東京・池袋で4月中旬に乗用車が暴走しはねられた母子が亡くなる事故が発生したが、運転していたのは当時87歳の男性だったという。全国の交通死亡事故全体が減っているのに対しその中に占める高齢ドライバーが起こした事故の割合は年々増加しているそうで、高齢ドライバーによる事故が後を絶たない中で 75 歳以上の運転免許保有者も事故件数も伸び続けると予測されている。それを防ごうと警察庁は高齢者の免許更新時の検査を強化し「免許証の自主返納」を呼びかけているが、応じない高齢者からは「ここではクルマがないと生きていけない。しかたない」という声があがっているそうなのだ。そこで全国各地の自治体では免許証を返納してもクルマがなくても生活に不便をきたさない施策を次々と打ち出しているという。
内閣府の「交通安全白書」によると交通死亡事故に占める 75 歳以上の運転者による事故の割合は8年前の 10.0 %から一昨年では 13.5 %へなるなど右肩上がりのペースでは 6 年間で 3.5 ポイント上昇しているという。これから 75 歳に達する世代は現在 80 代の「昭和ひとケタ」とはまた違う人生を歩んできており、学校を卒業して社会に出た 1960 年代は 1964 年に東海道新幹線が開通して前回の東京五輪が開催されるなど高度経済成長まっただ中、モータリゼーションの波が起きて「マイカー時代」が到来し自家用車が普及した時代だったのだ。企業も普通免許の取得を奨励していたので当時の若い世代は男性も女性も自動車教習所に通って免許を取って週末はドライブに出かけていた時代だったという。
だからこの世代は前の世代と比べて運転免許の保有率が高く「交通安全白書」によると、 75 歳以上の運転免許保有者数は 2017 年の 542 万人から 2020 年には 600 万人に増えると推計されている。かつて免許とりたてで運転未熟なドライバーは事故率が高く「危ない 18 歳」と呼ばれていたが、今後は警察庁調べの事故率上昇中の「危ない 75 歳以上」のドライバーが全国にあふれると言われている。自動車保険料もかつては 20 歳以下が最も高く 35 歳以上は全て最安値だったが、損害保険各社は 60 歳以上の自動車保険料を高くし 70 歳以上はさらに高くしているそうなのだ。高齢者は事故のリスクが高いと保険会社も認識しているわけだが、運転免許証を自主的に返納する人が年々増えているという。
免許を手放した人に思いを聞いたところ自宅近くの道路を車で走っていた時に、赤信号に気付かずそのまま十字路交差点に進入してしまったという。その瞬間に右側から車が走ってきて危うく衝突しそうになったが幸い事故は免れたという。70歳を過ぎた頃から自分の運転に「おやっ」と思うことがあり子どもに免許証の返納を促されることも度々あったという。それでもなかなか免許証を手放すことができずにいたが「今回ばかりは、もう駄目だと思った」そうなのだ。しかし増えているとはいえ自主返納している人数は 75 歳以上でたかだか 20 人に 1 人という割合で、残りの 19 人は「なぜ、自主返納をしないのか」というとかなり大きな比率を占めているのが「地方ではクルマがなければ生活に困る」という地域の交通事情を挙げた理由だという。
「まだまだ元気で運転できる」と自信を見せたり「見返りの特典が物足りない」といったりする声もあるが、この自分の意思で運転免許を警察署に返上し身分証明書代わりの「運転経歴証明書」の交付を受けられる自主返納制度は 1998 年に導入されたそうなのだ。私の住む松山市の場合松山市に住民登録している満 65 歳以上の運転免許保持者で免許証を自主返納した場合には、一部市有施設の割引も実施してきていたそうなのだが一昨年の申請分からは、「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」招待券と交通利用券をセットにした「飛鳥乃湯泉プラン」を新設し、従来の 5,000 円相当の交通利用券と選択できるようになっているという。また地方銀行各社も 定期預金の店頭表示利率に年 0 . 1 %上乗せした利率を 300 万円まで適用しているという。
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