日本など11か国が参加する 環太平洋パートナーシップ協定が発効したが、政府は世界の国内総生産の13%を占める巨大な自由経済圏の誕生で、自由で公正なルールを世界に広げる重要な一歩だとして今後は参加国の拡大に率先して取り組む方針だという。環太平洋パートナーシップ協定は参加11か国のうち6か国以上が国内手続きを終えたことで発効条件が満たされ、日本時間でいうと去年の年末に発効したのだ。環太平洋パートナーシップ協定は域内の人口が5億人の世界の国内総生産の13%を占める巨大な自由経済圏で、協定の発効により域内の幅広い分野の投資やサービスのルールが統一されたほか、農産品や工業品の輸入にかかる関税も原則として段階的に撤廃されることになったという。
発効すればビジネス環境や暮らしの大きな転機となるはずで、自動車などの輸出拡大が見込まれ国内で輸入品が安く買えるようになるという。国内農業への影響を懸念する声も根強いが農産物の輸出で反転攻勢の好機ともいわれるし、環太平洋パートナーシップ協定発効で関税が下がり経済活動のルールが整備されるため、人やモノの流れの活発化が期待されることも考えられている。茂木敏充経済再生担当相は「消費者は海外の良い商品がさらに安価に手に入ることになる。日本企業はこれまで以上に海外展開しやすくなる」と語っている。自動車など工業製品は輸出増を見込むが、カナダ向けの乗用車は6.1%の関税が発効から5年目に撤廃され現行2.5~6%の自動車部品の関税は大部分が即時撤廃されるという。
マレーシアやベトナムでコンビニエンスストアなどへの外資規制が緩和され海外での出店がしやすくなるし、電子商取引ではインターネット上の動画などデジタルコンテンツの売買に関税を課さないことなどを規定しデジタル貿易が拡大する環境を整えたという。農林水産分野では日本は83%の関税を最終的に撤廃し、牛肉の関税は現在の38.5%が段階的に引き下げられ16年目に9%になるという。豚肉も段階的に引き下げられブドウやメロンなどは即時撤廃され海外産を安く手にできそうだという。農林水産省は安価な輸入品の流入で農林水産物の生産額が最大1500億円減ると試算しているが、政府は発効に先立ち5年前から毎年3000億円超を予算に計上して国内農業の競争力を強化する事業を実施しているという。
発効後は畜産農家の収益が悪化した際の補てんを増やすなどして影響を最小限にとどめたい考えだが、カナダは牛肉の関税26.5%を6年目にマレーシアはコメの関税40%を11年目にそれぞれ撤廃するなど日本の農産物輸出のチャンスも広がるという。政府は農林水産品・食品の輸出額を19年に1兆円にする目標を掲げ発効を追い風にしたい考えで、国産ブドウが原料の「日本ワイン」で生産量・出荷量とも全国1位の山梨県で、ワインを手掛ける「麻屋葡萄酒」の雨宮専務は「海外産には価格面で勝てず、打撃は避けられない」とみているそうなのだ。県ワイン酒造組合も「日本ワインの宣伝は始まったばかり。ワイナリーは孤軍奮闘しなければ負けてしまう」と警戒感を隠さないが努力次第競争力が高まるという意見もあるそうだ。
参加国は閣僚らが集まる環太平洋パートナーシップ協定参加国の委員会を開催し、新規加盟の手続きなどについて議論する見通しだそうなのだが、政府は年明けにも始まる米国との通商交渉を通じ、環太平洋パートナーシップ協定への米国復帰に望みをつないでいる。トランプ米政権は2国間交渉で自国に都合のよい通商協定を結ぶ戦略に自信を深めており、早期復帰の見込みは極めて低い状況だという。日本は対米交渉で物品関税を先行させ米国が重視するサービス分野などの交渉を後回しにする作戦だが、アジア太平洋地域で自由貿易圏作りが進む中で米農業界では、オーストラリア産などとの関税格差が広がることに警戒が強く、米国内で早期決着を求める声が高まれば交渉を有利に進めやすくなると見込んでいる。
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