日米間の関税を撤廃・削減する貿易協定が国会で承認されたそうで、参院本会議が自民党と公明党などの賛成多数で可決したわけだが、協定は衆院を通過しており日本国内の手続きが終了したことになった。両国の調整を経て来年の1月1日に発効する見通しだが、貿易協定発効で日本は環太平洋連携協定の自由化水準内で農産物市場を開放する。米国産牛肉の関税は現行の38.5%から段階的に下がり最終的に9%となる。米国は幅広い工業品の関税を撤廃・削減するが自動車・同部品の関税撤廃は見送り今後の交渉対象となっている。日米は協定発効から4カ月以内により包括的な貿易交渉を始めるかどうかを協議するそうだし、電子商取引のルールなどを盛り込んだ日米デジタル貿易協定も同時に承認されたという。
日米両政府は昨年 9 月の首脳会談で貿易交渉入りに合意していたが、今年 10 月に貿易協定とデジタル貿易協定について正式に署名している。米側は議会の承認を得なくても大統領権限で国内手続きが完了するため日本の国会承認が協定発効に向けた焦点になっていた。日本政府によると関税撤廃率は金額ベースで米国が約 92% で日本が約 84% になるそうだが、米国から輸入する豚肉は安い部位にかかる従量税は 1 キロ 482 円から 50 円になるし、高額品については 4.3% から下げてゼロにするという。米国産ワインの関税は段階的に下がり 7 年目で撤廃となるといったところなのだが、日本から米国への輸出では工作機械のマシニングセンターで発効から 2 年目で 4.2% の関税を撤廃することになっている。
エアコン部品等は 1.4% の関税を発効と同時に撤廃するし、燃料電池だけでなく、メガネ・サングラスも発効時に即時撤廃となる。また自動車・自動車部品の関税削減・撤廃は継続協議になるわけだが、政府は今国会で「さらなる交渉による関税撤廃が協定の前提になっている」と主張している一方で野党は「関税撤廃は約束されていない」と追及している。日米両政府は第 2 弾の交渉について来年春にも交渉分野を確定する予定で、来年 11 月の大統領選を前にトランプ米大統領が自動車の関税撤廃交渉に応じるかは見通せないという。政府は協定の発効により実質の国内総生産が約 0.8% 押し上げられると試算しており、昨年度の国民総生産水準に換算すると約 4 兆円に相当し雇用創出効果は約 28 万人を見込んでいるそうなのだ。
もっても試算では米国が日本産の自動車・自動車部品の関税を撤廃することを前提にしているそうで、実現しなければ経済の押し上げ効果は大きく下がるという。10月に署名された日米貿易協定では本来必要な米国議会での承認手続きが省略されているが、米国でも日米貿易協定に関する公聴会が開かれ米野党議員や業界関係者からは、合意内容が限定的なものにとどまったことに不満の声も上がっているという。野党民主党が過半数を占める下院歳入委員会の貿易小委員会では、議会の要請にもかかわらず米国通商代表部のライトハイザー代表ら政権の交渉担当者は出席しなかったが、議会との調整が不十分との不満が残り「何も協定が結べないよりはマシだからいいというわけではない」との声が上がっているという。
日本政府は乗用車の関税削減を第2段階で勝ち取るという建前だが、第1段階では日本側に米牛肉や豚肉の関税削減という強い交渉カードがあったにもかかわらず米側は譲らなかったことから、自動車分野で関税削減を得られる見通しはきわめて薄いという。米国の戦略国際問題研究所の代表は日米間で貿易交渉がいったん決着したことで「台頭する中国への対応など、他の優先事項に集中できるようになった点では評価できる」と指摘しているが、その一方で「第2段階の合意に至るのは、少なくとも短期的には非常に難しい」との見通しを示している。そして「対日貿易赤字を本気で減らそうとするなら、輸入車の数量制限をするしかないだろう」と述べ、日本政府が絶対に避けたい「数量制限」の選択肢に言及しているという。
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