主な登場人物
★で、常例としては、土曜日の午後から出かけて、南禅寺の 瓢亭で早めに夜食
をしたため、これも毎年欠かしたことのない 都踊を見物
してから帰りに祇園の夜桜を見、その晩は麩屋町の旅館に泊って、明くる日嵯峨から嵐山へ行き、中の島の掛茶屋あたりで持って来た弁当の折を開き、午後には市中に戻って来て、平安神官の神苑の花を見る。
★先まず身の丈からして、一番背の高いのが幸子、それから雪子、妙子と、順序よく少しずつ低くなっているのが、並んで路を歩く時など、それだけで一つの見物みものなのであるが、衣裳、持ち物、人柄、から云うと、一番日本趣味なのが雪子、一番西洋趣味なのが妙子で、幸子はちょうどその中間を占めていた。
いつも音楽会と云えば着飾って行くのに、分けても今日は個人の邸宅に招待されて行くのであるから、精一杯めかしていたことは云うまでもないが、折柄の快晴の秋の日に、その三人が揃そろって自動車からこぼれ出て阪急のフォームを駈け上るところを、居合す人々は皆振り返って眼を欹(そば)だてた。
★貞之助が笑ったのは、鯛とはあまり月並過ぎるからであったが、しかし彼女の説に依よると、形から云っても、味から云っても、鯛こそは最も日本的なる魚であり、鯛を好かない日本人は日本人らしくないのであった。井伏鱒二ベスト・エッセイ:1930~1983 2026.10.03
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