アンドレ・ヴァラニャック/マルト・ショロ=ヴァラニャック(蔵持不三也訳)『ヨーロッパの庶民生活と伝承』
~白水社文庫クセジュ、 1980
年~
André Varagnac et Marthe Chollot-Varagnac, Les traditions populaires
, Paris, 1978
民俗学、シンボルを専門とするヴァラニャック夫妻による、パリの高等学術研究院(
École des Hautes Études en Sciences Sociales.
訳語は訳者による。私が勉強してきたところでは、社会科学高等研究院の訳語のほうがなじみ深い)での講義録をもとにした1冊です。
本書の構成は次のとおりです。
―――
序文
第1章 プレープロト・ヒストリーの概念
第2章 暦について
第3章 年齢階梯
第4章 家族と職人的伝承
第5章 住居と動産
第6章 衣服・護符・装飾品
第7章 民間芸術
第8章 食について
第9章 民間医療
第 10
章 口承文芸
結論
訳注
あとがきにかえて
参考文献
アンドレ・ヴァラニャック主要著作一覧
―――
第1章は、アウストラロピテクス以降の、人間と道具の関係、壁画などについて論じます。
第2章は天文暦、農業暦について簡単に概観した後、キリスト教教会暦に沿って、それぞれの祝日の裏にある古い慣習や意義、儀礼についてみていきます。
第3章は、 (1)
乳幼児、 (2)
子供、 (3)
青年男女、 (4)
新婚男女、 (5)
家長・主婦、 (6)
寡夫・婦、 (7)
老人、 (8)
故人の8つの年齢階梯を掲げ、それぞれについて、ヨーロッパや非ヨーロッパの共同体におけるそれぞれの年齢階梯の役割・彼等へのまなざしなどを論じます。本書の中で最も分量のある、中心となる章といえるでしょう。
第4章以降は3~7頁と短い章が続きます。概要は構成のとおり。
結論は、本書全体のまとめであり、また著者の立場が明確に表明される場です。各章にも、やや乱暴にまとめてしまうと、現代社会のあり方を批判し、民俗的な風習を称賛する記述が見受けられますが、結論は明確にその立場を示しています。特にそれを示すのが、「われわれより前には何一つとして有効なものはない、などと考えるのは、明らかにわれわれの自惚れに他ならない。各自が、各民族が、何かしら学ぶべきものをもっており、更に、何かしら他人なり他の民族なりに与えることの出来るものを持っているということ。これはしっかりと理解しておかなければならない基本的な考えである」 (142
頁 )
という記述と思われ、また印象的でした。
訳者によるヴァラニャックの研究の意義を整理した「あとがきにかえて」も興味深く読みました。
(2024.08.14 再読 )
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