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2023.11.11
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ピーター・バーク(長谷川貴彦訳)『文化史とは何か 増補改訂版』
~法政大学出版局、 2010 年(第2版 2019 年)~
(Peter Burke, What is Cultural Histor y, Second Edition, Cambridge, 2008)  ピーター・バークは、 1937 年ロンドン生まれ。2008年時点(本書刊行時)では、ケンブリッジ大学に籍を置く歴史家です ( 訳者あとがき、 200 頁より )
 バークについては、本ブログでも次の著作を紹介しています。
・ピーター・バーク ( 大津真作訳 ) 『フランス歴史学革命-アナール学派 1929-89 年-』岩波書店、 1992
・ピーター・バーク編 ( 谷川稔他訳 ) 『ニュー・ヒストリーの現在-歴史叙述の新しい展望』人文書院、 1996
 また、訳者の長谷川先生の著作として、次を紹介しています。
・長谷川貴彦『現代歴史学への展望―言語論的転回を超えて―』岩波書店、 2016

 文化史の潮流をコンパクトにたどる本書の構成は次のとおりです。

―――
謝辞
序論
第1章 偉大なる伝統
第2章 文化史の諸課題

第3章 歴史人類学の時代
第4章 新たなパラダイム?
第5章 表象から構築へ
第6章 文化論的転回を超えて?
結論

エピローグ― 21 世紀の文化史

訳者あとがき(初版)

増補改訂版への訳者あとがき
読書案内
文化史セレクション、 1860-2007 年(年代順リスト)
註記
索引
―――

 第1章は、文化史の段階を4つに区分します。1:「古典的段階」、2:「美術の社会史」の段階( 1930 年代~)、3:民衆文化の歴史の発見 (1960 年代~ ) 、4:「新しい文化史」の段階。
 そして第1章では、1の段階の歴史家としてヤーコプ・ブルクハルトとヨハン・ホイジンガを、2の段階としてアビ・ヴァールブルクとパノフスキーらが挙げられます。
 第2章は、「文化史の諸課題」として、マルクス主義との関係や、「民衆」「文化」の定義を取り上げます。
 第3章は、私が関心を寄せてきている歴史人類学について。フランスのアナール学派の成果が想起されますが、本書はロシア(当時のソヴィエト連邦)のグレーヴィチや、アメリカでの研究者らが、そして「ミクロストリア」としてイタリアのギンズブルグらが強調されている印象でした。
 第4章は、新しい文化史にとって重要な4人の理論家として、ミハイル・バフチン、ノルベルト・エリアス、ミシェル・フーコー、ピエール・ブルデューを取り上げ、彼らの理論や影響についてみていきます。
 第5章は、「構築」という観点から、たとえば共同体についてのベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』やホブズボームほか編『創られた伝統』といった研究や、個人のアイデンティティ、パフォーマンスなどに着目する研究について論じます。
 第6章は、暴力、認識(たとえばアラン・コルバンによる、においや音についての研究)、辺境などに関する研究を取り上げます。
 結論に続くエピローグは、第2版で追記された部分で、初版(原著 2004 年)刊行後の動向に目配りをしています。
 巻末の「文化史セレクション」と題された文化史関連の研究の年代順リストには、邦訳のある著作には邦訳の情報も付されていて便利です。
 読了から記事を書くまでに時間が経ってしまい、あっさりしたメモになってしまいましたが、冒頭にも書いたように、コンパクトに文化史の流れをたどることのできて便利な一冊です。

(2023.06.19 読了 )

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Last updated  2023.11.11 13:30:46
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