池上嘉彦『ふしぎなことば ことばのふしぎ』
~筑摩書房、 2022
年~
筑摩書房ホームページの新刊案内で気になったので手に取った一冊。
本書の初出は 1987
年。おおもとは、ラボ教育センターから刊行されていた月刊誌『ことばの宇宙』に、 1984
年から2年間連載されたものとのことで、ことばについて子どもたちに向けて書かれたやさしいエッセイという趣です。
本書の構成は次のとおりです。
―――
はじめに
1 ことばの始まり
2 擬声語と擬態語
3 絵文字と文字
4 同音語
5 「音」と「色」
6 なぜ「辞書」は「ひく」のか
7 新しい世界を創ることば
8 「ひゆ」―たとえるということ
9 おかしなことば、おかしな言いまわし
10
「よい」意味のことば、「悪い」意味のことば
11
おさるのおしりはなぜ赤い
12
「かえ歌」と「パロディ」
13
「なまえ」と「あだな」
14
身振りとことば
15
動物の「ことば」
16
人間の「ことば」
おわりに 伝えることばと創り出すことば
次に読んでほしい本
―――
全体で 125
頁ほどで、字も大きく、ですます体で読みやすく書かれているので、読み終えるのは早かったですが、内容も面白いです。
前提として、言語学の初歩を教えてくれたり、ことばのふしぎについての知識を与えてくれる、という性格ではありません。もちろん、構成にあるように、「擬声語」や「ひゆ」などについての基本的事項は教えてくれますが、本書が目指すのは、ことばのふしぎについて、一緒に考えよう、というスタンスと感じました。(たとえば、いろんなクイズも出されますが、答えは示されません。)
そして、7章と「おわりに」に、「創る」という言葉があるように、本書では、ことばが新しい世界を創り出す力を持っている、という点を強調しています。上に、池上先生の著作に『ことばの詩学』があると紹介しましたが、本書でも、詩から多くの例が引かれています。様々なことば遊びも紹介されます。ことばには、伝えるだけでなく、「あそび」によって新しい世界を創り出す力があるんだよ、いろんな言葉について少し立ち止まって考えてみよう。そういうメッセージを届けてくれるように思います。
良い読書体験でした。
(2022.10.01 読了 )
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