G. R. Owst, Literature and Pulpit in Medieval England. A Neglected Chapter in the History of English Literature & of the English People
, Oxford, Basil Blackwell, 1961 2
以前紹介した G. R. Owst, Preaching in Medieval England. An Introduction to Sermon Manuscripts of the Period c.1350-1450
, Cambridge, 1926
に並び、今なお参照される後期イングランド説教活動と文学の関係を論じた研究書です。第1版は 1933
年に刊行されています。
本書は 600
頁を超える大著で、今回はほとんど流し読みですが(どのあたりにどんなことが書かれているか、目次の小見出しを参照に構成を確認した程度)、簡単にメモしておきます。
本書の構成は次のとおりです(拙訳)。
―――
第1章 導入的影響、言語、小説的、現実主義
第2章 聖書と寓意
第3章 「天の大軍」
第4章 説教「例話」における虚構と教育
第5章 風刺と批判の説教活動(1)
第6章 風刺と批判の説教活動(2)
第7章 風刺と批判の説教活動(3)
第8章 説教と演劇
第9章 社会的福音の文学的反響
―――
大要、説教活動と文学(チョーサーやシェイクスピアなど)との関連が論じられます。
第1章では日常生活の描写として動物の鳴き声への言及やことわざに関する議論が興味深かったです。
第2章では、たとえば船や城といった寓意が紹介されます。
第3章は聖書の登場人物や聖人崇敬に関する議論です。
第4章は私が関心を寄せる例話に関する議論です(例話についてはたとえば アローン・ Ya
・グレーヴィチ(中沢敦夫訳)『同時代人の見た中世ヨーロッパ― 13
世紀の例話―』(平凡社、 1995
年)
を参照。グレーヴィチも本書から引用しています)。異国の情景や習慣に関する個人的観察に由来する例話についての言及が興味深いです。その他、歴史書、古代の神話などからの例話採用などが紹介されます。
第5章から第7章までが本書の山場といえるでしょう(3章合計で約 260
頁と、本書の3分の1以上の分量を占めます)。第5章は前段として、英語の俗語風刺文学の起源として、ジョングルールなどについて論じた後、聖職者に対する批判について、高位聖職者、修道士など様々な立場からの批判を紹介します。第6章は富裕者や騎士、商人など、様々な社会階層への批判について。第7章はより一般的な風刺として女性への批判や、虚栄、飲酒、大食などの悪徳への批判について論じます。
第8章は説教と演劇の関係について。このテーマについては、邦語ではたとえば石野美樹子「中世の説教と『織物業者組合の劇』―否定と確認の儀式―」『静岡大学教養部研究報告(人文・社会科学篇)』 18-2
、 1982
年、 149-162
頁があります。
第9章は社会の様々な身分とそれぞれの職務についてなど、関心のあるテーマが論じられており、読み直す必要を感じています。
以上、簡単なメモになりましたが、このあたりで。
(2022.01.21 読了 )
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