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2014.03.15
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M.-H.ヴィケール(朝倉文市[監訳]・渡辺隆司・梅津教孝[訳])『中世修道院の世界―使徒の模倣者たち―』
L'imitation des apotres. Moines, chanoines, mendiants (IV e - XIII e siecle) , Les Editions du Cerf, Paris, 1963)
~八坂書房、2004年~

朝倉文市『修道院』 に続いて、同じく修道制関連の本書を読みました(聖堂参事会員も扱われているので、厳密には修道制とはいいにくいですが…)。面白いのは、使徒的生活が、初期の修道士から12-13世紀の托鉢修道士まで、いかに受け継がれていったのか、という観点から研究されていることです。本書の原題を直訳すると、まさに『使徒の模倣―修道士、聖堂参事会員、托鉢修道会士(6-13世紀)―』であることからも、それはうかがえますね。
 著者のマリ=アンベール・ヴィケール(1906-)はフランス生まれで、22歳の頃にドミニコ会の司祭に叙階されたそうです。ドミニコ会やその創立者である聖ドミニコに関する研究の第一人者です。
 本書の構成は次のとおりです。

ーーー
緒言

序章 使徒の生活
第1章 修道士

 二 初代キリスト教会へのノスタルジー
 三 修道士の使徒的規律遵守
第2章 聖堂参事会員
 一 ウルバヌス二世から見た教会史
 二 聖堂参事会員の起源は使徒に由来するものではない
 三 聖堂参事会員の使徒的刷新
 四 聖堂参事会員の独自の方針
第3章 托鉢修道会士(ドミニコ会士)
 一 「使徒的」という言葉の新たな意味
 二 使徒的巡回の発見
 三 修道院において巡回の理想が安定する


原註
原著参考文献
邦訳参考文献

付録 メッス司教クロデガングによる司教座聖堂参事会会則

訳者あとがき

ーーー

 共同生活、手仕事、清貧、伝道(説教)……と、いわゆる「使徒的生活」がもつ要素は多くあります。それらが、どのように修道制(ひとりでの清貧・苦行を重視する隠修士から、共同生活を行う修道士たち、托鉢説教を行う托鉢修道会士たちなど)、あるいは世俗の中の教会で、修道士のような生活を志した律修聖堂参事会員たちのなかで、重点を置かれたのか、どのように受け継がれていったのか。この明快な視点で論じられるだけでなく、平易に語られているので、とても読みやすいです。
 朝倉先生の本でも面白かったのですが、本書でも、律修聖堂参事会員と修道士ではどちらが使徒に近いのか、という論争が両者のあいだであったことが指摘されていて、興味深かったです。どこまで本気で論争していたのか、という気もしますが、「信者により権威のある会に移る権利を与えないことで、聖堂参事会の中で、修道士や修道院が安定した地位を占められるようにする」という指摘もありますし、単純に名声を勝ち得た方が、多くの寄進も得られるということもあるのだろうとも思います。
 ヴィケールの本論自体は170頁で終わり(1頁の文字数も少なめです)という小著ですが、訳注も充実しています。さらに、付録として、聖堂参事会会則が収録されているのも嬉しいです。
 会則も、単純に面白いところがいろいろありました。たとえば、出納係は、「飲酒癖があったり、争いを好み、短気な者であってはなら」ないとか、台所の務めについて規定した部分では、掃除をしなければならないこと、務めの用具が壊れた場合には赦しを請わねばならないと規定されているとか……。史料といえば例話や説教、聖人伝や書簡をいくつか読んでいるくらいで、こうした会則の史料を通読することがなかなかないので、刺激になりました。





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Last updated  2014.03.15 10:51:37
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