従って1910年代は、「ダイキリ」と言えども、グレナディン・シロップを入れるレシピも珍しくなかったようです。実際、1922年、ロンドンのエンバシー・クラブ(The Embassy Club)に勤めていたロバート・ヴァーマイヤー(Robert Vermeire)の著した「Cocktails: How To Mix Them」でも、ダイキリにはグレナディン・シロップが使われています( 写真
=Daiquiri @ Bar Cadboll)。
それがその後、シュガー・シロップやガム・シロップなど、白や透明なシュガー(またはシロップ)を使うレシピへと変化していきます。マッケルホーンが「ABC Of …」を編んでいた1910年代とその後の20年代は、そういう過渡期だったと言えます。ちなみにマッケルホーン自身も、その後の改訂版では、グレナディン・シロップとは書かず、単にシュガーと記すだけにとどめています。
ちなみに、1910~30年代の欧米の主なカクテルブックでの「ダイキリ」の登場状況は、以下の通りです。 ・「173 Pre-Prohibition Cocktails」(トム・ブロック著 1917年刊)米 → 収録なし(バカルディ・カクテルは登場するが) ・「Cocktails: How To Mix Them」(ロバート・ヴァーマイヤー著 1922年刊)英 ラム3分の2、ライム・ジュース3分の1、グレナディン・シロップ少々 ・「The Savoy Cocktail Book」(ハリー・クラドック著 1930年刊)英 ラム1グラス、ライム・ジュース2分の1個分(またはレモン・ジュース4分の1個分)、パウダー・シュガー1tsp(ティー・スプーン) ・「The Artistry Of Mixing Drinks」(フランク・マイヤー著 1934年刊)仏 ラム2分の1、ライム・ジュース2分の1個分、シュガー2分の1tsp ・「The Old Waldolf-Astoria Bar Book」(A.S.クロケット著 1935年刊)米 ラム1グラス、ライム・ジュース2分の1個分、パウダー・シュガー1tsp ・「Mr Boston Bartender’s Guide」(1935年刊)米 ラム45ml、ライム・ジュース1個分、パウダー・シュガー1tsp ・「Café Royal Cocktail Book」(W.J.ターリング著 1937年刊)英 ラム4分の3、ライム(またはレモン)・ジュース4分の1、ガム・シロップ3dash
【追記】マッケルホーンの「ABC Of …」の初版本では、ダイキリは「Dacqueri」と表記されています。同時代の他のカクテルブックでこのように綴る例は現時点では見当たりません。ただし、初期にはこういう表記(綴り)があったのか、それとも単なる誤記なのか、あるいはマッケルホーン自身が耳で聞いた音を文字に換えたのかは、今のところ定かではありません。