仁志・多喜馬の戯言日記＆戯言通信

　私も年金をもらっている該当者なのだが「年金は破綻する」という言説が強調されるなかで、多くの日本人の気持ちを不安にさせているという。これから年金をもらおうという人やすでに年金をもらっている人が共通して持っている不安は、老後の命綱である「年金」そのものが「破綻」してしまわないかということのようなのだ。現在の公的年金制度では加入者に支払いを約束している年金受給権が発生しているものが 1000 兆円以上あるそうだが、将来のために積み立ててあるお金はわずか 160 兆円ほどだというのだ。これから徴収していく保険料は少子化で減っていくし年金をもらう人は高齢化で増えていくといった状況だけを見ると、年金制度は計算の上では完全に破綻状態にあるということになるというのだ。

今の日本の年金制度は年金保険料だけではまかなえなくなっていて国民がもらっている老齢基礎年金のおよそ半額は国庫から出ているが、老齢基礎年金は 40 年加入した場合には月に約 6 万 5000 円もらえるがこの半分は国庫から出ているというのだ。実は以前はこの国庫負担の割合は３分の１だったのだが、民主党政権で国庫負担分の引き上げが決まり 2 分の１に増えている。パートなどで働いていても年収が 130 万円に満たなければ夫が会社員や公務員の妻は夫の扶養家族ということで、自分では１円も年金保険料や健康保険料を支払わなくても国民年金や夫の健康保険に加入していることになっている。ところがこの先は今まで保険料を支払っていなかった会社員や公務員の妻も年金の支え手になると言われている。

雇用者数は長期にわたって過去最多を更新し続けてきたが、ついに 6000 万人の大台に乗ったそうで、完全失業率は 2.3 ％にまで低下しいわゆる「完全雇用状態」に成って久しいといわれている。それでも有効求人倍率は高止まりしたままで一向に人手不足は解消しないという。雇用だけで見れば日本経済は絶好調だが、公共料金の値上げだけでなく社会保障費の引き上げが続きこれからの消費増税もることから庶民の可処分所得は減少しているというのだ。所得の減少を補うためにこれまで働いていなかった主婦がパートに出たり定年を過ぎても働く高齢者が増えたりしているという面も強く、つまり働く人の増加は景気好調だけを示しているのではなく人々が貧しくなっていることの表れなのかもしれないというのだ。

しかもデフレは年金世代にとってはインフレよりも歓迎すべき現象だったとされ、年金制度はデフレで物価が下がるときには名目の年金支給額を減らすように設計されているが、デフレでさまざまな物やサービスが安く買えるようになるのはお金で買えるものやサービスの量が増え、つまりお金の購買力が大きくなるからだといわれている。年金支給額を物価が下がった分だけ減らしても支給された年金の購買力は変わらないので、年金受給者の生活に変化はなく悪化もしていなかったという。年金支給額を物価下落分だけ減らすことを年金のデフレスライドというのだが、年金受給世代はデフレでも減らない年金支給額を享受する一方で、定期預金などの名目金利が低いことに不満を述べていたというのだ。

ところが地方都市における百貨店の閉店が続出している理由は複合した要因なのだが、最大の理由は人口の高齢化が進展し主要顧客であった団塊世代の人たちが 70 歳代となり、消費者層から退出し始めていることだというのだ。地方の百貨店はこの 10 年ほどは高齢者層を主要顧客としていわゆる年金経済の恩恵を被ってきたが終わりが近づいているという。さらに 1970 年代を中心に建設された建物の老朽化が進み耐震基準に合わない地方都市の百貨店では、巨額の費用を投じて改築あるいは新築しても費用を回収できるだけの売り上げを見込めないうえ、小売業においては次第にネット通販の割合が大きくなり、実店舗での売り上げが落ち込むためついに年金経済の終わりが近づいているというのだ。