筒井康隆『馬の首風雲録』
~文春文庫、 1980
年~
戦争をテーマにした長編小説。
サチャ・ビ族で、戦時中に商業で生計をたてる戦争ばあさんには、4人の息子たちがいました。長男ヤムは酒飲みですが、やがて大成する何かを持っています。次男のマケラは兵隊になり、こちらもやがて手柄を立てることになります。三男トポタンは詩作好きで、空想しがちの青年。そして四男のユタンタンはしゃべることができず周りからは知能も低いと思われていますが、自分なりの思いをもって行動します。この4人の活躍が主になります。
国家軍によるブシュバリク壊滅作戦が進行する中、食い止めようとするヤムや、作戦の本拠地でのマケラたち一隊の活躍と惨劇、そして暴徒化した農民たちが富裕層を虐殺するシーンなど、印象的なシーンが数多くあります。
久々に筒井さんの作品を読んだので、筒井さん流のどたばたな描写(泣きわめいたり「おれは死ぬ。死んだ。もう死んだ。おれは死んだ」という言い回しだったり)も懐かしく読みました。
「どたばた」は筒井さんあとがきにもある本作のテーマの一つですが、やはり根底には戦争のあり方への疑問や、戦争がかっこいいと言われた時代もあった中で、でも実態はどうか、というメッセージが感じられました。
もともとSFマガジン 1966
年9月号から 1967
年2月号に連載され、単行本は 1977
年に刊行された本作ですが、全く古臭さを感じません。
(2022.01.21 読了 )
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