今や全国の鉄道で見られるようになった観光列車だが、中でも豪華クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」をはじめ数多くの趣向を凝らした列車が走るのが九州だという。観光列車といえば地域外から観光客を呼び込むことを狙って走らせるのが一般的だが、西鉄の拠点である福岡を訪れる観光客数は年々増え続けており、とくに近年は外国人客が大幅に増加しているそうなのだ。ところが今回利用される観光列車の主なターゲットは地元客だそうで、車内設備の目玉はキッチンに鎮座する「ピザ窯」だという。列車内では火を使えないためまきやガスではなく電気窯だが本格的なピザを焼き上げることができるが、西鉄は「おそらく窯を積んだ車両は世界初ではないか」と語り、この窯で焼いたピザが車内で提供する食事のメインだという。
また日本最大級のバス会社でもある西日本鉄道は高級バスに乗って九州・山口を旅してもらうツアーを始めると発表したが、西鉄が豪華バスを手掛けるのは初めて半年ほどかけて内装や車内サービスの具体案を検討していたそうなのだ。観光列車と同時に導入し列車と豪華バスをセットにした旅の新たなスタイルを提案するわけだが、ドイツ製の革張りシートを使った「西鉄史上で最高級のラグジュアリーバス」を用意するそうで、高速バス用の車両1台を約6千万円かけて改造して座席数を約40席から12席に絞りゆったりとくつろげるようにしている。それぞれの座席の前には福岡県の特産品「大川家具」を使った収納スペースを設け、車体の色は白からシャンパンゴールドに塗り替え高級感を演出しているという。
西鉄では子会社の 「西鉄車体技術」がバスの改造を手掛けているそうだが、観光バスだけでなくサファリパークで使われる金網付きの動物観察車両や、医療検診車など特殊車両に実績があるという。豪華バスも「西鉄車体技術」が担うわけだが、列車と連動するバスをめぐってはJR九州も豪華寝台列車「ななつ星in九州」の乗客が、駅から観光地に向かう際の専用バスを導入している。このバスの内装も「西鉄車体技術」が手掛けているという。西鉄天神大牟田線に導入されるのは西鉄初の本格的な観光列車となるが、現在は車両デザインの作成などを進めているそうで、鉄道事業者として沿線の活性化を目指し地元の食材や地域と連携したサービスを提供する予定で、住民や観光客が利用しやすい手頃な料金設定を想定するという。
西鉄では高級バスを使ったツアーは「GRANDAYS(グランデイズ)」と名付け、料金は日帰りなら1人あたり3万円台で高級な宿に泊まってもらう旅は1泊2日で10万円台を想定している。元気なシニア層を狙っているが鉄道で競合するJR九州は豪華寝台列車「ななつ星」を走らせており、今秋からのツアーは1人あたり1泊2日で30万円台からだという。価格の差はあるが 西鉄の倉富純男社長は取材に対して「列車を作る過程で、沿線の良いものを掘り起こしていく。しっかり成果を出したい。観光列車の到着駅にバスが待っているなど、列車と連携して動き、ネットワークをつくる。観光インバウンドの呼び込みも強化できる」と語り、「乗ってもらえれば『ななつバス』だったね、となるかもしれません」と話している。
このように九州は全国的に見ても観光列車の運行が盛んな地域であることは間違いないが西鉄に「競合」という意識はとくにないという。西鉄の倉富純男社長も「地域のものを取り入れた列車であれば、走る場所が違えばおのずと性格が変わってくるはず。うちのバスや列車も含めていろいろな列車が走ることで、九州が『観光列車の宝庫』になるといいなと思う」と話している。観光列車の先駆者である JR 九州も考え方は同様で青柳俊彦社長は「観光列車がたくさん出るのは大いに結構なこと。ライバルというより仲間が増えたと思っている。そういう観光列車に乗る旅という楽しみ方が一般的になれば、われわれの観光列車にもさらに多くの方が来てくれると期待している」との考えを示しているという。
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