近年まで、このジェニングス・コックス考案説を裏付ける資料はあまりオープンになっていませんでしたが、「The Cocktails of The Ritz Paris」(Colin Peter Field著、2001年刊)は、1946年に出版された「The Gentleman's Companion」(Charles Baker Jr著)の内容を引用する形で、「ダイキリを考案したのは鉱山技師のジェニングス・コックスとその友人のハリー・スタウトである(二人とも著者のBaker氏自身の個人的友人だったとか)。カクテル名は、当時バカルディ・ラムの工場があった、キューバのサンチアゴ・デ・クーバ近くのダイキリ村に由来する」と紹介しています。
例えば、1919年に出版されたハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)の「ABC Of Mixing Cocktails」(1919年)。そのレシピは、「ラム3分の2、ライム・ジュース6分の1、グレナディン・シロップ6分の1」、また1922年、ロンドンのエンバシー・クラブ(The Embassy Club)に勤めていたロバート・ヴァーマイヤー(Robert Vermeire)が著した「Cocktails: How To Mix Them」でも、ダイキリにはグレナディン・シロップが使われています。
それがその後、シュガー・シロップやガム・シロップなど、白や透明なシュガー(またはシロップ)を使うレシピへと変化していきます。マッケルホーンが「ABC Of …」を編んでいた1910年代とその後の20年代は、そういう過渡期だったと言えます。ちなみにマッケルホーン自身も、その後の改訂版では、グレナディン・シロップとは書かず、単にシュガーと記すだけにとどめています。