平野啓一郎『日蝕』
~新潮文庫、 2002
年~
平野啓一郎さんのデビュー作にして、芥川賞受賞作です。
1482
年、パリで神学を学んだ私―ドミニコ会士ニコラは、非常に興味深い写本の一部を見つけます。後にフィチーノ『ヘルメス選集』と知ることとなるその完本を求め、また関連する書籍を入手するため、彼はリヨンへ向かいます。ところが、当地の司教から、近隣の村で錬金術に造詣の深い人物を紹介され、その村を訪れてから、彼は思いがけない経験をすることになります。
堕落した生活を送る村の司祭。異端審問のためその村を訪れ、村人たちの尊敬を集める、同じドミニコ会士のジャックとの出会い。そして、錬金術師ピエールの博識と、その作業の神々しさ。ピエールに生活必需品を届けるギョーム、その唖の息子……。
ある日、森の奥深くに向かうピエールのあとを追ったニコラが目にする光景、そしてピエールたちに訪れる運命とは。
上の概略では、ピエール、ギョームと表記しましたが、作中ではピエェル、ギョオムと表記されます。パリは巴里など、地名は漢字。そのた多くの言葉が漢字表記で、まるで明治期に翻訳されたかのような体裁です。そのためやや読み進めにくく、神学的な考察など、ニコラの内面の描写も多いですが、洞窟でのある出会いから、物語は一気に進展し、どんどん読み進められました。
かつて、学生時分に同期に勧められて読んで以来ですから、 20
年ぶりくらいの再読になりますが、興味深く読みました。
(2022.09.11 読了 )
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