過労死や長時間労働だけでなくパワハラなどが問題視されている企業を集めた「ブラック企業大賞 2019 」の授賞式が昨年の 12 月に開催されたが、「誰もが安心して働ける環境をつくることをめざして」開催してしているブラック企業大賞にはグループで複数の過労自死など、労災事案が相次いでいる三菱電機が 2 年連続で選ばれたという。ブラック企業大賞委員会側は「あまりに異常なことが起こっていると言わざるをえない」としているが、ほかにはウェブ投票賞にはパワハラによる労災認定があった楽天が選ばれ、特別賞には過去に大賞を受賞した電通とセブン - イレブン・ジャパンが選ばれたそうなのだ。また新設された「 #MeToo 賞」には市幹部による女性記者への性暴力があったとされる長崎市が選ばれている。
今回は計 9 社がノミネートされ過去にも大賞を受賞した経験のあるセブン - イレブン・ジャパンと電通に三菱電機の名前があったが、佐々木亮弁護士は「社会的な責任からするといかがなものだろうか、と思います。特に電通は刑事罰も受けている。しっかりと反省して 2 度とノミネートされないようになってほしい」と指摘したが、「こうして私たちの目に触れて選定される企業はごく一部。実際には何倍にもあたる過労事件、過労自死があると考えています。日本の状況はまだまだ変わっていない」なお、ノミネート企業は授賞式の招待状を出していたというが各社の関係者の姿はなく、ブラック企業大賞企画委員会は「 8 回もやるとは思っていなかったが、ブラック企業と呼ばれる企業は減らない。続けざるを得ない状態だ」とコメントしている。
労働問題に詳しい弁護士は「三菱電機は 2012 年以降、長時間労働やパワハラが原因で自殺した社員が子会社も含めて 5 人います。 2019 年も選ばれたのは、昨夏自殺した 20 代の男性新入社員が残したメモが公開されたことが大きい」という。その自殺した 20 代の男性新入社員が残したメモには新入社員の上司にあたる 30 代の教育主任から浴びせられた暴言が書き残されており、「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓あるで、死んどいた方がいいんちゃう」というものだったという。社員の自殺が相次ぐ三菱電機は労務問題の再発防止策を発表したそうなのだが、ハラスメント教育の強化、アンケートの実施や相談窓口の充実などを掲げた「職場風土改革プログラム」と題された対策はすでに取り組んでいるものばかりだったそうなのだ。
経営幹部による詳しい説明や記者会見もなく「ポーズに過ぎないのでは」と内部から声が聴かれる。ただ業績は堅調で日立製作所に次ぐ総合電機 2 位の座を確たるものにしており、「家電から重電、人工衛星まで幅広く手掛け、多くの産業用電機機器で国内トップシェアを誇り、特に防衛エレクトロニクス分野では抜きんでている。携帯電話やパソコンからの撤退など、選択と集中を早めに進めてきたことが功を奏した。国際特許登録出願件数も中国のファーウェイに次いで世界第 2 位です。自己資本比率も 55 %を超え、財務も盤石といえます」という。恐ろしいのはブラック企業大賞にノミネートされるのが一般に名の知れている大企業や自治体だということで、水面下では中小のブラック企業が潜んでいることも懸念されているのだ。
自殺した社員は「三菱は私のことを一生忘れないで欲しいです」と書き遺していたが、なぜ過労やパワハラが横行しているのかというと「組織の三菱と言われるように、グループ内の取引だけでも十分やっていけるため、内部の論理が優先される企業風土が根付いている。また三菱電機は事業部制が敷かれ、一度配属されたら、他部門への異動は少ない。それゆえ、社内の上下関係が絶対視されがちなのです」と分析されているそうだが、いまだに悪評が上がろうとも業績が伸びればという業績至上主義といえる企業や組織が多く、そのような企業を減らすためにも少なくともブラック企業大賞を受賞した企業には、消費者がしっかり NO を突きつけることをしなければいつまでも働き方改革は進まないというのだ。
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