ほとんどの食品や飲料には賞味期限もしくは消費期限が記載されているが、日本酒には賞味期限表示がなく、これはアルコールの殺菌作用によってすぐに腐食が進まず長期間の保存が可能なため賞味期限の表示義務がないのだという。食品表示法では日本酒だけでなく酒類全般の賞味期限表示が免除されていて、ワインやウイスキーに焼酎なども同じ理由で賞味期限の表示がないのが一般的なのだが、ビールは日本酒よりアルコール度数が低いので賞味期限があって缶の底に書いてあることが多いという。大手メーカーのビールは 9 カ月~ 12 カ月でビールは賞味期限が過ぎても容器密封されていれば衛生的に問題はないそうなのだが、ただしクラフトビールは 1 カ月など期限が短い場合があるので注意が必要だという。
一般的に日本酒は長持ちをさせるために加熱殺菌を行っており、これを業界用語で「火入れ」と言うのだが、「火」という言葉を聞くと日本酒を直火で沸騰させているようなイメージがあるとおもわれるのだが、実際は 60 ~ 65 ℃で湯煎をするとこれによってお酒の中に残っていた菌が死滅し酵素の働きを止めることで味や香りの変化を抑制できるのだという。しかし生酒の場合は火入れをしないので微生物がお酒の中に残っており、そのため味が変化をしてしまう可能性が高くなるという。温度が高いと菌も活発に働いてしまうのでラベルに「生酒」と明記されているものは冷蔵庫に直行で保管するようにして、購入して未開封であれ、生酒なら 1 カ月以内それ以外の日本酒なら半年以内で飲み切るのが目安となるという。
また、「大吟醸」「純米吟醸」など、吟醸と名の付くものは火入れをしていても冷蔵庫に入れておいた方が良いそうで、こうした繊細なお酒は味が変化することで全体的にバランスが崩れやすいからだという。またフルーツのような華やかな香り、爽快な味わいを楽しむためには冷やした方が良いそうなのだ。スーパー等に常温で並んでいる日本酒は常温での保管で問題ないというが、ただし日本酒にとって紫外線は大敵だという。温度変化が少ない方がいいので戸棚や押し入れなど冷暗所で保存するのがおすすめで、目安としては 20 ℃くらいで保管するのが理想だという。日本酒はワインのように寝かせて保存をして良いかというと、縦にした状態での保存がベストだそうで、日本酒は横に寝かせると空気に触れる面積が大きくなるからだという。
開封後は生酒から一般的なお酒にかかわらずどんな日本酒でも冷蔵庫での保存がおすすめだそうで、開封後は酸化が進み味の変化が始めるからなのだが、開封をしてからであれば生酒は 1 週間以内それ以外なら 1 カ月程度で飲み切るのが理想だという。ただし酸化は必ずしも悪いことではなく、最終的には紹興酒のように色がつき醤油っぽい独特の味わいになるが、お酒によっては「あえて寝かせて」味を変化させると味わい深くなる場合もあるという。味に角が取れたり旨味が増したりと味が乗って美味しくなるものがあるのが日本酒の面白いところで、熟成肉に旨味が出てくるのと同じイメージなのだが、酒蔵としては出荷のタイミングが狙った味わいになるので早めに飲んでほしいところだという。
日本酒と言えば大吟醸という言葉が真っ先に浮かぶ人も多いのだが、たしかに大吟醸は日本酒における高級酒の代名詞であり、その繊細な香りとフルーティな味わいはビギナーから玄人まで幅広い人気があるが、「大吟醸が一番美味しい」という固定観念は今や過去のものとなりつつあるといわれている。現代の市場では多様なスタイルと味わいが求められている中で大吟醸はどうしても味が近しくなるため差別化が難しくなってきているからで、味を均質的にする最大の要因は精米歩合なのだが、玄米から 50 %以上磨いた米で醸した酒を大吟醸と呼ぶが、米は磨くほど雑味がなくなりクリアできれいな味わいになるが、磨けば磨くほど味わいとしての差別化が難しくなることからあえて磨かないお酒づくりをする酒蔵も増えているそうなのだ。
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