リン・ハント編(筒井清忠訳)『文化の新しい歴史学』
~岩波書店、 2000 年 [1993 年 ] ~
( Lynn Hunt (ed.), The New Cultural History , University of Carifornia Press, 1989 )
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謝辞
序論 歴史・文化・テクスト(リン・ハント)
第一部 文化史のモデル
第一章 ミシェル・フーコーの文化史(パトリシア・オブライエン)
第二章 E・P・トムスンとナタリー・デーヴィスの著作における群衆・共同体・儀礼(スザンヌ・デザン)
第三章 ローカル・ノレッジ、ローカル・ヒストリー―ギアーツとその後(アレッタ・ビアサック)
第四章 文学・批評・歴史的想像力―ヘイドン・ホワイトとドミニク・ラカプラの文学的挑戦(ロイド・S・クレーマー)
第二部 新しいアプローチ
第五章 アメリカのパレード―19世紀における社会秩序の表象(メアリー・ライアン)
第六章 テクスト・印刷物・読書(ロジェ・シャルチエ)
第七章 身体・細部描写・人道主義的物語(トマス・W・ラカー)
第八章 ルネサンス君主の部屋における視覚文化(ランドルフ・スターン)
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序論は、 19
世紀末頃から歴史学が社会史に関心を寄せる過程を描き、また本書の概要を示します。ハントによれば、社会史に関心を寄せる二つの大きな流れとして、アナール学派とマルクス主義があります。そして近年の、文化史的アプローチが紹介されます。
第一章は、ミシェル・フーコーの諸著作の概要と、それが研究者にいかに受けとめられてきたか、またその意義を論じます。フーコーにとって、国家、身体、社会などは確固たる対象ではなく、それらは言説である、彼の権力研究では言説が方法論の中心をなしているというあたりを興味深く読みました。
第三章は、人類学的アプローチについて。
第四章は、文学批評の観点から、歴史学の叙述のあり方に挑戦する二人の研究者の業績を紹介します。これは今の私には理解できませんでした。
第二部は具体的研究なので、第一部よりとっつきやすいです。
第六章は、読書の歴史で有名なロジェ・シャルティエによる論考。従来、テクスト(著者)と読者の直接の関係が研究されていましたが、その間に、出版社や編集者の意向が入る点にも注意する必要がある、という指摘が興味深かったです。一口に「読書の歴史」といっても、多様な問題に配慮すべきことが示されます。
第八章は、ある城の「夫妻の間」又は「婚礼の間」として知られる部屋の絵画を取り上げ、それらがその部屋でもった効果について論じますが、いまの私には理解が困難で、流し読みしてしまいました。
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