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2013/05/24
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 ライフワークの一つとして、古い時代のカクテルのことをあれこれ調べていると、自分でも思わず、「そうだったのかぁー」「へぇー、知らなかった」と驚くことがあります。現代のBarでは「そんなの常識」と思われていることが、調べてみれば意外と(いや、まったく)違っているのです。当然、現代のバーテンダーの皆さんでも、古い時代のカクテルに格別詳しい方以外は、そんな「常識を覆す事実」を存じておられません。

 先般出版された石垣憲一さんの名著「カクテル ほんとのウンチク話」(柴田書店、2008年刊)を読んで、驚かれた方(実は僕もその一人)も多いと思いますが、あのマルガリータの有名な「流れ弾伝説」に代表されるように、後世の「つくり話」を「常識」と信じ込まされていることさえあります。

 今回は、連載中の「全面改訂版:カクテル――その誕生にまつわる逸話」でも取り上げたカクテルのなかから改めて、 「常識のウソ」と歴史的事実のいくつかを 、出来る限り詳しく紹介したいと思います(連載内容との若干の重複はご容赦あれ)。

1.マティーニは当初、ジンとドライ・ベルモットではなかった

 「マティーニ」という名前が初めて本に登場したのは、石垣氏の著書によれば、1906年、ルイス・マッケンストゥラム(Louis Muckenstrum)氏が出版したカクテルブックと言われています(「パリで1904年に出版されたフランク・ニューマン(Frank Newman)氏の著書『アメリカン・バー』の方が早い」=出典:PBOのHPや欧米の複数の専門サイト=という主張もあるが、後者の本については1907年刊行説もあり、今なお決着は付いていません)。

s-s-Martini.jpg しかし、古い時代のカクテルブックを見ていると現代とは違って、 1930年以前のマティーニは、ほとんどがジンとスイート(イタリアン)・ベルモットでつくられているのです (おそらくは、マティーニがスイート・ベルモットを使ったマルチネス・カクテルにルーツを持つことがその大きな理由でしょうが…)。

 1930年代になると、ジン+スイート・ベルモット+ドライ・ベルモット、あるいはジン+ドライ・ベルモットという組み合わせのマティーニ(バリエーション)も誕生していきますが、主流はまだまだジン+スイート・ベルモットでした。ちなみにサヴォイ・カクテルブック(1930年刊)では、マティーニ・ドライ、ミディアム、スイートの3種を同等に紹介していますが、マティーニ・ドライで「ジン3分の2、ドライ・ベルモット3分の1」です。

ジン+ドライ・ベルモットのマティーニが主流になるのは、1930年代後半~40年代以降です。 そのきっかけは何だったのかは、僕はまだ正確には把握していませんが、今ではマティーニ材料の定番とも言えるノイリー社のドライ・ベルモットの米国への輸出が本格的に始まったことが大きいようです(このテーマについては、別の機会に改めて考察したいと思います)。

 当初はジンとドライ・ベルモットの割合は1:1くらいでしたが、近年は、ますますドライ化の傾向が強まっているのは、ご承知の通りです。最近では、ベルモットは5ml程度しか入れないBarがほとんどです。氷やグラスをベルモットでリンスするだけというBarも結構あります。しかし、個人的にはベルモットの存在感があってこそのマティーニと思います。ジンばかりが自己主張しすぎる極端なドライ・マティーニは、「マティーニであってマティーニでない」と思うのは僕だけでしょうか。


2.アレクザンダーやソルティ・ドッグ、ベースの関する意外な話
s-Alexander.jpg
 これも意外と「プロ」にも知られていない事実です。アレクザンダーと言えば、「1901年に英国のエドワード7世の即位式、あるいは1902年のアレキサンドラ王妃の戴冠式の際に献上されたカクテル」というのが、近年最も信憑性ある説です(出典:上記・石垣氏の著書)で、現代では「ブランデー+クレーム・デ・カカオ+生クリーム」という組み合わせで、女性にとても人気のあるショート・カクテルです。

 しかし、 1940年以前の欧米のカクテルブックに「アレクザンダー」が登場していれば、ジン・ベースになっていることが意外と多いのです。 なかには、「アレクザンダーNo.1、No.2」という形でブランデー・ベースと併記している文献もありますが、それでもNo.1はジン・ベースです。ブランデー・ベースが主流となるのは40年代以降です(主に欧州ではブランデー・ベースが、米国ではジン・ベースが発展していきました)。
s-s-Salty Dog.jpg
ソルティ・ドッグも現代ではウオッカ・ベースが当然ですが、1940年代後半の誕生当初はジン・ベースでした (欧米のカクテルブックでの初出は現時点で調べた限りでは、1953年刊の「ミスター・ボストン・バーテンダーズ・ガイド」です)。

 面白いことに、現代ではグラスの縁をスノー・スタイルにしますが、当時は、塩をそのまま放り込んで、グレープフルーツ・ジュースと一緒にステアしていました。

 ジン・ベースのソルティ・ドッグはその後、70年代前半まで幅をきかせます。 ウオッカ・ベースが登場するのは、手元にある欧米のカクテルブックでは、70年代に入ってからです (このきっかけもまだよく分かりませんが、当時、ブラディー・マリーやチチ、スクリュー・ドライバーなど、ウオッカ・ベースのトロピカルカクテル・ブームが始まっていたことにも影響されたのではないかと推察しています)。


3.ハイボールは必ずしもソーダ割りではなかった

s-s-Highball.jpg Barでハイボールと言えば、日本では通常、(ブレンディド・スコッチ)ウイスキーのソーダ割りを指します。しかし、 欧米では、昔から「****・ハイボール」というカクテルは必ずしもソーダ(炭酸水)ではありませんでした。

 実際、古い1890~1930年代くらいのカクテルブックでは、ベースの酒はウイスキーにこだわらず(もちろんウイスキーが一番多いですが)、また、水やジンジャー・エールなどで割っても「****・ハイボール」と呼んでいます。

 しばしば「ハイボール」の語源として、「ソーダの泡がプクプクと上へ立ち上がる様から」と記しているカクテルブックがありますが、水を使ってもハイボールと呼んでいたことからも、この語源解説はまったく根拠がないことになります(ハイボールの語源については、 「カクテルの逸話連載(45)」 ご参照を)。

日本でも1950年代までのカクテルブックには、水で割っても、ジンジャー・エールで割っても「****・ハイボール」と呼んでいた のは、欧米の影響の名残でしょう。しかし時代が進むにつれて、「****・ハイボール」という呼称はソーダで割ったロング・カクテルに限定的に使われるようになり、今日に至っています。


4.誕生時のマイタイには、パイナップル・ジュースは入れなかった

s-s-Mai-tai.jpg マイタイと言えば、「トロピカル・カクテルの女王」とも称され、暑い季節の人気カクテルです。1944年に、サンフランシスコのレストラン・オーナー、ビクター・J・バージェロン(Victor J. Bergeron)が考案したと伝わっています(出典:Wikipedia英語版ほか)。

 現代の標準レシピは、「ラム+オレンジ・キュラソー+パイナップル・ジュース+ライム・ジュース+シロップ、最後にダーク・ラムをフロート」(出典:NBAオフィシャル・カクテルブックなど)で、シェイクしてクラッシュド・アイスを詰めたサワー・グラス等で供されることが一般的です。

 しかし、 当初バージェロンが考案したレシピは「ラム+オレンジ・キュラソー+オルジェート・シロップ+ライム・ジュース(シェイクしてロック・スタイル)」で、パイナップル・ジュースやダーク・ラムはありませんでした。

 いつ頃、誰がパイナップル・ジュースやダーク・ラムを加えるレシピを考案したのかは、よく分かっていません(なおリサーチ中です)が、現代ではこのレシピが定着してしまいました。パイナップル・ジュースを入れるか入れないかは、好みの問題もあるのでどちらが正解とも思いませんが、バージェロンのオリジナルを味わってみたければ、やはりパイナップル・ジュース抜きで味わってみてほしいと思います。

【下】へ続く。



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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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