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2008.02.19
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~講談社ノベルス、2008年~

『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』 で第36回メフィスト賞を受賞してデビューされた深水黎一郎さんの第二作です。個人的にはデビュー作は物足りなかったのですが、本作は面白かったです。
 サブ・タイトルのレザルティスト・モウディ[Les artistes maudis]は、呪われた画家たちの意で、エコール・ド・パリの画家たちに与えられるイメージだとか。
 では、内容紹介と感想を。

ーーー
 エコール・ド・パリのブームに火を付けた画廊経営者、暁宏之が、密室状態の中、変死状態で見つかった。第一発見者は、暁家の執事。彼が不審な物音を聞いて、主人の部屋のある二階に上がったとき、廊下には誰もおらず、主人の部屋のドアは施錠されていた。急いで解錠して中に入ると、宏之は絶命していた。その胸には、ナイフが深々と刺さっていた。不審なのは、フランス窓には防犯用の閂がしっかりとかかっているのみならず、その閂には血が塗りたくられていたのだった…。
 後の警察の捜査で、庭の閂のかかった窓の下には、足跡が残され、普段は不審者対策に夜は放し飼いにされているドーベルマンも殺されていた。

ーーー

 上にも書きましたが、これは面白かったです。
 真相編の前に「読者への挑戦」も挿入されているほど、正当派のミステリです。そういえば、私の知る限りですが、最近の作家さんの作品で、「読者への挑戦」が挿入されている作品は珍しいような気がします。
 刑事さんたちのキャラクターも良かったです。警部("おおべしみ"の、べしの字が出ませんでした)が、最初のうちは―というか、まぁ全体を通して―うっとうしくて嫌だったのですが、途中から好感を持てたのが面白かったです。今では傍若無人な警部ですが、昔は(?)優秀な刑事だったとか。警部が過去に解決した事件についても少し言及がありますし、短編でもいいのでぜひ物語の形で紹介してもらいたいものです。
 なんだかんだで警部が一番印象に残りましたし、気になりました(笑)
 探偵役の瞬一郎さんの人生哲学も興味深かったです。
 地の文も軽快な感じで読みやすく、良かったです。

 物語の方は、事件の捜査がメインですが、いくつかの章(の頭)に、作中作、暁宏之氏が生前に著した『呪われた芸術家たち(レザルティスト・モウディ)』の一節が紹介される形になっています。この作中作も面白いのです。本当に、それだけで読んでみたい気にさせられます。
 真相も凝っていますし、なにより変に謎解き重視というよりも、きちんと物語が生きる真相なので、とても良かったです。まさか涙ぐむとは…。

 良い読書体験でした。
(2008/02/16読了)





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Last updated  2008.02.19 06:47:48
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