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2009.10.13
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伊豆の踊子

~新潮文庫、1999年123刷(1950年初版)~

 4編の短編が収録された短編集です。
 いつものような内容紹介のかたちではなくて、つらつらとそれぞれについて簡単にコメントを。

「伊豆の踊子」
 学生の「私」が、旅先で、旅芸人の一行と出会い、その中の踊子に思いを寄せていきます。嫉妬のような感情も抱きますが、しかしそれは、恋心ともまた違うようにも感じました。
 一行と数日を過ごした後の、船の中での少年との会話(それぞれほんの一言ずつしか書かれていませんが)を、この感想を書くにあたってぱらっと見てみたのですが、じぃんときてしまいました。一行と過ごした時間の濃さ、「私」が彼らに―もっといえば、踊子に―抱く思いの強さが、ひしひしと感じられます。
 あまりに有名な話でありながら、数年前に初めて読んで、しかもあまり内容を覚えられないという有様ですが、しかし今、今の自分なりに、味わいながら読むことができました。

「温泉宿」
 これは…なんとも分からない物語でした。独特の文体で、ある宿で働く何人かの女たちの生き方や行動がとりとめもなく(?)描かれているような…。

「抒情歌」
 亡くなった昔の恋人へ、「私」が語りかけます。

 そんな彼女が恋人と出会い、過ごしたシーンの回想では、二人の心がいかに通じていたかが描かれます。なかでも、「私」の母親が亡くなったときの二人の描写が印象的でした。
 ところが…。あらすじ的なことはここまでにしておきましょう。
 仏教の経典や、キリスト教、ギリシア神話などのこの世とあの世のあり方、死者のあり方、輪廻の存在などなどを、「私」が考え、死者に語っていくその内容を、興味深く読みました。
 最後に、印象的だった一節を引いておきます(文字色反転)。

私が今夜あなたにものいいかかける言葉もおかしなことだらけのようですけれど、でも考えてみますと、私は幾千年もの間に幾千万の、また幾億の人間が夢みたり願ったりいたしましたことばかりを言っているのでありまして、私はちょうど人間の涙の一粒のような象徴抒情詩として、この世に生まれた女かと思われます 」( 113 頁)

「禽獣」
 多くの動物たちを飼って暮らす、四十歳近い独身男性が主人公です。彼の、動物たちとのふれあい(?)が多く描かれる中で、一人の女性の思い出、あるいは現在の彼女への思いも、本作の大きなテーマの一つとなっています。
 …あまり十分には分からず、味わいきれなかった感がありますが…。

 先日も芥川龍之介を読みましたし、いわゆる近代文学も少しずつでも読んでいこうかなぁと思います。分からない部分もありますが、教養にもなりますし、単純に味わい深い部分も多くあるでしょうし。以前 『雪国』 を読んだときも、ものすごく面白かったですし、やはり名の残る作品は面白いでしょうから。

(2009/10/10読了)





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Last updated  2009.10.13 06:48:23
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