周木律『五覚堂の殺人』
~講談社ノベルス、 2014 年~
放浪する数学者、十和田先生が活躍するシリーズ第3弾。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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十和田は、善知鳥神に導かれ、東北にある五覚堂を訪れた。そこは、名高い数学者にして哲学者の志田幾郎の別荘であり、奇矯な建築家・沼四郎が手がけた建物だった。
がらんとしたその建物で、十和田は神からビデオを見せられる。この建物に設置された隠しカメラで、起こった事件を映したものだという。
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数学専攻の修士課程の学生、宮司百合子は、友人の志田悟に誘われ、五覚堂を訪れた。悟の祖父、幾郎が亡くなり、その遺言が発表されるのだという。
そして、奇妙な遺言により、百合子たちは 30 時間の間、外部との接触を断たざるをえなくなる。そんな中で、密室状況での殺人事件が繰り返される。
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『双孔堂の殺人』 事件で知り合った毒島刑事が、宮司司警視正の元を訪れた。毒島によれば、23年前に志田家で起こった事件を調べろという匿名の通報が入ったという。それだけであれば無視できる内容だが、通報者は、宮司兄妹の名も口にしたというのだった。
当時、志田家で働いていた若い家政婦が惨殺された上で、家に浮かぶ船もろとも焼かれてしまった。その直前に病院を抜け出していた不審な男が犯人とされたものの、記録を読み進めるうちに、宮司は冤罪の可能性を否定できないとの思いに至る。
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百合子さん、十和田先生、司さんの3人の視点で物語が進んでいきます。十和田先生が感じる違和感はなんなのか。23年前の事件と今回の事件のつながりは。密室殺人はいかになされたのか。魅力的な謎が満載です。
今回は、ある仕掛けにはすぐに気づくことができました。ミステリは好きなものの、仕掛けに気づくことは滅多にないので、これは嬉しかったです。
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