菅義偉首相は観光支援策「Go To トラベル」をめぐり年末年始の帰省客増加を考慮して、「今月の28日から来年1月11日にかけて全国一斉に停止する」と表明したという。東京都や名古屋市での停止や自粛要請を検討していたが、年末年始の集中的な感染拡大を抑える期間と位置づけ一気に対象地域を広げたというのだ。菅義偉首相は新型コロナウイルスの政府対策本部で「全国の感染者数は高止まりの傾向が続き、感染拡大地域が広がりつつある」との認識を示したうえで、感染拡大阻止や医療機関の負担軽減を挙げながら「最大限の対策を講じる」として、全国一律の停止を表明したが、来年の1月12日以降については「その時点での感染状況などを踏まえ、改めて判断する」としたという。
立憲民主党の福山哲郎幹事長は「なぜもっと早く決断できなかったか。専門家の提言を顧みず、「Go To トラベル」にこだわったため感染が広がったのは明白で人災と言える。責任は大きい」と記者団に語ったという。共産党の小池晃書記局長も「決断が遅れれば遅れるほど、感染に苦しむ人は増え、医療現場の逼迫は深刻化する。決断を遅らせた責任は重大だ」と批判している。野党は全面停止する根拠などをただすため菅義偉首相が国会に出席する閉会中審査の開催を与党に求める方針だというが、「Go To トラベル」について「自民党と関係の深い旅行代理店や大手ホテルが恩恵を受けやすく、中小事業者には不利だ」と指摘し、政府が事業見直しに及び腰なのは業者との関係があるとの見方も出ているという。
観光支援策「Go To トラベル」の唐突な全面停止で事業者の混乱は避けられないが、野党各党も一時停止と併せ中小事業者への補償など直接支援をするよう主張しており、立憲民主党の福山哲郎幹事長は「観光業者らへの万全の補償措置を強く求めたい」というと、共産党の小池晃書記局長も「観光業、飲食業、旅行業が年末年始の書き入れ時に重大な影響が出る可能性がある。直接支援措置をあわせて打ち出すべきだ」と語っている。国民民主党の玉木雄一郎代表も「大きな影響を受ける宿泊業、外食産業の中小事業者らに支援プログラムを提案したい」と指摘したうえで、政府系機関から人件費などを融資しコロナ収束まで雇用や事業を維持した事業者には、返済を免除する仕組みの創設を訴えている。
菅義偉首相は「発信不足」との批判を意識してか神妙な表情で国民に協力を呼びかけ「自ら判断した」とも強調しているが、与党内では観光支援策「Go To トラベル」を続けて内閣支持率がさらに低下すれば1年以内に想定される衆院解散・総選挙への影響が避けられなくなると懸念する声も出ていたというところが自民党の二階俊博幹事長は全国旅行業協会の会長も務め観光支援策「Go To トラベル」の推進論者ということもあって、二階派幹部は突然の一時停止表明に「どういう趣旨なのか。勝手なことをしやがって」と不満を漏らしているそうなのだ。そして菅義偉首相は対策本部後に「緊急事態宣言を再び出すことを検討しているのか」と記者団に問われると「していません」と否定したそうなのだ。