Stephen C. Ferruolo, The Origins of the University. The Schools of Paris and Their Critics, 1100-1215
, Stanford, Stanford University Press, 1985
著者のフェルオーロは現在サン・ディエゴ大学法学部の教授のようです。
本書の構成は次のとおりです。(拙訳)
―――
謝辞
序論
第1部 諸学校
第1章 パリと教育の拡大
第2章 サン=ヴィクトル学派
第2部 批判
第3章 学校に対する修道院からの批判
第4章 諷刺家たち
第5章 人文主義者たち
第6章 モラリストたち(1)―学者への説教―
第7章 モラリストたち(2)―改革の推進―
結論 パリ大学の形成
注
引用写本一覧
索引
―――
本書の目的などを記す序論では、大学の3つの特徴として、 (1)
持続的共同体であること、 (2)
知の共有・伝達を強調すること、 (3)
広い制度的構造に位置づけられること、が挙げられます。
第1章は、本書が扱う時代のパリの状況を概観した後、パリ大学発展の要因としてアベラールが果たした役割を強調しています。
第2章はパリ大学成立の前史として、サン=ヴィクトル学派について論じます。ここでは、特にユーグ・ド・サン=ヴィクトルが果たした役割を強調した後、彼の後継者たちの状況を描きます。
以上の第 1
部は本書の前提をなす部分で、第2部が本書の核となります。
第3章は、シトー会士クレルヴォーのベルナールを中心に、修道士による学者(学校)への批判を論じます。(たとえばベルナールは、学者の好奇心、野心、好色などを批判。)
第4章は、ギョーム・ド・シャティヨンなどの諷刺作家による学者批判を論じます。(あまりなじみのない史料、テーマなので、今回十分に読み込んでいません。)
第5章は、ソールズベリのジョン、ブロワのペトルス、ウェールズのジェラルド(ギラルドゥス・カンブレンシス)という3名の「人文主義者」による学者批判を論じます。(第4章に同じ。)
第6章・第7章は、モラリスト(実際に扱われるのは主に説教師たち)による学者批判を論じます。私の問題関心に近く、最も興味深く読みました。
まず第6章は、着目する 16
人の説教師について、その略歴と主著を示した後、当時の説教の在り方を概観します。特に、 12
世紀末~ 13
世紀初めに誕生する「例話」(説教のメッセージを聴衆にわかりやすくするための逸話)と「身分別説教集」(想定された聴衆ごとに、あるべきふるまい方などを示す)の重要性が強調されます。また本章でもう1点重要なのは、律修聖堂参事会員の著作を特徴づける「言葉と模範で教える」という理念との関係です。この理念を分析した Bynum
で示されるのは、あくまで聖堂参事会内部での生き方を念頭においたものであるのに対して、モラリストでは、司牧生活の責任を強調する概念となっている、というのですね。
第7章は、学者への批判として、好奇心や虚栄、聖職売買が挙げられることを示した後、学者へのモラリストのメッセージを示す事例として、ジャック・ド・ヴィトリによる「学者への説教」を詳細に分析します。
結論では、ロベール・ド・クールソンによる 1215
年の大学規約を紹介するとともに、この規約はそれまでに成立していた状況を成文化したものとして、 1208
年頃には教師たちは団体として行動していた、とします。
なお、本書の主張は大嶋誠「パリ大学成立史研究の展開と展望」『上智史学』 59
、 2014
年、 127-139
頁にも簡明に示されています。
学生時代に購入して以来、なかなか通読できていませんでしたが、私の関心からいえば、もっと早く読んでおくべき一冊でした。ともあれ、このたび通読できて良かったです。
( 2020.12.28 読了)
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