界や小規模の事業所は対応に追われそうだという。義務化は改正労働基準法に規定され年 10 日以上の有休を付与されている労働者が対象なのだが、現行法では労働者の申し出による取得のみだったが5日分については本人の希望を踏まえ、事前に時季を指定して与えられ違反した企業は 30 万円以下の罰金の対象になるという。
企業は 6 ヶ月以上継続して働いている労働者に有給休暇を与える義務があり、条件に当てはまればパートやアルバイトであっても正社員と日数は異なるが有給休暇があるのだ。一般の労働者は 6 ヶ月以上継続して働きその間 80 %以上出勤した労働者は最低 10 日の有給休暇を取得することができ、その後は1年ごとに有給休暇の日数が増えていくことになっている。就労時間が1週間に 30 時間未満のパートタイマーは勤務日数を基準に4段階に分けて有給休暇が与えられ、継続勤務 6 ヶ月・出勤率 80 %以上の場合に対象となり、勤続年数が増えるごとに有給休暇の日数が増えるのは一般の労働者と同じなのだ。そして有給休暇は労働者が好きな時に有給休暇を取るのが原則となっているのだ。
労働者も労働基準法で定められた権利としての有給休暇の取得のありかたと、勤務先の規定をよく知って有給休暇を有効に活用するべきで、中小企業団体中央会の労働事情実態調査によると労働者1人平均の年次有給休暇は 15.71 日で、このうち取得したのは 7.68 日の取得率は 48.9 %だったという。取得率を産業別に見ると製造業は 50.5 %と半数を超えたが、非製造業は 47.1 %で、化学工業品製造が 61.8 %と最も高かった一方で最も低い卸売業は 35.8 %と 26 ポイントの開きがあったという。従業員数別では、 30 ~ 99 人の規模が 50.3 %と最高だったが、 100 ~ 300 人規模が 44.2 %で最低だったという。調査は県内に事業所のある従業員 300 人以下の中小企業 1300 社を対象に実施し 480 社が回答している。
今回の年次有給休暇の取得義務化における労働者の受け止めはさまざまで、人手不足と高齢化が課題の運送業界では トラック協会は 932 事業者のうち保有車両 20 台以下の中小零細事業者が 76 %を占め、経営者自らが運転に従事するケースも少なくないという。トラック協会の専務理事は「会員は厳しい環境の中で働き方改革に取り組んでいかなくてはならない。確実に守ってもらうため、協会として浸透を図りたい」と話し、本格実施を前にセミナーや講演会を開いて会員に周知しているという。人手不足が著しい介護業界も深刻で有料老人ホームを運営する男性は「ぎりぎりの人員でやりくりしている。職員に有休を取らせる分、私や管理職が身を削る場面が増えるかもしれない」と懸念しているという。
建設業関係でもハウスメーカー営業の男性は「今は人員が少ないので週休1日。義務化が始まったら仕事に支障の出ない範囲で有休を取りたい」と話すが、金融機関は取得を促進していて毎年 10 日間の有休を消化しているという。職場に気兼ねなく休めるよう「業務量を見直していくべきだ」と指摘もなされているが、働き方改革全般の相談に応じるため社会保険労務士会は労働局から委託を受けて「働き方改革推進支援センター」を開設しているが、社労士の派遣やセミナー開催などの活動が 66 件に上ったという。専門家も「中小企業では、有休取得により1人当たりの業務量が増えることや、取得に消極的な風土が根強く残っている。有給休暇の義務化を機に、経営者も労働者も意識を変えていく必要がある」と話している。
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