R・マンセッリ (
大橋喜之訳 )
『西欧中世の民衆信仰―神秘の感受と異端―』
~八坂書房、 2002
年~
Raoul Manselli, La religion populaire au Moyen Âge. Problèmes de méthode et d’histoire
, Montréal, 1975
本書は、ラウール・マンセッリ (1984
)
が 1973
年モントリオール大学の中世研究所の招聘により行った中世の民衆的異端に関するセミナーを元にした仏語版原著の全訳です。さらに、マンセッリの没後、 1985
年に刊行されたイタリア語版から、「緒言」と「序」が訳出されているほか、タイプ原稿のまま印刷に付された講義録から、本書に関する主要な項目(「アルルのカエサリウス」や「トマス・アクィナス」などの人名、「異端」「カタリ派」などの項目)が、「補遺」として訳出されています。
本書の構成は次のとおりです。
―――
緒言(エディス・パストゥール)
序(ピエール・ボリオーニ)
第I章 方法の問題
第 II
章 民衆の信仰とその信仰形態
第 III
章 民衆運動と教会
第 IV
章 教会と民衆の信仰
補遺
訳者あとがき
原註
索引
―――
以下、印象的だった点のみメモしておきます。
第I章では、一口に「聖職者」階層といっても、その階層は「ひどく細分されまた異なった水準の者たちからなっていた」ため、彼らを「学識者階層とみる深刻な過ちを犯さないようにせねばなりません」 (39
頁 )
という指摘が重要だと思われます。
第 II
章は、具体的に民衆信仰の諸相を見ていきます。扱われるテーマは神、奇蹟、聖人・聖母・悪魔と天使など、多様です。ここでは、たとえば奇蹟に関して、民衆にとっては奇蹟は聖人が起こすものであり、教会にとってはあくまで神の歴史的しるしである、という両者の相違が指摘されるように、民衆の信仰のあり方と、教会の態度(たとえば、救済を得るための各種の秘蹟)が論じられていきます。
第 III
章は、異端や、ユダヤ人・ムスリムなど、いわゆる正統教会外の人々に焦点を当てていきます。異端と正統のはざまのような巡歴説教師たちの活躍なども、大変勉強になります。
第 IV
章も、一部第 III
章と重複するテーマを扱いつつ、教会が異端者たちに対してどのような対応をしたか、に軸足が置かれます。
個人的には、訳者が、 『サマー・アポカリプス』
を上梓した笠井潔さんに連れられて、現象学の講読会に参加したという、訳者あとがきの中で語られるエピソードが興味深かったです。
学生時分に、このテーマに関する概観を得るのに大変有益だった1冊です。特に、補遺では基本的な事項の概観も得られるので、便利です。
(2026.07.04 再読 )
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