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2008.10.20
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ペルシャ猫を抱く女

~角川文庫、1981年8版(1977年初版)~

 中島河太郎さんの解説によれば、『刺青された男』に続く、戦後第二の短編集です。表題作含めて9編の短編が収録されています。
 では、簡単にそれぞれの内容紹介とコメントを。

ーーー
「ペルシャ猫を抱く女」 明治の犯罪を扱う本に「ペルシャ猫を抱く女」と題されて紹介された事件と、知人が私に話してくれた出来事との不思議な因縁話。
 この物語は、後に金田一耕助シリーズの短編(中編)「支那扇の女」( 『支那扇の女』 所収)の原型になっています。

「消すな蝋燭」 蝋燭の明かりを灯したまま、お志摩さんが私に語ってくれる事件。恋人が事件の犯人と目されてしまう若い女の悲劇が、蝋燭を消してはいけないという家の決まりにつながっていた。


「詰将棋」 仲の良い師弟が、詰め将棋をめぐっては互いに憎み合い、罵倒し合っていた。そしてそのことから、事件が起こってしまう。
 詰将棋をネタに一本の探偵小説を書いてしまうのもすごいと思いますが、人間の心の在り方なども伝わってきて、興味深い一編でした。

「双生児は踊る」 過去に銀行強盗の犯人が仲間割れをして、事件が起こった建物、キャバレー・ランターン。そこに、怪しい占い師、銀行強盗事件の関係者、警察関係者が集ったとき、また事件が起こる。被害者が言い残した、「暗闇の中の猫」の意味は…?
 こちらの作品も、後に金田一耕助シリーズの短編「暗闇の中の猫」( 『華やかな野獣』 )として改稿されることになります。

「薔薇より薊へ」 本からぱらりと落ちたのは、昔夫にあてて書いた恋文…しかしよく見ると、それは新しい「薔薇」から夫への手紙で、そこには自分を殺そうとする計画が記されていた…。
 ミステリというよりも、心理的なホラーといえる作品。

「百面相芸人」 百面相…というよりも、顔面模写という芸を売りにしている灰屋銅堂のもとに、奇妙な依頼が舞いこんだ。自分のふりをして、飲み歩いてくれるだけで良い、ただその間何をしていたかを後で知らせて欲しい。そうすると、多額の報酬を出すという。そして灰屋が楽しく飲み歩いた頃、依頼人の妻が殺されたという…。
 こちらは殺人事件も起こりますが、灰屋さんの名前からもうかがえるように、ユーモアたっぷりの作品です。

「泣虫小僧」 なにかにつけて泣いてばかりいる泣虫小僧の太一が、空腹をまぎらそうとある料亭の庭に忍び込んだが、料亭ではおかみが殺されていた…。後日、駅で靴磨きをしていると、ある少女が接近してくる。
 こちらも物語としても、謎解きの鍵の部分も楽しい作品でした。

「建築家の死」

「生ける人形」 酒場で、とつぜん一人の一寸法師を殺害し、自らも命をとった女優にまつわる奇妙な話。
 この話は、 『青い外套を着た女』 所収の短編「白い恋人」の改訂版のようです(いずれの短編についても、解説の中島河太郎さんはこのつながりを指摘していませんが)。「白い恋人」では余韻を残す終わりになっていますが、本編では一つの解決が与えられます。なんとも重たい気持ちにさせられる解決が…。
ーーー

 全体的に面白い短編集でした。上でも書きましたが、いくつかの話は以前の作品の改訂であったり、後の作品の原型になっていたりして、このあたりも興味深いと思います。


(2008/10/17読了)





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Last updated  2008.10.20 07:16:30
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