戦争、国防も経済的な行動であり、企業活動と同様にヒト、モノ、金は重要な要素。
即ち戦争だからといって、あるいは国防に必要だからといって、国の経済力を遥かに超える装備などを揃えることは普通できない。
軍備に世界最大の予算をかける米国においてさえ、最新最強の装備だけで必要とする数を調達できないほど、最近の軍備の価格は高騰している。
F-15イーグルの初飛行は1972年、運用開始は1976年。
1970年代当時としても保守的な基本設計の機体だが、余裕を持った設計だったので拡張性が高かった。
新型ミサイルの装備、エンジンの更なる強化、電子装備の更新などの近代化改修で、ロシアのSu-27やユーロファイター タイフーン、フランスのラファールなどの80年代後半から90年代以降にかけて登場した新鋭機に伍して任務遂行能力を維持できている。
現在制空戦闘機で最強とされるのはステルス戦闘機F-22ラプターは価格が高すぎるため議会で調達数の上限を設定された。
廉価版ともいえる国際共同開発のステルス戦闘機F-35の開発は遅々としてすすまず、開発費は増加し続けている。
ステルス性では劣るが抜群の機動力を誇る一世代前の制空戦闘機がF-15。
ユニットコストはF-22で1億4200万ドル(2009年)、F-15C/Dで2,990万ドル(1998年)で、まさしく桁違い。
廉価版ステルス戦闘機F-35はA型(空軍型):9,800万USドル(低率量産)、 B型(海兵隊型):1億400万USドル(低率量産)、 C型(海軍型):1億1,600万USドル(低率量産)。 F-15にちょっとやそっとの延命化投資をしても十分割りに合いそうだ。
F-15E ストライクイーグルをベースに開発中の戦闘爆撃機F-15SE(サイレントイーグル)のユニットコストは1億ドル。
また改修!
「F-15」が現役で働き続けるワケ
新型機へのシフトが進まぬ事情とは?
2016年9月23日 東洋経済オンライン …(略)…
■アップグレード機「F-15C 2040」とは?
「F-35AライトニングII」は、ロッキード・マーティン社が中心となって開発を進めてきた単発単座のステルス戦闘機だ。
米空軍は8月、同機を装備する最初の部隊が、「最低限の任務を行える体制を達成した」と発表した。
いよいよ戦闘機の世代交代に弾みがついたといえる。
ところが、その一方でボーイング社は、2015年9月に現行主力戦闘機のひとつ、F-15Cイーグルを対象とする、「F-15C 2040」なるアップグレード改修を提案している。
F-15イーグルは、マクドネルダグラス社(現ボーイング)が1970年代に開発した戦闘機で、空中戦では無類の強さを誇る。
航空自衛隊でも導入しているので馴染み深い機体だ。
「F-15C 2040」は、そのF-15に対して2040年頃まで運用を継続できる能力を持たせましょうというもの。
主な改造内容は、燃料の搭載量を増やす、空対空ミサイルの搭載数を8発から16発に倍増する、コンピュータを新型化して情報処理能力を高める、データ通信の能力を強化する、といったところ。
今のF-15Cで見劣りし始めている能力を改善する狙いがある。
…(略)…
アメリカの場合、どの計画にどれだけの予算をつけるかの決定権を握っているのは議会。
「既存の機体のアップグレード改修」と「新造機への置き換え」が対立すれば、それぞれの機体を担当するメーカーの地元を地盤とする議員の間で、利益誘導の綱引きが起きる。
アメリカの議会では日常的な光景で、「国としての防衛産業基盤の維持」という建前とは違う世界がそこにある。
これもまた、安全保障をめぐるビジネスの一断面である。
実は、ボーイング社は日本に対しても「手持ちのF-15をアップグレードしませんか」とアピールしている。
しかし、防衛省はあまり乗り気ではないようだ。
対象になりそうなのは、すでに進行中の近代化改修計画から外れた古い機体。
これを改修するぐらいなら新しい機体に替えたいというのが本音のようだ。
とはいえ、本音が通るとは限らない。
米空軍が改修を決定したことを契機に、ボーイング社の売り込みがさらにヒートアップすることは間違いない。
「日々是決戦」のイスラエル国防軍(IDF)は各種兵器の延命化、バージョンアップを惜しまない。
専守防衛の自衛隊はめったなことでは延命化投資を行わない。
いつ納入されるかトンと分からないF-35対策として、F-4JのようにF-15Jに近代化改修を行う日はくるだろうか?
軍備(正面装備)を「世界一」ばかりを揃えるのは財政的に非常に厳しい。
限られた財源で数を揃えるのは容易ではない。
自衛隊も日本の防衛産業も近代化改修を真剣に考えてよいと思う。
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