青森県下北郡大間町の大間沖で漁獲されるクロマグロのブランド名である「大間マグロ」は、大間漁業協同組合より 地域団体商標 に登録され「大間のマグロ」などとも呼ばれ、初セリでは何千万円という高額で取引がされ全国的に有名な高価なマグロとなっている。出荷される 30 キロ以上のマグロの 頬 にはブランドの目印となる「大間まぐろ」のシールが貼られており、本州最北端にある大間町が面する津軽海峡は黒潮に対馬海流・千島海流の 3 つの海流が流れ込むため良質のプランクトンが生息し、イカやサバを主食するマグロは水温が低くなる秋から冬にかけて上質な脂がのるという。収穫されるマグロは時速 40 キロ程度で泳ぎ身の危険を感じたときや獲物を獲るときなどは最高時速 120 〜 130 キロのスピードを出すとされている。
大間のマグロ漁の漁法としては一本釣りが主流で収穫が行われているが、網で捕獲する漁法とは異なりマグロに傷が付かず魚が弱ってしまう前に血抜き生〆作業を施すため、鮮度を保ってマグロを出荷することが可能であるといわれている。その大間ブランドなどが知られる津軽海峡産のクロマグロが思わぬ販売不振に陥っているそうで、 東京の豊洲市場には例年を上回る数の同産マグロが入荷しているがほとんどがトロの部分が少ない小型魚だというのだ。米国などから大きくて脂の乗った強力なライバルが順調に入荷していることから、競りで買い手が付かないケースも多く市場関係者は頭を抱えているそうで、津軽海峡のクロマグロ漁は昨年と同様に 7 月中旬から始まったが今年の水揚げは 1 匹 30 キロ前後の小型ばかりだという。
東京の豊洲市場にも 8 月上旬まで昨年同時期の約 8 倍の 600 匹以上が入荷しているが、サイズは小型が大半で身質や脂乗りに定評がある 100 キロ以上の大型はほんの数本程度となっており、旬を外れた夏場でも大型は多かっただけに今年は異常事態という。小型で見劣りするだけでなく「脂がほとんど乗っていない上に赤身の鮮やかさも足りない」など品質面の評価も振るわないそうなのだ。取引価格は 1 キロ当たり 2000 円前後で上質なマグロが多かった昨年末の 5 分の 1 程度とされ、大衆マグロのメバチやキハダとほぼ同水準にまで落ち込んでいる。しかも太平洋クロマグロは大型魚が激減していることから水産庁は海洋生物資源保存管理法で定める基本計画を改正し罰則付きの漁獲上限を定める漁獲可能量制度を適用した。
正組合員 350 人超でこのうち半数がマグロ漁という大間漁業協同組合の伊藤幸弘指導課長は「大間では活気が出てきて世代交代も進んでいるが、意欲に燃えた若者も 1000 万円を超える船や装備を新調しローンを組んでおり、このままでは立ちゆかなくなる組合員も出てくるのではないか」と語っている。海外産ライバルの台頭も安値の原因になっているそうで、国内の魚市場には米ボストンから 150 キロ前後の大型クロマグロや、季節が冬のオーストラリアやニュージーランドからも脂の乗ったミナミマグロが大量に押し寄せているという。いずれもここ数年は豊漁で豊洲市場では 7 月以降は生マグロ売り場の 7 割近くを輸入物が占める日も珍しくなく、上級品には国産マグロを上回る 1 キロ当たり 1 万円以上の高値が付くこともあるという。
大間沖で取れる太平洋クロマグロは脂がのる冬にかけて価格が上昇する傾向があるが、水揚げが漁協から配分された漁獲枠に早い段階で達してしまえば価格が上がる時期に漁ができなくなる懸念があるという。漁獲枠を守りつつ価格が高い時期に水揚げすることで少しでも収入を得たいと考える漁業者らが現在は出漁を見合わせているというわけだが、今や輸入物が売り場の主役となっているとされているマグロ市場も、都内の高級すし店などは知名度の高い大間産などにこだわる店も多いという。需要期の秋以降に向けて国内屈指のブランドに見合う上質なマグロの水揚げ復活に関係者は期待を寄せているそうだが、地方創生を進める政府は大間の漁師にどんな未来を見せるのだろうか対応が注目されているというのだ。
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