2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
全6件 (6件中 1-6件目)
1
![]()
献花の代りに一枚買ってみました。と言っても、彼女が亡くなったのは、昨年の11月。何故今頃?感は無くもないのですが、もう生では聞けない彼女の歌声を一枚、ひっそり傍らに置いておきたくなった…という所でしょうか。彼女のCDは、アイドル時代のベストを一枚持っていましたが、それもほとんど聞く事は無く、棚の隅に並んでいただけでした。彼女の活動に関してもさほど興味は無かったし、私の持っていたイメージと言えば、実力はあるものの、(主にアイドル時代)事務所のコロコロ変る販売戦略に振り回された気の毒な人…といった程度のものでした。(あくまで私の勝手な主観なので、実際はどうだったのか分りません)その後、ミュージカル女優に転向し、クラシックを歌うようになり…というのは、なんとなく知ってはいたのですが、積極的に彼女の舞台を見る事も無かったし、歌を聞こうという気も無かったのです。それでも、彼女が亡くなった事は、自分で考えていたよりもショックでした。白血病で闘病していた事も知っていました。でも、まさか居なくなるとは思っていなかった。暫くすれば、「治りましたv」という記者会見でも見れるだろうと、そんな風に漠然と考えていました。その後、彼女の闘病生活を纏めた番組を見る機会がありました。初めて聞く、自分の事や家族の事、周りの人々の事、そして大好きな歌の事を語る彼女の生の声。それは私が勝手に想像していたより、ずっと夢みがちな少女のような語り口。正直な所、私は甘ったるい喋り方をする人は苦手なのですが、その言葉の中で、彼女が本当に歌が好きであった事、自分の事よりも、まず周りの人の事を考える人であった事。それは充分以上に伝わりました。いつ、どんな場所にあっても、歌と共にある。自分の全てを打ち込めるだけのものを見つける事が出来た彼女は、そういう意味では幸せであったのかもしれないと、私は思いました。このアルバムは、闘病中に発表されたもののようです。6曲のミニアルバムに、2曲のDVDのオマケがついています。曲はどれも透明で優しい歌声で歌い上げられていて、つくづく惜しい才能を亡くした、と思います。美しい歌声は、素晴らしいけれど、まだ若々しく発展途中。きっとまだまだもっと伸びるはずだった。惜しい。本当に惜しい。40代の彼女の声を、50代、60代の彼女の歌を聞きたかった。人が亡くなった時、「こんなに若いのに何故」とか、「こんないい人が何故」いう嘆きの言葉を良く聞きます。それに対し、ちょっと宗教めいた話になっちゃいますが『神様は、善き人を手元に置きたいと願うから』という話を聞いた事があります。それで言うなら、神様は美奈子さんの歌声を欲して天に召された…という事なのでしょうか。このアルバムに収録されているタイスの瞑想曲(作詞:本田美奈子)で、「生きている喜びを忘れないで」と歌った彼女が今この地に居ない。運命とは、なんて皮肉なものだろうと思います。
2006年02月27日
コメント(0)
先日、ポンポコポンの爺(⌒o⌒)婆 ちゃんさんの所で、50000ヒット踏み踏み致しました。そしたらキリ番プレゼントを…!!頂いてしまいました…!!有難うございます…!!(>_
2006年02月22日
コメント(2)

折角ゲームカテゴリを増やしたので、もう一点レビュー。(今更ですが)ワンダと巨像です。新しいで言えばバイオ4やMHの方がプレイは新しいんですが、まぁ、思い入れのある方優先って事で。この会社の前作「ICO」が、滅茶苦茶お気に入りだったので、世間の評判がどうであろうと、購入は決めていたワンダ。結果、これもかなりのお気に入りソフトになりました。恋人(?)を生き返らせる為に、禁忌の地へと足を踏み入れ、そこで天の声を聞くワンダ。「生き返らせたくば、この地に住む16体全ての巨像を倒せ--」天の声の要求は非常に明解です。そして非常に困難でもあります。たった1人(馬はいますが)で、途方も無い大きさの巨像を、それも16体も倒さねばならないんですから。その戦いの様子は、↓で少し見る事が出来ますので、私の下手な解説よりも、こちらを見て頂いた方が宜しいかと。http://www.playstation.jp/scej/title/wander/(このサイトでは、「巨像」と「戦闘」のリンク先が逆になっているようです)巨像を倒すには、その巨体に取り付いて、弱点を剣で刺す。戦い方は非常にシンプルなんですが、巨像の弱点に辿り着くまでが大変。まず、とりつく為の足掛かりになるような箇所、掴まれそうな所。毛があれば、毛を握ってよじ登る事が出来るので、そんな場所を探します。その間にも巨像は移動しているし、下手するとこちらを攻撃して来ます。じっとしててはくれません。よじ登る為に、その巨像の足を止める事も必要です。そしてよじ登る事に成功したら、今度は剣が指し示す弱点まで、巨像の身体の上を移動しなくてななりません。勿論、ワンダを振払おうと巨像は身体を揺すったり、足を踏みならして衝撃を与えます。ワンダの握力にも限界はあるので、いつまでも同じ所にしがみついていては、力尽きて振払われてしまいます。巨像の動きを上手くかわしながら、握力回復させつつ、弱点を目指します。基本的な戦い方はそんな感じなのですが、巨像によって、その攻略方は様々。地形や、巨像の動きを上手く利用しなければならなかったり、ワンダの愛馬、アグロの力を借りねばならない事も。巨像を倒すまでが、1つの大きなパズルのようなものです。散々考えても、やってみると気が抜けるほどに簡単に攻略出来るものや、逆にいくら挑戦しても、攻略ルートが中々見つからないものもあります。アクション自体はそれほど難しくない…とは思うのですが、その倒し方が分らず、リトライの末に諦めた…といった人も少なくはないようです。実際私も、1体の巨人の倒し方が分らず、3日粘った事がありました。(笑結局、何やらマグレのような形で倒す事が出来たのですが、全てクリアした後に攻略画像を見たら、虚脱するほどに簡単でした…(私のあの3日は一体…どおりでオカシイと思ったんだ…(T-T))ちなみにそれは、15体めの巨像でしたが。そんなこんなも含めて、16体倒すのも中々に骨が折れるのですが、1体倒すごとに、ボロボロになってゆくワンダが切ないです。それでも何のねぎらいの言葉もない天の声。淡々と「次の巨像は…」と指示を出すその声に、「ちょっとは褒めてくれてもよかろうよ…!」と逆ギレ寸前の私のワンダ。逆ギレで言えば、ワンダの愛馬、アグロも中々に一筋縄ではいきません。広いフィールドは、アグロの俊足無しでは巨像に辿り着くのも容易ではないというのに、ちっとも言う事聞いてくれません。この馬は。そう言えば、何処かで読んだ記事ですが、このゲームについて書かれていたもので、「初めて乗馬した時、本当の馬も、アグロと同じように言う事をきいてくれない」というのがありました。それで言えば、アグロはある意味リアル馬に近いんでしょうか。そんなリアルは正直勘弁だと思ったのですが。足元に石ころがあると、それを跨いではくれないアグロ。口笛で呼んでも、森の入り口でじっとこちらを眺めているアグロ。巨像を追って走っていたら、後ろから駆け寄って来て私ワンダをどつき飛ばしたアグロ。弓で巨像を狙っていたら、その巨像の前に立ちはだかって、こっち見て鼻を鳴らすアグロ。お前、一体何がしたいのか…ッ!{{( ̄皿 ̄;)0}}しまいに、私ワンダはアグロをほったらかして、自分の足でフィールド駆け回りはじめました。勿論、後ろから駆けて来たアグロにどつき飛ばされましたが。そんなアグロの手綱も、上手くさばけるようになった頃は、かなり後半戦でした。自他共に認める方向音痴の私も、なんとかうすらぼんやりとマップを把握出来かけたのもこの頃です。フィールドは広く、光と影の織り成す世界は、それはそれは綺麗です。緑豊かに生い茂る森、巨大な瀑布、光さえも届かない深い深い渓谷。(アグロが言う事聞いてくれるなら)小一時間走っていても退屈しなさそうです。このゲーム、フィールドの光の計算を、全てリアルタイムで行っているので、フレームレートが若干落ち気味です。普通、企画やプロデューサーがプログラマー寄りだと、光の計算などまっ先にカットされそうな部分です。それでもそこを切り捨てないコダワリの深さ。個人的には好ましい姿勢だと思いました。発売前にはやはり、若干の動きの悪さなども指摘されていましたが、実際プレイして、私はさほど気にはなりませんでした。ICOもそうなのですが、この会社、製作のこだわりが非常にグラフィック寄りですね。話では、プロデューサーさんがグラフィック畑の人だからという一説もあります。それが本当なら、さもありなん、といった所ですが。そういう話は別としても、今回のワンダにとって、光と影は、重要な役割りを担っています。これからプレイする人は、光に剣をかざして活路を見い出して下さい。そして、ネタバレにならない程度にEDについて少し。EDは、なんだかんだで20分ほどの長篇です。ED前にはトイレに行っておきましょう。CMで散々「切ない」というキーワードを連呼されていましたが、たしかにラストに至るまで、全編このゲームは切ないです。(アグロに口笛無視されるのも…!)EDでのワンダの瞳は、今でも忘れられません。お気に入り指数は ★★★★☆(1点少ないのは、ICOと比べて、です。心情的には5点つけたいトコロ)
2006年02月21日
コメント(0)

クリアしました。とりあえずノーマルモードで。前作1と比べて、格段にユーザーライクになってますね。やたらとチュートリアルは充実してるし、ヒントもお節介なほどに親切。主人公も結構応戦出来るようになってます。前作、世界観は好きでも、難易度で挫折した人には、2は楽しく遊べるかも。一部でとても強い支持があった反面、その謎解きの難解(というより、自力でアイテム見つけるのが激困難)さ、普通にやっててもシナリオ袋小路、主人公が唯一使える能力、視界ジャック(敵の視界を盗み見る事が出来る能力。それで見えない所の情報を知ったり、敵の動きを把握する)を駆使しても死にまくるというキビシイ難易度で、評価はまっ二つだった前作。「クソゲー!」とか散々に言われてましたが、そんなユーザーの不満の声を誠実に反映させた結果の今作、格段に遊び易くなりました。まぁ、それだけ前作のユーザー突き放しっぷりが凄かったって事でもあるんですが。私も前作、コントローラーをメキメキ言わせながら、「ちょ…っ、プロデューサー出て来いやぁ!(怒)」とコメカミに青筋立てながらやったクチです。このゲーム、複数いる主人公の各シナリオ同士が、同じ時間軸で密接に絡み合っています。そのそれぞれのシナリオ内で、後にその場所を訪れるキャラの為の必要行動を完遂出来ない(例えば、1時間後に同じ場所を訪れるキャラの為に、脱出路を確保しておく、とか)と、新しいシナリオへのルートが解除されず、延々ロックされたシナリオ内をぐるぐるぐるぐる彷徨う羽目になります。それは前作も今作も同じなのですが、そのヒントが皆無に近かった前作に比べ、今作は「小目標」として、「何処へ行って何をすべきか」が呈示されています。それだけでも随分楽になってます。また、前作は一部の主人公を除いて、持てる武器が火かき棒とか、情けないくらいに頼り無かった(なのに敵は狙撃銃を当たり前のように装備)のが、今回は主人公側も結構銃を持てます。敵の武器を奪えるようになってます。これも、ただ隠れ、逃げる事のみだった前作より、かなり楽になってます。基本的に、死んで覚えろのトライ&エラーなゲームなんですが、それも前作は、死んだらシナリオの頭から、しかもアーカイブ(完全クリアに必要なアイテム)も取り直しだったものが、今回は途中途中に設けられたチェックポイントからリトライ出来るようになっており、アーカイブも一旦取得すれば、そのまま保持された状態で再開出来ます。そんな感じで、全体的にかなり遊び易くなっている今作。前作をプレイした人には物足りない感もあるかもしれませんが、ヒントオフにも出来るし、難易度選択もあるので、前作並みの難易度を求める方もちゃんと遊べる内容になっているかと。個人的には、従来の視界ジャックに感応能力(敵を操る事が出来る)を持つキャラが加わった事は、ゲームの幅が広がって面白かったです。難易度はノーマルだと、そこそこ気楽にプレイ出来るレベルだと思います。惜しむらくは、主人公側が強化された事により、前作の「死にものぐるいで隠れんぼ」的な抑圧された緊張感が薄れた事。これは、プレイ層の拡大を取るか、あくまでゲームの個性を重視するかで別れる所なので難しいですね。遊び易さに加え、ミニゲームや隠しシナリオ、やたら無駄に充実しているアーカイブなど、制作者サイドのサービスっぷりも格段に向上していて、ゲームとして良く出来ているのは今作なのでしょうが、絶望的に陰惨で陰鬱な世界からの生還、というギリギリの雰囲気を際立たせているのは、前作かな、という気がします。あの胃が痛くなるような緊張感はやはり強烈です。興味を持たれた方は、まず2をプレイしてみる事をオススメします。2では前作の話題などもチラホラ出て来ますが、プレイする上で、前作を知っていなければならない、という事もないので。(でも、前作の生き残りが誰かとか、前作のキャラクターのその後の話が出てきたりはするので、知りたくない方は1からで。)とりあえず、日本独特の、あの湿り気の多い恐怖感。昭和という時代の持つ独特の暗さに浸りたい方には買いかと。お気に入り指数前作今作共に★★★★★前作↓
2006年02月19日
コメント(0)
「ぼく?」 勿論、ぼくがハルにミルクをいれたのは、今日が初めてだ。最初はハルの冗談かと思ったけれど、どうもそんな感じじゃない。ハルは、ぼくの問いかけに気付いているのかいないのか、手の中のカップを両手で包んで、独り言のように、言った。「うん、同じ。砂糖2つのミルクの味も、この、僕のカップも」 薄い青い色のカップ。それは、棚にいくつかあったうちの一つだ。どれにしようなんて、特別考える事もなく手に取ったものだけれど。でもそれを、「僕のカップ」ってハルは言った。「あの…ぼく、よく、わからないんだけど…」 手の中のカップに落とされていた、長い睫が2、3度しばたいた。そして、少しの沈黙の後。「…君が来る前にね、ここにいた人、その人もね、レンって名前だったんだ」 ぽつぽつと降る雨音のように、静かにハルが話し出す。「レンは……あぁ、僕よりずっとずっと年上だったから、普段は『お爺さん』って呼んでたけど…色んな事を良く知っていて、とても優しくて、それは素敵な人だったんだ。僕達はうんと歳は違っていたけれど、とてもいい友達だったんだよ。僕は良くここへ遊びに来ては、こうしてミルクを御馳走になってた。この青いカップでね」 その話に、ぼくはちょっとびっくりして…同時に背中がヒヤリとするような、嫌な感じがした。 この森にいた人が、ぼくと同じ名前だったなんて。「陽の森に来たばかりの頃は、僕は本当に何も知らなくて、お爺さんは、そんな僕をあちこちへ連れていってくれた。街の市場へも良く一緒に行ったんだ。このカップも、その時にお爺さんが僕のにしようって買ってくれたもの」 ぼくの知らない「レン」との事を話すハルは、とても楽しそうだ。ルースさんや、他の森の人たちの所へ行った話、魚釣りをした話、岬へピクニックに出かけた話。 それはハルが、ぼくと一緒にやろうねって言ってくれたものばかりで、そんな話を聞いているうちに、ぼくの中には何かもやもやしたものが溢れ出してきた。「楽しみだな、またレンと一緒に行けるの」 けれどそう言うハルの瞳に、今のぼくは映っていない。 苦しい。 何だかとても苦しい。それは、どんどん喉の方までせり上がって来る。 このままでは、言いたくもない言葉が口から出てしまいそうだ。(ぼくは「お爺さん」じゃないのに) たとえそれが、以前と同じでも、それはきっとたまたまの偶然で、ぼくが知ってる事じゃない。(君に薄い青のカップにミルクをいれたのも、砂糖を2つと思ったのも、お爺さんなんかじゃなくて、ぼくだ) ハルは、ぼくの最初で一番の友達だ。それを嬉しいと思っていたけれど、ハルは「レン」という名前の向こうに、お爺さんを見てたんだって事を、ぼくは知った。「そろそろぼく、仕事の続きをしなくっちゃ」 ぼくの知らないぼくとの話を、もうこれ以上は聞きたくはなかった。話の途中で急にそう言ったぼくを、ハルが訝しげに見た。その瞳が見返せなくて、ぼくはしゃがみ込んで器材を調整するふりをする。「本当にこれ、急ぎの仕事なんだ」 不自然な言い訳。出来るだけ普通にと答えたつもりの声は、誤魔化しようがないくらい震えてしまった。 ぼくの背中で、ハルは押し黙ったまま。 声をかける訳でもなく、帰るそぶりを見せるでもなく。その沈黙に、ぼくの心臓はどんどん大きな音をたてる。「ごめんね」 ふいに、ハルの静かな声が言った。「ごめんね、レン。君をお爺さんと…前のレンと、比べるつもりなんて、なかったんだ。君が友達になってくれて、本当に嬉しかった。でも、あんまり嬉しかったものだから、僕はお爺さんが居なくなった事すら忘れそうだった。 だから君の名前が同じだって知った時、僕は罪悪感で一杯になった。あんなに仲良かったのに、僕はなんでお爺さんの事をもっと哀しんであげられなかったんだろうって」 ハルの声が近い。多分、ぼくのすぐ後ろに立っている。「でも、何も知らない君は、きっと嫌な思いをしたね。同じ名前だって君の名前には違いはないのに、それを一緒に喜んであげられなかった。今日はそれを謝りに来たのに、僕ときたらお爺さんの話ばかりだ。ほんとに、ごめん」 ハルの声は少し潤んでいて、いつもの元気な声じゃない。 どうしよう。どうすればいいんだろう。ハルの顔が見られない。恐くて後ろを振り向けない。(気にしてないよ、ハル。大丈夫) そう言えたら。(ぼくこそ、ごめんね) そう言って笑えれば、きっとこの喉のつかえも取れるのに。 でも、ぼくは結局振り向けなかった。 暫くして、諦めたように靴音が、ぼくの背中から離れていった。 トントンとハルが階段を降りていく。コリィに声をかけ、ガサガサと壁にかけたレインコートに手を通し…軋んだ蝶番の音。 アトリエの重い扉がバタンと閉まると、ぼくはその場にへたり込んだ。 床に、手の上に、パタパタと雫が落ちる。「泣いたって、もう遅い…ぼくは、本当に馬鹿だ…」 ぼくの中の、醜い怪獣。ぼくの心をばりばりと食べて、真っ黒な霧で一杯にしてしまう怪獣。 ぼくがもっと大人で、強い心を持っていたなら、きっとそんな怪獣は捻り潰してしまえるのに。 むくむくと膨れ上がる霧はどこまでも黒く、ぼくはその中で、ただ蹲って泣いていた。
2006年02月18日
コメント(2)
![]()
松の四景という作品が気になったものの、何やら発売が延びているようなので、同じ作者さんのデビュー作を。第10回ホワイトハート大賞優秀賞受賞作品だそうです。妖(あやかし)退治を請け負う、呪言者の兄、刀使いの弟のお話。全部で7つの短編から成っています。春の話から始まり、夏、秋、冬、そして最後はまた巡り、春に。それぞれの季節は、良く選ばれた言葉と誠実に練られた文章によって、鮮やかというよりは優しい印象の話になっています。妖退治と言っても、主人公達を通して、人間とは違う異界の者たちを、護るような、慈しむような視点で描かれているので、あまり血なまぐさい話はありません。(別の意味では血なまぐさい?部分もありますが)そんな感触は、それほど飄々とはしていないけれど、今市子さんの百鬼夜行抄に通ずる部分があります。近い世界なので、お好きな方は読んでみても宜しいかと。個人的には、嫌いなテーマではなかったし(むしろ好き)、文章も読み易く好みだったので、久し振りに面白く読めたお話だったのですが、気になった点も少し。文章は、綺麗な言葉でリズムも良く、情景描写も情緒的で美しいのですが、全体に淡々としていて、緊迫した場面でも、それほどの緊張感が伝わって来ないです。それが個性と言われれば仕方ないのですが、私には、「危険な冒険はしない、極めて優等生的な印象」でした。上手くは言えないのですが、『出来過ぎの優等生が疎ましく、何処か欠点の一つでもありゃしないかと思って探すものの、見つかるものは、やはり美点ばかり』といった、こう、悪くはないんだけど、悪くはないんだけど…的な部分無きにしもあらず、といった所が。多少、綻びやはっちゃけた部分があった方が、打ち解けられそうなのになあ、と優等生遠巻きにして眺める歯がゆさ。そんなのに似た感じがします。淡々とした作風、それがこの方のイイ味になるのか、それとも、また違う面を見せて貰えるのかは、今後のお楽しみといった所なのでしょうか。あともう一つ、どうでもいいような所ですが、私は食い意地張っているので、作中に度々出て来る和菓子や和食の料理、これがもっと「旨そう…!」と思える描写だったら嬉しかったかな、と思いました。キャラに関しては、兄、比佐と、弟、圭一のお互いを思い遣る気持ちが優しくて、読んでいるこちらも優しい気持ちになれます。周りに配された登場人物たちも、それぞれハッキリした輪郭を持っていて、1人1人のエピソードでも、充分一話作れそう。この本に収まり切らなかった話があるのなら、読んでみたいと思いました。個人的に気に入ったのは、第参話の「夜涼」。掛け軸から消えてしまった烏(からす)の話。可愛い話でした。ところでこの方、挿し絵も自分で描かれてるんですね。挿し絵も、挿し絵だけで見ても充分以上の描写。才多き方ですね。羨ましい。お気に入り指数は ★★★★☆
2006年02月06日
コメント(0)
全6件 (6件中 1-6件目)
1

![]()
