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2022年10月03日
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テーマ: 石油価格(408)
カテゴリ: ロシア、ソ連
 湾岸戦争発生後、米国の世界外交戦略を石油戦略、エネルギー資源戦略からみる分析をよく目にした。
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 ロシアのウクライナ侵略戦争について、ロシア・プーチン大統領は「米国の世界支配への叛旗」と位置付けており、中国、インドも戦争は好ましくないとしながらも、その点は否定していないようだ。
 米国の世界支配は、あらゆる面からすすめられているが、エネルギー資源の支配は、重要な一部だ。
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 2022年8月の中国の原油輸入は、ロシアが前年比28%増の834万トン、サウジアラビアが前年比5%増の847万トンだった。8月のロシア産LNG(液化天然ガス)の輸入量は前年比36.7%増の67万1千トンと、約2年ぶりの高水準となった。
 中国は西側諸国とともに、エネルギー資源の購入を通じて、ロシア経済を支えている。

 ロシアのプーチン大統領は、原油価格が米国のWTIベースで決定されることも面白くないのだろう。
 中国がより多くロシアの石油を輸入したのは、ウクライナ侵略戦争を始めたロシアの石油が安いからだとされる。
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サウジ産が最大
ロイター編集
2022年9月20日2:51 REUTERS
 中国税関総局が20日公表したデータによると、8月の原油輸入は、ロシア産が前年比28%増加した。ただ、サウジアラビア産も拡大し、4カ月ぶりに同国からの輸入が最大となった。
 サウジ産原油の輸入は前年比5%増の847万5000トン(日量199万バレル)だった。
 ロシア産原油の輸入は834万2000トン(日量196万バレル)。日量ベースで5月に記録した過去最高の約200万バレルをわずか下回る水準だった。中国はロシアにとり最大の原油輸出国。
 8月の原油輸入は、製油所の操業停止や稼働率低下を背景に4035万トン(日量約950万バレル)と、前年同月比9.4%減少した。
  ―  引用終り ―
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 世界の工場となった中国は、エネルギー資源の巨大な輸入国となった。貿易で経済が発展した国は、平和の維持が大事なはずだ。中国のウクライナ侵略戦争に対する慎重な態度は、そのような事情を物語っているともみえる。
 工業の発展によりエネルギー資源の輸入依存度が高まったインドも、戦争で経済的に大きな不利益を被る国となった。
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 水圧破砕法の実用化によって米国のシェール油の生産が増加した。このことがOPECの石油価格への影響力を弱め、価格の大幅な下落をもたらした。2014年6月の1バレル114.84ドルから2016年1月の28.47ドルにまで下落した。
 OPECはOPECプラスの形でロシアなど複数の国と共謀して生産量を削減し、供給量を絞ったため原油価格は上昇した。
 米国のシェール油が「スイング・プロデューサー」としての役割を担うことができる現在、指標銘柄であるWTIは1バレル100ドル台の高値から、シェール油の採算点とされる70ドル台を前後する価格となった。
 国家の歳入の大半を原油販売収入に頼る産油国にとって、打撃としこりが残った形となった。
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 2016年の調査では米国が最も大きな石油備蓄量を有している(2640億バレル)と推定されている。
 2位はロシア(2560億バレル)で3位はサウジアラビア(2120億バレル)。
 石油、天然ガスなどのエネルギー資源国は、その価格に国家の存亡がかかっている。国内を制したと考えているロシアのプーチン大統領が、資源価格を通じて世界を支配する米国中心の構造に不満を抱くのも無理はない。
 ロシアはシリア内戦を支援した後ちウクライナ侵略戦争を始めたが、サウジアラビアはイエメン内戦を長年サポートしている。経済的余力のある資源国は、国外での戦争を支援する傾向があるのだろうか。
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 プーチン大統領は「西側へのエネルギー供給を場合によっては、完全に停止する」と言って、EU、NATO加盟国を脅した。短期的には大きな脅威だが、長期的には優良な顧客を失う可能性が高く、ロシアにとってもろ刃の剣となる。エネルギー資源を輸出できる国はロシアだけではないからだ。
 上海機構は、中国、ロシア、インドが中心となっている。これら3国は互い同士、直接的、間接的に国境問題を抱えており、1枚岩となるべくもないが、反米の1点で結集している。

 今も昔も、石油は重要な戦略物資だ。
 ロシアも中国もかつてのように、反米・全体主義国家であるキューバや北朝鮮に十分な救いの手を差し伸べられないでいる。東西冷戦構造は再現できない。
 世界経済への影響力の大きい覇権主義国家にまとまりを欠くため、ウクライナ侵略戦争になんらかの決着がついたとしても、世界情勢は東西冷戦構造の時代よりはるかに不安定な状態を続けるだろう。
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 ウクライナ侵略戦争によるドル高・円安で資源価格が著しく上昇し、石油をはじめとする様々の資源輸入国である日本の貿易収支が赤字を続けている。
 国は米国債を保有し、多額の海外投資を続けた企業は、多くの在外資産を保有している。
米国債を中心に巨額の海外債権をもつ日本は、円ベースにすると資産も大幅増となっているので、日銀は円安にとらわれず、低金利政策を継続している。
 片面の事実で「貿易赤字」などの危機感だけを煽る大マスコミも問題だが、だんまりを決め込む財政当局や日銀はもっと悪質だ。





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最終更新日  2022年10月03日 06時00分10秒
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