~角川文庫、 1976
年~
金田一耕助シリーズの短編4作が収録された短編集。
1996
年改版に伴い 『首』
と改題されていて、『首』についてはすでに記事を書いていますので、内容紹介はその記事から再録。
―――
「花園の悪魔」
昭和2X年4月。Sという温泉場の花園の中で、全裸の女性の死体が発見された。被害者であるヌードモデルのアケミは、旅館の人々に顔を隠した人物と、旅館の離れで会っていた。しかし、最重要参考人であるその人物―アケミと親しい欣之助と思われた―の行方は、つかめなかった。
「蝋美人」
最愛の娘を亡くしてから、悪い評判もたちはじめた医学博士の畔柳氏が、腐乱した自殺死体の骨に肉付けをして、生前の姿を再現しようと計画した。再現された「蝋美人」は、防犯展覧会に出品されたが、これが物議を醸した。それが、夫を殺して失踪したと考えられていた、妖花マリとそっくりだったからである。その頃、金田一耕助のもとに仕事の依頼があった。マリによる夫殺し(と思われていた)の事件を見直してほしいというのだった。
「生ける死仮面」
昭和2X年8月。奇人として知られる古川小六のアトリエからの異臭に気付いた警官がアトリエをのぞくと、古川が、死後そうとうの時間のたった美少年の隣におり、デスマスクに化粧しようとしていた…。男色家で知られる古川のこととて、昭和の「青頭巾」事件ともいわれた事件であるが、少年は、殺害されたわけではなかった。単純な事件と思われたが、金田一耕助は、複雑な背景があるのではないかと考える。
「首」
300
年前、名主が殺害され、その首がちょこなんと置かれた岩は獄門岩、その身体が流れ着いた場所は首なしの淵と呼び習わすようになった。岡山県の小村に休養にきていた金田一耕助は、なじみの磯川警部からそんな話を聞いた。ところが、昨年も、猟に出ていた旅館の主人が殺害され、その首が獄門岩に置かれ、体は首なしの淵から発見されたという。磯川警部は、その事件を解決しておらず、忸怩たる思いを抱いていたが、さらに、警部と金田一耕助が旅館に滞在している間に事件が起こった。映画撮影にきていた一行がいたが、映画監督が殺されたのだった。一年前と全く同じ状況で…。
―――
『首』の記事をアップしたのが 2007
年9月8日ですから、 15
年ぶりくらいの再読。
何度読んでも「首」は面白いです。なんのために首を切ったのか、という大きな謎に加えて、ラストにみせる金田一さんと磯川警部の優しさも味わい深いです。
今回読んだなかでは、「生ける死仮面」も印象的でした。猟奇的な事件の裏に隠された真相を探り当てていく金田一さんの推理が素敵です。
中島河太郎さんによる解説も、作品の初出媒体・年代と、簡明な概要が示されて、いつもとても参考になります。
(2023.02.22 読了 )
・や・ら・わ行の作家一覧へ米澤穂信『折れた竜骨(上・下)』 2024.06.22
米澤穂信『Iの悲劇』 2024.06.08
米澤穂信『本と鍵の季節』 2024.05.25
Keyword Search
Comments