~法政大学出版局、 2004 年~
( Jean Richard, L’esprit de la croisade , Paris, 1957 )
著者のジャン・リシャールは 1921 年生まれ。パリの国立文書学校、高等研究院で学び、のちはディジョン大学の文学部長や碑銘文学アカデミー会員などを歴任されており、十字軍に関する研究を多く刊行されています。(詳細は訳者あとがき参照。)
本書の構成は次のとおりです。
―――
凡例
日本の読者へ
第一部 叙述
第一章 十字軍の歴史
第二章 十字軍の精神
第三章 テクスト案内
第二部 テクスト
第一章 呼びかけ
第二章 応答
第三章 十字軍のキリスト教徒
付録1 年表
付録2 文献案内
原注
解説に代えて
訳者あとがき
索引
―――
上記構成のとおり、本書は大きく二部構成となっています。第一部は、十字軍の歴史と概要と「精神」を描き、第二部は、具体的な史料の引用となっています。
第一部第一章は、まず、十字軍の歴史を概観します。ただし、第一回十字軍では誰がどうして……という通史的な叙述ではなく、十字軍と巡礼の関係や、西欧の防衛といったいくつかの観点からの叙述となっています。
本書のタイトルと同じ標題の第二章は、「兄弟愛」「イスラーム教徒に対する憎悪、それとも尊敬」、「騎士の名誉」、「金銭上の心配」などの15の観点から、「十字軍の精神」を描きます。
第三章は、第二部のテクストについてのごく簡単な概要です。
第二部は、十字軍についての主要な史料の引用となっています。有名な、 1095
年のクレルモン教会会議での教皇ウルバヌス2世による十字軍への呼びかけから始まり、その他の教皇による書簡、文学作品、従事者による記録など、多様な史料が紹介されます。
「解説に代えて」として、訳者である宮松先生による、シンポジウムでの報告「ヨーロッパ史における十字軍―新しい時代へ―」が掲載されています。この報告は、膨大な十字軍の先行研究について、主要研究をもとに簡潔な見取り図を示してくれるほか、こんにちの論点なども提示しており、たいへん興味深いとともに勉強になりました。
以上、簡単なメモになりましたが、十字軍研究をおさえておくうえで、勉強になる一冊でした。
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