平成の 30 年間で大きく変わってしまった「老後資金」の常識についてなのだが、「平成のはじめ」と「令和のはじめ」では老後を迎える環境は激変しているそうで、年金支給額が月 19 万 7000 円から 22 万 1504 円と約 12 %の増額となっているが、増加率は物価上昇に負けているだけでなく消費税も増税されているので実際の価値は大きく目減りしているという。定年退職金は 500 万円近くも減りそれを運用しようと思っても預貯金は超低金利で増えることはないし、「平成のはじめ」に 60 歳を迎えた世代は贅沢をしなければ「年金 + 預貯金の利息」でも暮らせた「逃げ切り世代」だったのに対し、「令和のはじめ」に 60 歳を迎える世代は少ない退職金や年金では長い老後をやりくりできず足りない分を稼がなければならない世代だというのだ。
平成初期は銀行の定期預金でも 6 %超の金利がついて放っておいてもどんどん増えていったというが、当時は物価も上昇していたが預金金利が物価の変動を示す「消費者物価上昇率」を上回っていたので十分補えたという。たとえば平成 3 年の郵便局の定額貯金の金利は 6.33 %で半年複利だったので、 100 万円を 10 年預けておけばそれだけで 169 万円まで増えたという。ところがインフレ率が金利を上回ると預貯金は物価上昇に負け預貯金だけだと目減りする時代になっている。定期預金に 100 万円を 10 年預けておいても 800 円しか増えないし、デフレ経済下であれば預貯金でも実質的なお金の価値は増えていたが、インフレ目標を掲げるアベノミクス以降は物価が上昇に転じて実質的な価値が目減りしているというのだ。
そこで定年後の稼ぎである「シニアの再就職」で就職や転職をサポートする仕組みということになるのだが、その世代にはまったくといっていいほど整っていないという。 60 代以上を対象としている転職サイトはいくつかあるものの、梱包作業やクリーニング・配送・テレフォンオペレーターなど人手不足が顕著な仕事ばかりで、言うまでもなく役員や管理職など企業の中核を担うポストはほぼゼロであるという。つまり現状シニアに役立つ求人サービスはほとんど存在しないということなのだが、国が「年齢不問」を企業に求めてもそれはあくまで求人票の内容だけであって企業が求めるのは新卒の若者や 30 代や 40 代といった前半戦の人材だけで、人生の後半戦に入ったシニアの活用はそもそも想定していないことがわかるという。
実際にはシニアの積極採用に乗り出す企業はほとんどなく厳しいがこれが現実だという。転職者の年齢が上がってきたとはいえまだシニア世代には到達していないし、人材紹介会社や求人サイトの市場でそのような状況が簡単に変わるとは考えにくいという。シニア世代ははじめから当てにしないほうが賢明で、たとえ一部にシニアの採用を検討する会社があるとしてもシニアの求職者は年々増加しているのだから競争率は何百倍にもなってしまうという。だから定年前後の就職活動は既存の仕組みを利用するのではなく、自分の足で探すことが何より重要になってくる。とにかく思いつく限りのところへ出かけて「働きたいのですが、何か仕事はありませんか」と尋ねてみるのは有力な手段といえるそうなのだ。
今の日本は全国的に人手不足の職場が多く経営者は優れた人材がいればすぐにでも雇いたいと考えているが、お金をかけて求人するには躊躇しているという。市井に埋もれた求人情報は自分の足で動いて見つけ出すしかない。たくさんの人に尋ね回るうちにその手がかりは見えてくるもので「まず自分で動く」ことが再就職の第一歩となるという。それと生活についてでもいいし仕事についてでもいいので楽しんで生きていくためには趣味も重要だという。定年後に起こるあらゆることを可能な範囲でシミュレーションして無理なく持続可能な定年後を実現するために、何が必要で自分は何をすべきなのか。その答えをできるだけ早く見つけ出すことが、納得のいく後半戦にするためにはとても大切なのであるというのだ。
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