日本人の給料は欧米の主要国をはじめ国際的に見てももはや競争力を失っており、このところ上昇基調であるといってもまだ年間 440 万円ほどにしかなっていないという。これはサブプライムローンショックのはじまる 2007 年当時の水準に近づいた程度なのだが、日本は製造業の考え方がベースにあってなかなか給与が上がらない構造にあるという。製造業は一致団結してものづくりにあたるのだが流動性も低く人材の定着率がまだまだ高く、長期雇用を前提としている以上はどうしても賃金が上がりにくいという。ただ同じく製造業の大国と思われているドイツや中国などと比較した場合どうかというと、大手新聞社が 10 年前のデータが残っているドイツ・日本・中国で製造業の給与水準がどのように変化したのを調べてみたという。
するとここでも日本以外は大きく給与水準を上げているとわかるそうで、 10 年前を 100 としたときに昨年の年収がどれだけ上がっているか下がっているかを調査すると、作業者の賃金はもともと中国が低いこともあってくその上昇率の高さは理解できるというのだが、同じ製造業大国であるドイツはエンジニアやマネージャーともに大きく賃金を上げているのがわかるという。つまり日本は各国が伸びているなかでジリ貧に陥っている状況がわかるというのだ。製造業の経営者たちは優秀な人材を数多くしかも世界的に見ると異常なまでに安い賃金で調達することが可能でその水準はまさに異常だったというのだ。例として日本とイギリスを比較してみると日本人の生産性はイギリス人の 98 %となっているそうなのだ。
一方で日本の最低賃金はイギリスの 3 分の 2 しかなく、この異常に安い最低賃金で働いている日本人が今も増えているという悲しい現実が存在するというのだ。逆の見方をすると日本企業は数多くの優秀な人材を安く調達することができたからこそ、生産性が低くなってしまったとも言えるともいわれている。経営者にしてみれば労働者の時間単価が安いからどんなに会議が長くて無駄が生じても気にもならないというのだ。大した給料を払っていないから客観的に見てあまり必要がない仕事でも頼みやすくなり、給料が安いから仮にその人が優秀であっても能力なりの仕事を頼みづらくなってしまい、つまりは安い給料で人材の調達が可能だから無駄が蔓延してしまっているということのようなのだ。
終身雇用で社員を雇用する企業は社員の給与を上げることはできなくもないが、下げるのは難しいと判断するのだがこれが硬直化だという。給与がなかなか動かないことは下げられないからそもそも給与は上げられない状況を指すというのだ。例えばある社員が今月 30 万円相当の仕事をしたとして翌月には 20 万円分の仕事しかしなかった。でも翌々月には 40 万円相当の仕事をしたとするとこんなときに企業はなかなか給与を 30 万円や 20 万円または 40 万円とは変更できないというのだ。給与 30 万円を払い続けるのが最もよく経営者にとってみれば成果に応じた給与を払いたいが、給与を下げると社員から反感を買う可能性がある。それならもともと低めに設定してそこから変化させないほうがいいと経営者が考えるのは当然だというのだ。
給与を上げる判断に重要なのは人事評価とその前提となり徹底した面談になるわけだが、考えてみればこれは当然で評価を定量的にすることとその人の厳密な目標設定がなければ成果を正しく測ることはできないという。少なくない会社が「うちの会社はしっかりとした人事考課を行っている」と言うがそのほとんどが誰にでも同じような目標を設定しているだけで、それが一人ひとりと合意されたものではない。個人面談で評価指標の説明はあるものの、必達もさほど求められないし何をやったらいいのかわからないので、上司も部下も結局は「なあなあ」になりがちだといわれている。しかも上司は期末にバタバタとなんとなくの雰囲気で点数をつけていてなんとなくの雰囲気で従業員も納得しているが実情というのだ。
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