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ネットニュースで、とある漫画家さんの盗作疑惑についての記事を読みました。吃驚。私がこのブログでも、何度かレビューを書いていた作家さんでした。悩んだんですが、その作家さんの作品に対するレビューは、先程全部削除しました。良い話だと思ったのはホントだし、レビューも真面目に書いたつもりなんですが、やはり検証サイトを見る限り、盗用は気のせいばかりではなさそうなので。しかも、絵を写した事とか、作家さん本人が認めちゃってますしね。(^-^;)勿体無い事をしたと思います。私も仕事柄、遠い世界にいる訳ではないので、締めきり間際の絵を描くツラさとか、良く分るんですが。それまでどんなに真面目に描いていても、一度人の絵を盗んでしまえば、今まで自分が努力して来たものは、いとも簡単に崩れ去ります。そして、失った信用を取り戻すのには、締めきり間際のツラさの、何倍以上もの辛い思いをしなくてはならなくなります。正直、何処にでもあるような、地味な最初の頃の絵から、最近(?)の絵の、眩しいばかりの変ぼうぶり、私も、蝶の羽化を見たような感覚を抱かせて貰ったのに、それだけに残念でなりません。あんなに上達した自分の腕を、自分で貶めてしまうなんて、本当に勿体無い。今後は、真摯に自分を裏切る事なく、自分なりの素敵な作品を、作って行かれる事を期待します。それにしても、盗用画像検証した人、良く見つけたなぁ。(感心)
2005年10月19日
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┌────────────────────────┐│ ││ ││ レンへ ││ ││ 留守のようだったので、また来ます。 ││ 色々と話したいことがあって。 ││ このメモに書いておこうかとも思ったんだけど、 ││ やっぱり、顔を見て話した方がいいと思うから。 ││ でも、これだけは言っておいた方がいいよね。 ││ ││ 昨日は、ごめん。 ││ ││ ││ ││ ││ ハル ││ ││ │└────────────────────────┘ 「ハル…」 短い文面。でも、ぼくの気持ちをふっくらさせるのには充分だった。ハルからのメモが嬉しかったのは勿論だけど、何よりぼくが嬉しかったのは、ハルがぼくの名前をちゃんと書いてくれていた事だった。ハルは、ぼくの名前が嫌いだった訳じゃない、ぼくを嫌いになった訳じゃないんだ。 自分でも単純だなって思う。だってこのメモ一つで、ぼくの気持ちは、空気をいっぱいに送り込まれた風船みたいに、ふわふわ軽くなっちゃうんだから。 ぼくも、たくさん話たいことがある。ぼくの所へ来た変わったお客のことや、ルースさんの蝋燭のこととか。でも、ゆっくり話が出来るのは、ちょっと先になっちゃいそうだ。まずは急いでこの仕事を終わらせないと。 メモを丁寧にたたんでポケットに入れる。そして、ドアの前に置かれた紅木の実の枝を持ち上げて、「あ」と思った。「この枝運ぶの、ハルが手伝ってくれたんだね」 チビには重すぎる枝でもハルなら軽々だ。きっと偶然森の中でチビに会って、代りに運んでくれたんだろう。「ハルに、お礼を言っておかなくちゃ」 そう呟くぼくをじっと見て、チビは何も答えなかった。 それからがまた忙しかった。必要な作業の下準備に、器財の調整、材料の調合。どうにかいくつかの抽出器を動かせた頃には、もう夕飯の時間もとっくに過ぎていた。「わぁ、どうりでお腹が空いたと思った」 とりあえず何か食べなくちゃ。きっとチビもお腹を空かせてる。 ぼくは、材料集めのついでに採って来たキノコと野草、それに冷蔵庫から持って来たハムで簡単なサラダを作った。パンはルースさんから貰ったのがまだあるけど、ハムも残り少ないし、近いうちに街へ買い物に行った方が良さそうだ。「チビ、ごはんだよ!」 居間の窓を少し開けて、ぼくはチビを呼んだ。でも、すぐに飛び込んで来ると思ったのに、一向に入って来る様子がない。ドアを開けて見てみると、チビは彫刻の姿で、ポストの上に留まったままだ。「お腹、空いてないの?」 それでもチビは黙ったまま。結局その晩、チビがアトリエの中に入って来る事はなかった。 翌朝、テーブルの上に置いておいたパンが少しも減っていないのを見て、さすがに心配になった。「チビ、どこか具合が悪いの?それとも、他のものが食べたいの?」 何を聞いても、チビは答えてくれない。ポストの前で、ぼくは途方に暮れていた。 もしかしたら、本当に病気になってしまっていて、小鳥の姿になれないでいるんだとしたら、一体どうすればいいんだろう。使い魔を診てくれるお医者さんなんているのかしら。でも、お医者さんがいたとしても、ぼくは今アトリエを離れる訳にはいかない。だけど、このまま放っておいて、チビの具合がもっと悪くなったら…「どうしたらいいんだろう」 本当に困った。 色々考えた末、明日もチビがこのままなら、ルースさんの所に連れていってみようとぼくは決めた。「チビ…」 そっと撫でた小さな頭は、錆でざらついていて、ぼくの指先を赤茶色に染めた。 次の日も、チビは彫刻のままだった。いよいよぼくは不安になって、何度もチビの名を呼んだり、手で包んで体を暖めたりしたけれど、錆びた彫刻は小鳥の姿になる事はなかった。 ああ、やっぱりルースさんの所へ一刻も早く連れて行かなくちゃ…!作動中の器財を離れるのは心配だけど、そんな事言っていられない。チビの病気の方がもっと心配だ。 けれど、いざ連れて行こうと思ったチビは、ポストの上に貼り付いたまま離れない。無理に剥がそうとすると、細い足が折れてしまいそうだ。病気で姿を変えられないのなら、足だって動かせないのかもしれない。ぼくは、ポストの方が抜けないか、両手に力を込めて柄を引っ張ってみた。「駄目だ、抜けないよ」 これじゃ、ルースさんの所へ連れて行く事も出来ない。「どうしよう…」 もうぼくは半泣きだった。「レン?」 ふいに呼ばれたその声に、弾かれたように顔を上げた。ポストの前で途方に暮れたぼくを見つめていたのは、あの瑠璃色の瞳。「ハル…」 そう言えば、メモに「また来る」って書いてあったっけ。ハルは、ぼくの様子がちょっとおかしい事に気付いたようだった。「一体、どうしたの?」「チビが、チビが…」 そこまで言って、張り詰めていた気持ちがぱちんと弾けたのか、ぼくはとうとう泣き出してしまった。「チビが、病気になっちゃったんだ」「病気?」「一昨日から、ずっと、元の姿、になれなくて…返事も、し、ないんだっ…。だか、ら、ルー…スさんの所へ、連れて、行こうとし…、したんだけど、ポストから、チビ、離れないんだ…」 しゃくりあげながら話すものだから、上手く説明が出来ない。しゃがみ込んで泣きじゃくるぼくの頭を、ハルが優しく撫でてくれた。「レン、チビは病気なんかじゃないと思うよ」「だって、何度呼んでも、チビ…っ、」「チビは、ちょっと拗ねていただけなんだって。…ほら」 え、と涙でぐちゃぐちゃの顔を上げた。その目の前、ハルの指先には、鮮やかな赤い小鳥が停まっていた。
2005年10月17日
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それからはバタバタと、本当に慌ただしかった。まずぼくは二階の仕事部屋で、何冊もの本を机の上に積み上げて、今回の依頼の内容に合うようなレシピが書いて無いか、探す事にした。 この本たちは、歴代のこの森の番人が、研究の成果として書き残していたものだ。いつかはぼくも、自分の研究した雨のレシピを、ここに加えていけたらいいのだけれど。「ええと…植物が元気になるような……」 パラパラとページを捲る。本はどれも使い込まれていて古く、ともすればページがバラバラになってしまいそうなものもある。中に一冊、特に使い込まれた本があった。赤い地に古風な金色の模様が彫り込まれたもので、それはもう、古いというよりボロボロに近い。 手に取ってみると、その本には、驚く程役立つ事柄がぎっしりと詰まっていた。きちんとした綺麗な字で書かれたそれはとても読みやすく、丁寧に図解までついている。 その中から、ぼくは「銀声花の為の雨」という、依頼の雨に近そうなレシピを見つけた。銀声花というのは、風の森に多く分布する花らしく、南風が吹くと、綺麗な声で歌う花らしい。その花の為の雨は、風を好む他の草花たちにも有効らしい事が書いてあった。「よし、これにしよう」 ぼくは、必要な材料をメモに書き出した。本当は、もっとじっくり研究をしてから作りたいのだけれど、生憎今回は時間が無い。 仕事と聞いて、ポストの上からすぐに飛んで来たチビは、ぼくが調べものをしている間、まだかまだかと言った風に、机の上を行ったり来たり。とても張り切っているのは分かったけれど、チビは小さな小鳥だから、仕事と言っても、きっと出来る事は限られてる。だからこの時、ぼくはチビにあまり多くの期待はしていなかった。「おいで、チビ」 チビはぼくの頭の上に乗ると、そこでもソワソワと跳ね回っている。ぼくはそんなチビを乗せたまま、材料を書き出した紙を持って、地下室へ向かった。地下室と言ってもその部屋は狭く、入り口の扉以外は全部棚になっていて、そこに雨の材料となる色々なものが所狭しと保管されている。 ランプに灯を入れて、ぼくはそこに並べられた瓶やガラス箱のラベルを、一つ一つ手元のメモと照らし合わせた。暫くすると、部屋の真ん中の小さなテーブルには、いくつかの瓶や箱が並んだ。「一応はこれで全部なんだけど…やっぱりちょっと足りないなぁ」 何種類か、必要な分量に足りないものがある。「ソソギの実と…シラネの根っこ…それに、紅木の実かぁ…」 ソソギの実とシラネの根っこは割と簡単に手に入る。けれど、紅木の実はとても高い木のてっぺんになる実で、そう簡単には採れやしない。しかも悪い事に、この実が一番数が足りなかった。「チビ?」 ぼくは、頭の上のチビに声をかけた。チビは、ぼくの言いたい事が分かったようで、紅木の実の瓶の蓋に飛び下りると、まかせろとばかりに胸を張って元気良く鳴いた。「じゃあ、紅木の実はチビにお願いするね。この実と同じやつだよ」 ガラスの瓶の底に、ほんの少し残っていた、赤い小さな実を、ぼくは指差した。「チチッ!」 返事をするが早いか、そのままチビは扉の隙間から飛び出して行った。「ホントに大丈夫かなぁ…」 言葉が通じないので、チビが本当にぼくの言ってる事を分かっているのか、ちょっと不安だ。でも、今はチビを信頼するしかない。ぼくも残りの材料を、急いで採りに行かなくちゃ。 地下室から、スコップやハサミ、それにいくつかの空き瓶を取り出すと、それをぼくは大きな布のカバンに詰めた。 居間に戻ると、やっぱりもうチビの姿は無かった。ぼくもさっき取って来たレインコートを羽織ると、雨降る森の中、材料探しへと出かけて行った。 サワサワと葉を叩く雨の音の中、ぼくはあちこちの茂みに顔を突っ込んでいた。「あった」 ソソギの実は、わっさりと茂った葉の根元に成る茶色の実だ。土の色と良く似ているので分かりにくいけど、一ケ所見つけてしまえば、まとまって成っているので、採るのは簡単だ。 ぼくはその実を瓶いっぱいに詰め込むと、大切に蓋をした。「あとは…」 シラネの根っこは、ちょっと探すのにコツがいる。葉っぱがとても小さいので、そのまま歩いているだけでは見つける事が出来ないんだ。ぼくは草むらをガサガサと手で分けながら、銀色の小さな葉を探した。顔も手も、泥だらけになりながら漸く見つけた小さな葉は、まるで作り物の銀細工のように、硬質の光を放っていた。 その葉っぱの根元に慎重にスコップを差し込む。乱暴にすると、途中で根っこが切れてしまうので、そっとそっと気をつけて掘り起こさなくちゃならない。 暫くそんな風にして、あちこちの草むらの中にしゃがみ込んでは、ぼくは残りの瓶も、シラネの根っこで一杯にした。 思ったより、時間がかかってしまったけど、チビの方はどうだったろう。ちゃんとお使いが出来たかな。チビが運べる実の量は、ほんの少しづつだろうから、もしかしたら、まだいくらも採れてないかもしれないな。 そんな風に考えながら、アトリエに戻ったぼくは、その光景に思わず目を丸くした。 アトリエの入り口の扉の所には、紅木の実の枝がちゃんと置かれていた。でも、その枝と言ったら、ぼくが力を込めてやっと折れるような太さのもので、小さなチビが折って来れるようなものじゃない。「チビ…これ、どうしたの。誰かに手伝って貰ったの」 枝には、真っ赤な実がこれ以上は無いくらいたわわに実っている。そして、その枝の上では、ぼくの帰りを待ちわびたチビが得意げにさえずっていたけれど、ぼくの言葉にそれまで上機嫌だったチビの声は、不服そうなそれに変わった。 だって、どう考えても無理だ。持ち上げてみたその枝はずしりと重たくて、たとえ折れていた枝を運んだとしたって、こんな重いもの、チビひとりで運んで来れるはずがない。 その時、ドアに挟まっていた白い紙に、ぼくは気がついた。 留守の間に、誰かがここへ来たようだった。そのメモを開くと、そこには見覚えのある字。そのメモに記された名前に、ぼくの心臓はぴょくんと飛び跳ねた。
2005年10月13日
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友達から借りました。一時期は自分でも(同人誌含め)結構買ってたんですが。ユギさんの本。ここんとこ買わなくなったのは、別に嫌いになったとかいう訳ではなくて、単純に漫画本スペースの問題。ウチ、50×50×40くらいの箱2つ分しか無かとですよ、漫画本スペース…久々に読んだユギさんの本は、相変わらず軽妙で楽しく、そしてちょっぴりしんみりする、良い感触の本でした。この本に収録されているのはどれも短編で、ぶっちゃけ特筆すべきストーリーなどは無いんですが。幼馴染みが久々に再会して、そーゆー仲になるまでの話とか、仕事先の上司とそーゆー仲になっちゃうとか、そんな感じです。ストーリー的には、(BLでは)よくあるシチュエーションのものばかりなんですが、この方の凄い所は、そのごくありふれた(男同士が簡単にデキてしまうのが、ありふれているかどうかはこの際置いておいて)日常を、とてもリアルに描ける所だと思うのです。読んでいるこちらを、「ああ、分る分る」と、いとも簡単に納得させるだけの筆力。それに加えて、笑いのツボの押さえ所が憎い。とぼけていて、独特のテンポで笑わせてくれます。そして、その笑いが効果的に効いて来るような、重めの心理描写を持って来るタイミングも絶妙。この緩急のリズムは、他の作家さんでは滅多にお目にかかれないのではと思ってしまいます。ユギさん独特のテンポ。読後感はほのぼの、ほんのちょっぴりのほろ苦さも根底に漂って、短編ながら、どれも印象深い話です。相変わらず、リーマン、オヤジ指数が高いので、そちら方面好きな方には貴重かと。
2005年10月11日
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この本は、個人製作の短編アニメーション原作の漫画版。漫画を大好きな漫画家さんが描かれているのを、友達から教えて貰ったので、早速購入してみました。レビューは、元のアニメーションの方は見ていないので、この漫画を読んだのみのものになってしまうのですが。2046年の地球。ごくごく普通の恋人(未満?)同士であったミカコとノボルの、どこにでもあるような平凡な2人の日常は、ミカコが異星人探査プロジェクトのチームに選抜された事により、ふっつりと終わりを告げます。地球と宇宙に離れての、唯一の連絡手段はメール。でも、そのメールも、ミカコが地球から離れていく毎に、お互いの元に届く時間がどんどん長くなってしまいます。宇宙の時間に対し地球の時間の進みは早く、中々届かないメールを待つ事に疲れたノボルは「今ある現実」を選び、遠く離れたミカコから目を反らしてしまいます。ミカコのいない寂しさを心の隅へと追いやり、新しい日常を当たり前のように過ごしていたノボルに、ある日1年ぶりにミカコからメールが届きます。そのメールには……とまぁ、あらすじはこんな感じです。あらすじと言っても、殆ど語ってしまってますが。この「ほしのこえ」は、繊細な描画が苦手でない方ならば、男の人でも充分読めるのではないかと。話自体はとても情緒的で、静かな話です。(短編だからか)余計な所は一切語らず、主人公2人の心理描写にのみスポットを当てています。このへんの手法は、「最終兵器彼女」を彷佛とさせます。国家レベルのプロジェクトに、何故中学生が抜擢?とか、何故宇宙なのに学校の制服(しかも人型探査機に乗っている時も制服)??とか、伝達手段がメールだけって、それちょっと無理が無い??とか、ノボル君以前に、ミカコちゃんはお父さんお母さんはどうしたのさ??とかとか、ツッコミたい所はあるんですが、それを説明するような話ではないのでしょうね。あくまで、離れてしまった2人の心情のみ、しんしんと静かに描いています。たしかに、切なさと静かな暖かさを持つ良い話なのですが、あまりに静かすぎて、私は「綺麗すぎるかな」と思ってしまったのが正直な所。もう一つ、がつっと引き付けてくれるようなエピソードが入ってて欲しかった気が。そんな奴は、ガイナックスの「トップをねらえ!」でも見てろという所でしょうか。いや、アレはアレで当時衝撃的だったんですが。同じウラシマ効果の話では、こちらもかなり切ないですし。漫画は流石に絵がキレイです。この方は、BL専門なのかと思っていたのですが、ちょっと前に出た「ロジオネ」と言い、意外(失礼)にも、毛色の違う引き出しを、ちゃんとお持ちな方なんだなと思いました。BL得意とする方には、魅力的な女の子が書けなかったり、男女の恋愛になると、妙な違和感が感じられたりする方も結構いらっしゃる印象があったので。なにげないミカコの仕種、まだ少し線の幼い身体のライン、複雑な思いを抱えるノボルの横顔、視線、そんなものが、画面の向こうから「ひたり」とこちらに伝わって来る感触は心地いいです。こういう画面を作れる方でないと、情緒的な話を漫画にするのは難しいでしょうね。ベタ褒めですが、個人的に好きな作家さんなので、やはり点は甘めになってしまいます。(^-^;)アニメーションの方は、機会があれば見てみたいです。正直な所、キャラ絵は好みとは別の所に位置しているのですが、背景…特に空の青が綺麗だったので。空の青って、空をちゃんと知ってないと、中々出せない色なんですよね…(と知った風な口をきいてみる)
2005年10月07日
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「さぁ、どうぞ」 扉を開けると、ウサギはまたぺコリと会釈をして、ほてほてとした足取りで、アトリエの中に入って来た。「チビ、もういいよ、有難う」 よほど初仕事を遂行出来たのが嬉しかったのか、チビはまだ歌いながらポストの上を跳ね回っていた。ぼくにそう言われて一応歌うのは止めたけど、まだ物足りなさげな嘴をクチュクチュと動かしている。多分気が済んだら、また彫刻に戻るだろうけど、一応アトリエの窓は少し開けておいて、ぼくは目の前のお客に向き直った。「ええと…」 何から聞いたらいいんだろう。多分ここに来たという事は、仕事の依頼だとは思うんだけど。 するとウサギは、斜めにかけたカバンから、一通の白い封筒を取り出すと、ぼくにそれを差し出した。「ぼくに?」 ウサギはこくこく、と頷く。手紙を持って来たという事は、このウサギは誰かの使い魔なんだろうけど、縫ぐるみも使い魔になれるなんて、ぼくは初めて知った。 受け取った封筒は、可愛らしく花の透かし模様の入ったもので、しっとりと雨で湿っていた。「もしかして君も結構濡れちゃったんじゃない?」 そう言えば、ウサギがさしていたのは雨傘じゃなく日傘で、しかも結構小さかった。ためしに、そっと脇の下に手を差し込んで抱き上げたら、やっぱりこっちも、しっとりとしてちょっと重い。「ごめんね、今乾燥機をかけるから」 とりあえず、ぼくはウサギを椅子に座らせて、寝室に置いてある乾燥機を持って来た。 この乾燥機は結構古い機械らしく、動かすのにはちょっとコツがいるけど、中々良く働いてくれてる。上手く動いたのを確認すると、それをウサギの座った椅子の隣に置いて、改めてぼくは封筒を開けた。┌────────────────────┐│ ││ ││ ││ ││ 花が元気になる雨雲×1 ││ ││ ││ ││ ││ ││ ││ 灯岬の風の森 ││ ││ ││ │└────────────────────┘ 封筒とお揃いの可愛い便せんには、そっけない一行だけ。これだけじゃ、どんな雨を作っていいのか分らない。 それに…「灯岬って何処だろう」 この付近にも風の森はあるけど、でもそこは岬じゃないし、岬はあるけど、灯岬なんて名前じゃなかった気がする。念のために、その岬の事なのか聞いてみたけど、ウサギはやっぱり首を振った。「困ったなぁ…」 ウサギは、話は出来ないみたいだから、詳しい場所を聞くのも無理だし…「あ。ちょっと待って」 いい事を思い付いた。 まだ乾いていない所を悪いけど、ぼくはウサギを抱き上げて、二階の仕事部屋へ。この部屋には、壁一面に大きな地図が貼ってあるんだ。これなら岬の場所も分るかもしれない。 ウサギは、壁際に置いた机の上で、暫く地図を見上げていたけど、やがてペン立てから1本のペンを取り出すと、カリコリと何か書きはじめた。「ええっ、そこって…」 場所は判明した。 けれど、ぼくはますます困ってしまった。 ウサギが書いた岬の位置は、地図のもっと下…海岸線をぐるりと下り、(もうそこは地図じゃなくて壁だった)海を挟んだ湾の対岸だった。「困ったなぁ…」 ぼくは一階のテーブルの所で、手紙と数枚のメモを前に、この日何度めかの「困った」を呟いた。 ウサギが字を書ける事が分かったので、もう少し詳しい注文内容は聞く事が出来たけど、聞けば聞くほど、「困った」は増えていった。 1.花の名前は風鈴草。 2.ここのところずっと雨が降らなくて、元気が無い 3.急いで雨を作って欲しい(3日以内) 風鈴草…この花がどんな花なのか、ぼくは知らない。少なくともこの森には無い種類だ。だから、どんな薬効のある雨を作ればいいのか、ちょっと良く分らない。 そして、それを3日以内に作るなんて… 正確には、3日あれば雲の素は作れるけど、それを雲にして上げるのはぼくでないと出来ないから、ぼくが直接灯岬へ行かなくちゃならない。 けれど、対岸の岬までは、歩くと2日はかかる。どう考えても3日以内では無理だった。 元々湾の向こうは、ぼくの担当している境界線の向こうだ。ぼくらが居るような、陽や風や雨、それぞれの森は、各地域に一つづつあって、普段その地域の事は、その地域の森が担当だ。 それを境界線を越えてぼくの所へ来るなんて、多分滅多にある事じゃないと思う。「ここのところずっと雨が降らない」って言ってたから、向こうの雨の森では、何かあったんだろうか… とにかく、その遠い距離をここまで来てくれたウサギの事を思うと、仕事を断るのも出来そうになかった。(せめて、ぼくにも自転車があったらなぁ…) ふう、と溜め息をついて顔を上げると、ウサギのルビー色の目とかちあった。本物のウサギのように、バッテンになった鼻のあたりをヒクヒクさせて、ぼくの返事を待っている。お守りなのか、首に下げたシャボン玉のような小さなガラスの玉がキラキラと光っていた。「あの、雲はなんとか出来ると思うんだけど、どうしても3日っていうのは無理なんだ。5日じゃ遅い?」 ウサギは、困ったように首をかしげた。「わからない」と言っているようだった。「とりあえず、出来るだけ急いで作ってみるから、君は帰ってこの手紙の人に、その事を伝えてくれる?」 これにはコクリと頷いた。「じゃあ、そうと決まったら、早く支度にかからなくちゃ!」 忙しくなりそうだけど、確実に朝よりぼくは元気になっていた。だって、ぐずぐずなんてしていられない。 ウサギはドアの前で、来た時と同じように、ぺコリと頭を下げた。「折角乾いたのに、また濡れちゃうね」 出来れば傘を貸してあげたいけど、ここにある傘はみんな大きくて、ウサギに持てそうなものは無かった。 ウサギはふるふると首を振ると、持って来た日傘を開いた。でも、日傘じゃこの森を出る頃にはまたびしょ濡れになってしまう。 けれどその心配は無かった。 ウサギは、帰る時、ちょっとした魔法を見せてくれた。片手で日傘をしっかり持って、もう一方のふっくらした指先で、摘んだ胸のお守りをパリン、と割った。「…うわっ!」 その直後、ものすごいつむじ風が巻き起こり、ウサギの姿ははるか上空へと飛ばされていった。曇った空の下、その姿は小さな綿毛の種みたいに、フワフワと海の方角へと運ばれて行く。「飛んでっちゃった…」 あの風は、無事に灯岬までウサギを運ぶのだろうか。 ぼくは、小さく小さくなってゆく白い点が木々に隠れて見えなくなるまで見送ると、チビに声をかけた。「チビ、仕事だよ!」
2005年10月04日
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