うーん・・・。
石ノ森章太郎生誕70周年・・・というかもうこのシリーズは浦沢義雄作品といった方がいいような。『ちゅうかなぱいぱい』から続く美少女ヒロイン路線の中ではしばしな地味な・・・という言い方をされる本作だが毎回の突然始まるミュージカルシーン、人間の姿をしている龍宮城のサカナたち、全話担当した浦沢義雄・・・シュールな展開と独特の台詞廻しは健在。
企業のリゾート開発事業により崩壊した龍宮城から脱出した乙姫(アイドルの中山博子、当時14歳)とその両親鯨大王(エド山口)と珊瑚女王(ティナ・グレース)ら魚介類たちの人間界での苦難をシュールに描いたミュージカルコメディである。
乙姫達が住む事になるのは亀(斉藤暁)を助けた少年浦島タローの家。今思ったが異世界の王族が下宿するというのは『ウメ星デンカ』的だなあ。
まだ半分の2クール分しかみていないがアジのタタキの女王に鯨大王が叩かれラストでは乙姫が女王様の格好で豆まきする第5話『アジ』という怪作(だが悲しい・・というのが浦沢脚本らしいところ)もあるが意外に前半はシュールさ抑え目のちょっとイイ話が多い。
第4話『サバ』第8話『タイ』第11話『カキ』第16話『サヨリ』あたりがイイ話でここに浅草版『ローマの休日』である第12話『エイ』(浅草の観音様がイイ仕事してます。このシーンは死ぬほど笑いました)を加えておきます。
あと個人的には亡くなった及川ヒロオの笑顔がいい第15話『クラゲ』もいいなあ・・。
浦沢度が全開になってくるのは2クールの後半にかけて。
農家の嫁問題を真面目に取り組くむ怪人ザ・農家が登場する第19話『アサリ』(ギャフンといわせる、という乙姫の死語台詞、キャバレーになる龍宮城、 農家でバイオ培養される乙姫
・・どこまでエスカレートするんだ)
勉強することが悪である龍宮城で「不良=勉強好き」のヒラメが無理矢理野外授業をする第20話『ヒラメ』もいい。 不良が勉強を教えてやるといって脅す描写
って・・。
ニセ乙姫の登場する第23話『ナマコ』は『ハイそれまでヨ』と『ホンダラ行進曲』が流れる植木等いや青島幸男リスペクト作品だったりする。
第24話『ウツボ』の蛍雪次朗演じるUFOが乙姫の子供を生みたい(UFOはぶつかると妊娠する特異体質。相手は男でも女でもいいらしい)と追い掛け回しウツボ(男である)の卵を出産(描写はないがとりあげたのは乙姫)する展開も凄い。
第25話「カサゴ」ではナルトを残されたラーメン(声:千葉繁)から麺類相談を受けたカサゴ(室井滋)が「麺類の母」になる浦沢らしい大傑作。
「 カサゴシズコです
」は当時もう通じなかったギャグ・・・室井は映画『トットチャンネル』(87)では笠置シズ子役やってたんですけどね。
「ラーメンでも」の「 でも
」とはどういうことなんだ!と怒る麺類のため怪人麺類の母となるのでした・・・ってイイ話だなあ。
しかし実はカサゴを利用しているのは 地球を麺類帝国にしようとしている「悪い麺類」たちの陰謀
で・・・の展開もおかしいが麺類がピクニックに行く中歌い踊る室井滋、底抜けに人のいいカサゴ=麺類の母を怪演かつ熱を入れて真摯に演じており(80年代に若い監督の自主映画に多く出演した室井らしい真面目な仕事ぶりだと思う)観ていて嬉しくなる。
この回、オチの決まり方もホラー調(?)で実に素晴らしい。
しかし・・・この作品の魅力は浦沢が歌詞を書いた多くの挿入歌、登場人物が歌うミュージカル・ナンバーが他の作品との大きな違い。
美しい『龍宮城』の代表曲『目を閉じて』
サカナの名前の逆さ言葉が呪文めいた楽しい『ログマ イタコタ』
人生を感じさせ少し哀しく切ないが前むきな佳曲『シーラカンスは昔』
ナンセンスかつロマンチックな『ラブラブラブ』
カキの時の替え歌が苦しい『龍宮城』らしいナンセンスで綺麗な『美しい心』
タイトルとは逆に前向きな行進曲『メソメソ』
なんでブロッコリーが食べたいのか『哀しみと空き缶』
ひたすら同じ歌詞を繰り返す喜怒哀楽の歌『私は哀しい』
ジャンプとゲームボーイよりも乙姫、時代を感じさせる『この世にまさしく』
なんども繰り返されるこれらの曲はつい憶えてしまい口ずさんでしまう名曲ぞろいだ。
これらの挿入歌は2枚のCDとなりプレミアになっていたが今はこれで聴く事が出来る。
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もう一点。なにげにHなフェチズム描写が充実している。
タロー以下の少年たちが「匂いフェチ」で乙姫の匂いを嗅ぐ描写がある。
第17話『カツオ』では少年たちが1人10円ずつだしてカツオの匂いを嗅ぐという描写がある。
また次の第19話『アサリ』では乙姫の匂いを嗅ぐ少年たちの描写がありそれにすっかり慣れているらしい乙姫がスナック菓子を食べながら「 匂いを嗅ぐのはいいけど鼻をならすのはやめてくれない
」とアンニュイに言う・・・怖ろしいなあ。
あと「母の愛」を吸う怪人の描写はそこだけ見るとロマンポルノのようだ(おいおい、・・・でもこの回『イセエビ』は母の愛について考える好編)。
・・・Hな事など ほとんど
望まない・・(『この世にまさしく』、「ほとんど」、なのがいいね)
乙姫を演じた中山博子は当時14歳。実はUFOに追いかけられる怯えの表情なんかが魅力なのですが周りの変な連中のため心ならずも真面目な抑え役を演じる羽目になる乙姫はそんな描写が少ないのが残念。
余談ながら乙姫役には管野美穂も候補だったとか。管野が演じていたら・・・この作品の現在の位置づけも大きくかわったかもしれない・・・その意味では非常に残念かもしれない。
不足しがちな浦沢分を補給できていやホントに満足・・・。
参考文献:『ハラッパでひみつきちVol.2』(世界で唯一、貴重な龍宮城データ研究本)
『愛ある限り戦いましょう!』(アマゾンでは新品がなかった・・)
あと全く関係ないけどCSで観ているとこの番組の後の番宣(『おしん』)でゴン、樫の木モックというかトンマルキというかU子さんというか・・ 丸山裕子さんがおしんをもの凄い顔で怒るのは胸が痛い・・
どうにかならないものか・・・。
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