ウクライナ情勢を受け米シカゴ商品取引所では小麦の先物価格が 14 年ぶりの高値となったそうで、 1 ブッシェルは 8 ガロンの約 27 キロと定義されているが、ロシアの侵攻前に1ブッセェルあたり 8 ドル台だった価格が 13 ドルを超えたという。小麦などへの投資ブームが起きた 14 年前に匹敵する高水準となったそうなのだ。このブッセェルというのはヤード・ポンド法における体積の単位で液体の計量には用いられず主に穀物メジャーの生産販売規模を表す際に使われるという。米国と英国で値が異なるがアメリカにおけるブッシェルは「ウィンチェスターブッシェル」ともいい、元々は直径 18.5 インチ深さ 8 インチの円筒形の容器の容量と定められていたが今日では正確に 2150.42 立方インチと定義されているそうなのだ。
ウクライナの海事管理当局はウクライナの港湾がロシアの軍事侵略終了まで閉鎖されると表明しており、南部マリウポリの港はロシアの砲撃で被害が出ていると明らかにしている。西側の金融制裁でロシアからの供給も減少しているが、ロシアは全世界の輸出量の 17% でウクライナも 12% を占めており、今回の危機で生産や輸出が鈍り世界的な品薄になると懸念されている。住友商事グローバルリサーチの本間隆行氏は「ウクライナは耕作どころでなくなっている可能性がある。船会社は小麦を積み出す黒海に近寄りたがらない。各国はこれまでのコストで輸入できなくなる。円安基調の日本は更に負担感が重くなる」と話しているが、日本は小麦の国内需要の 8 ~ 9 割を海外から輸入さ輸入に頼っているという。
輸入小麦は米国産・カナダ産・オーストラリア産で大半を占め主要産地のウクライナやロシアからの輸入はないが、国際価格の高騰はパンや麺類など多くの食品の値段にさらに影響しそうだという。中国はロシアのウクライナ侵攻と南米での収穫の遅れに伴う商品供給リスクを軽減する取り組みの一環として米国産の穀物類を購入している。公に話す権限がないとして匿名で語った複数のトレーダーによると、中国のバイヤーは米国産大豆を約 20 カーゴ・トウモロコシも約 10 カーゴ分予約したという。ロシアのウクライナ侵攻に加え世界最大の大豆生産国であるブラジルからの供給が予想を下回ったことで供給懸念が高まっており、活発な買い付けの動きは最大輸入国である中国の旺盛な需要を反映しているそうなのだ。
小麦などの穀物の主要輸出国であるロシアとウクライナからの出荷が事実上停滞するにつれ多くの農産物価格が高騰しているが、中国はウクライナ産トウモロコシと大麦の主要輸入国でウクライナ・ロシア両国からひまわり油も輸入している。原材料の高騰は今後もあらゆる食品に影響を及ぼすとみられ菓子業界でも流通向けに値上げのアナウンスがあったという。製パン業界にとっても今回の輸入小麦価格改定は影響が大きいが「安易な値上げには踏み切れない」との声も聞かれている。そもそも製菓・製パン業界には原材料価格の高騰にかかわらず価格転嫁せざるを得ない背景があったのだが、特に製パン業界にとって輸入小麦の高騰は大きな打撃となり、これまでのように人件費を下げて対応することは難しいという。
輸入小麦は日本政府が買い付け国内の製粉会社などに売り渡すしくみなのだが、製粉会社は小麦粉に加工したうえでパン・麺・菓子などをつくる食品メーカーに卸している。こうして最終的に消費者のもとに届けられるわけなのだが、輸入小麦の政府売渡価格とは過去の一定期間の輸入価格の平均値にいくらかのマージンを上乗せした価格となっており、このマージン分は政府管理経費や国内産小麦の生産振興対策に充てられているという。今回のロシアによるウクライナ侵攻での小麦をはじめ穀物価格の高騰を受け、岸田文雄首相は会見で想定される影響や対応を検討するよう指示すると表明しており、金子原二郎農水相も会見で「どんな対応が考えられるかを整理し、しっかり検討していきたい」と述べたそうなのだ。
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