ボクの音盤武者修行

ボクの音盤武者修行

2006年02月22日
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カテゴリ: 音盤比較
エサ=ペッカ・サロネン指揮ロス・フィル(SONY)

 録音場所:ロイス・ホール、カリフォルニア
ジャン=クロード・カサドシュ指揮リール管(AUVDIS)
 録音年月:1982年9月
 録音場所:Palais des Congres,Lille



 交響曲冒頭、鈴が鳴り響き弦楽が第1主題を歌う直前、スコアにはクラリネットとバイオリンに「rit.」の指示があるのに、鈴とそれに絡むフルートにその指示が書かれていない。
 これをバーンスタインは「家の前を馬車が通り過ぎていくのを聴いて、昔の記憶が蘇ったように。鈴も一緒にリタルダンドすると馬車が家の前で止まったことになってしまう」と指揮者 広上淳一
 それを知ってからこの部分は譜面をちゃんと読んでいるかどうかのチェックポイントになった。

 サロネンはバーンスタインの言を知っていたのか、あるいは独自の読みなのか、鈴をきっちりイン・テンポで叩かせている。
 この演奏の素晴らしさはここだけではなく、全体に楽譜の読みが徹底してる。しかもそれが極めて自然。どんな声部も浮き彫りにしながらも、主題に隠れもせず、隠しもしない。この絶妙のバランス。
 録音のせいもあるが、まるでセリフを言っては後ろにさっと下がり、また言うときになったらすっと立ち現れるといった感じ。第3楽章は深みより叙情性が、第4楽章は歌手とのバランスが見事。

 対するカサドシュは慣例に従い(?)鈴も一緒に遅くしている。だからと言って、この演奏をだめと言うつもりはない。この人はオケから一生懸命にマーラーの音を出そうとしているからだ。

 それは小沢がボストン響からウィーンの響きを引き出そうと躍起になっているのに似ている。でも小沢のマーラーでは時に輝くような響きになってしまう。小沢の目指す「鈍い黄金色」ではなくぴかぴかに磨いた金地金に。その辺のジレンマがまたおもしろいと思うけど、今はカサドシュ。

 リール響ももともとラテン系の軽い響きのオケなのだろう。特にソロ管楽器になるとなぜかラヴェルになってしまう。だがカサドシュは全奏のときに重い響きを、特に弦楽にはそうとう厳しい要求を出していると思われる。だから時にドイツ系のオケかと錯覚するくらい重厚な音がする。
 しかもこの指揮者は楽譜の読みが独特で、不思議なバランスを聞かせる。そこにこの人の屈折した暗い感覚を聞く。通り一遍な演奏よりよほど主張があって、おもしろく聴いた。ただし、歌手はビブラートなのか緊張なのかわからない、震えるような声を出していて私は好きじゃない。

 サロネンは明晰さをもってマーラーの譜面に光を照射しているのに対し、カサドシュは己の感覚を信じて熱くマーラーに挑戦している。北欧の光と南欧の陰はそれぞれのやり方でマーラーやその背後のウィーンという音楽の中心地に向かって新しいアプローチを試みているようだ。





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最終更新日  2006年02月22日 23時12分58秒
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