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2005.02.10
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松浦純菜の静かな世界
浦賀和宏『松浦純菜の静かな世界』
~講談社ノベルス~

 松浦純菜は、中学生の頃、何者かに襲われ、ひどい怪我を負った。療養のため、その町を離れた。
 数年後、彼女はその町に戻ってきた。旧友たちを集めてパーティーを開いた。しかし、親友だった貴子は来なかった。
 貴子は、パーティーの日にはもう、失踪していたという。その頃、体の一部が欠如した女子高生の死体が見つかった。貴子も、同じ犯人に殺されたようだった。
 同じ頃。八木剛士と彼の妹の美穂は、銃で撃たれた。しかし、奇跡的に剛士は無傷で助かった。
 純菜は、剛士の級友である友人、渚に頼み、彼に接近する。
 彼女は、貴子たちを殺した犯人を、自分たちで探そうというのだ。

 内容紹介は、純菜の視点で書いてみた。けれど、八木剛士の視点から見ても書けたのだけれど、松浦純菜はタイトルにも出ているので、彼女の視点で書いた。
 八木は、不細工で、スポーツもできなくて、多くの同級生、さらには後輩にまでも馬鹿にされ、からかわれていた。彼らをみんな殺してしまいたいと思っていた。

「私には分かるよ。(中略)殺したい奴って、確かにいるもの」と、純菜(この言葉は帯にも引用されている)。そして今の私は、純菜の言葉に賛同している。憎い相手を殺そうと思うことと、殺すことを実行にうつすことは、まったく異なる。そして、人間なら誰でも、一度は、憎い相手を殺したいと思ったことがあるのではないか。他人から見れば「些細なこと」と思われることで、殺意を抱いたことがあるのではないか。私は、ある。だから入院したんだし。
 なんで人を殺してはいけないの?殺そうと思ってもいけないの?これらに対する、一つの考え方も提示される。でも、正直今の私には、その考え方は受け入れられない。自分が、自分の大切な人が、傷つけられ、あるいは殺され、そんな経験をしても、「殺したい」とさえ思わないなんて、絶対無理だと思う。繰り返すけれど、殺人を実行に移すことと「殺したい」と思うことは別次元だ。「殺したい」と思っても、なんらかの形でそれを消化していくから(それは、たとえば、どんな理由があっても殺人はいけないと思うことでもある)、社会は成り立っているのだと思う。
 さて、本書の内容に戻ろう。ミステリとして扱われるのは、女子高生連続殺人事件。なぜ、犯人は死体の一部を持ち去ったのか?が、大きな謎かな。
 でも、この内容紹介をお読みいただいて分かるように、私は本書で扱われている他のテーマについて考えた。
   *
 被害者が悪い、という理屈。いじめられっこが悪い。いじめられる原因があるからだ、という理屈。本当に嫌になる。剛士は眼鏡をかけていただけじゃない。階段を、廊下を、道を、歩いていただけじゃない。それなのに馬鹿にされ、暴力を加えられる。彼が悪いの?どうしてそういう理屈になるの?
   *
 追記。「復讐は復讐を呼ぶ」。主治医にも言われた。でも、明らかに悪いことをしているのに、罰せられず、なんの責任も負わず、のうのうと生きていく人たちはいるのだ。許さないといけないの?
実際には、許せないけれど、どこかで消化して生きていくのだろうな。やっと、今の私は、そういう状態に、なんとかなれたところなんだと思う。
 そして私は、弱い方へ、楽な方へ逃げてしまい、あるいは悪気はないのに人を傷つけてしまうこともあるだろうけれど、「人を傷つけないようにしよう」という気持ちだけは失わずに生きていきたいと、思う。そういう気持ちがあるのとないのとでは、ずいぶんと違うと思うから。

さて、ご好評につき、私の本棚紹介第二弾(プロフィールに文庫の棚を紹介しているから、第三弾かな?)。
ハードカバーの棚
この本棚は祖父に作ってもらったもので、7段です(プロフィールに載せた文庫の棚も同じです)。上に、別の棚をくっつけて、そこに論文などのコピーをいれているファイルを置いています。この棚の下二段は、西洋史関連の専門書が並んでいます。

今日はまた、過去の自分にふんぎりをつける出来事があった。もっと悲しみを感じるかと思っていたけれど、思いの外精神的に揺さぶられることもなかった。ちゃんと浦賀さんの著書も読めたし。
明日は図書館が休館なので、『世界の歴史』のレジュメと洋書読みはお休みにしよう。調子が悪いからではなくて、自発的に、ちょっとゆっくりしたい、と思う。ゆっくりしよう。





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Last updated  2005.10.15 18:08:31
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