劣悪な道路状況で事故が相次いでいる危険なバス停が全国で問題となっているが、危険なバス停とは横断歩道そばにバスが止まって交差点などに死角を作るバス停のことで、横断歩道を渡る歩行者らが停車中のバスの陰に入りバスを追い越す車や対向車にはねられる危険があるというのだ。昨年8月には横浜市内で小学生が亡くなる事故も起きたのだが、各都道府県のバス協会が把握しているだけで 441 カ所に上るという。国土交通省はバス事業者や自治体に警察などによる「合同検討会」を全都道府県に設置することを決めており、各検討会で全バス停の事故リスクを判定し危険度の高いものから移設などを行うという。バス停付近の事故の発生状況なども重要となることから国土交通省は警察庁にも協力を求める文書を出している。
全国の運輸支局やバス事業者にこうした対応を指示しているが、危険なバス停の解消に向けて国と地域が連携して取り組む環境が整う見通しとなったという。合同検討会は国土交通省出先機関の運輸支局が事務局となって、各地のバス協会や警察本部・都道府県・道路管理者らが参加し、バス停の移設には、民の理解が欠かせないことから必要に応じて各地域の自治会に入ってもらうことも想定している。バス事業者は運転手から「あのバス停で道路を渡る人と往来車の接触事故が起きかけた」といったヒヤリ・ハット情報も募るという。運輸支局も地域住民やバス利用者たちに危険なバス停の情報提供を呼びかけるパブリックコメントを行う予定で、運輸支局はこれらの情報を基に危険なバス停をリストアップするというのだ。
バス事業者とともにリストのバス停の実地調査などを行い 、バス停ごとに危険度を判定して合同検討会に報告するわけだが、検討会では対策の優先度を検討して優先度は「A~C」の3段階程度でランク分けされ、来年春までに全ての危険なバス停と各ランクを公表するという。検討会はこうした分析結果を踏まえ危険度に応じて安全対策を講じるのだが、具体的にはバス停を横断歩道のそばから離すということだけではなく、横断歩道を移設・廃止するやバス停車時に道路を渡らないようガードレールを設置するいったハード面の対策が考えられる。道路横断に注意を促す看板の設置やバスの車内アナウンスなどのソフト面の工夫も合わせて検討することとし、各検討会はこれらの安全対策をバス停ごとに公表するという。
対策の進捗状況を毎年確認するというが、国土交通省の担当者は「バス停の移設には地域住民の同意が欠かせない。そのためにも関係機関が一丸となって本気で取り組む必要がある」と話している。交通工学が専門の安部誠治関西大教授は「自治体や警察など関係機関による検討会を設け、バス停ごとに具体的な危険度を判定することは、対策をとるべきバス停の優先順位をつける上でも、移設に向けた地元住民の合意形成を図る上でも、有意義な取り組みだ。もっとも実態を把握していないバス協会も30を超えており、こうした事例を集積し、国交省は、バス停の移設がスムーズに実現したケースを他の自治体・地域に紹介するなどして、全国各地で速やかに対策が進むよう努めてほしい」とコメントしている。
ただしバス事業者がバス停の移設・廃止を提案すると、運輸当局や警察だけでなく地方自治体や道路管理者への協力要請が必要なだけでなく土地所有者や住民への協力要請も必要でバス停の移設は簡単ではないといわれている。新設場所の周辺住民の同意が必要だが「ゴミのポイ捨てが嫌」とか「行列ができるため、車の出し入れがしにくくなる」など反対が少なくないそうなのだ。関係各所だけでなく全ての了承が必須で危険なバス停の中には移設予定地の土地所有者のみ理解が得られず保留になったケースも多いという。また縦割りの弊害みたいなものがあって「あっちが許可を出してくれたらいいよ」とたらい回しになってしまい、「ここは危ないからこうしろ」と判断の出来る権限を持った機関なり組織が必要だという。
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