Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2021/07/18
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カテゴリ: ITTETSU GALLERY
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 ITTETSU GALLERY:もう一つの成田一徹(261)~(280)

 バー・シーンを描いた切り絵で有名な成田一徹(1949~2012)ですが、実は、バー以外をテーマにした幅広いジャンルの切り絵も、数多く手掛けています。花、鳥、動物、職人の仕事、街の風景、庶民の暮らし、歴史、時代物(江戸情緒など)、歴史上の人物、伝統行事・習俗、生まれ故郷の神戸、小説やエッセイの挿絵、切り絵教則本のためのお手本等々。

 今回、バー・シーンとは一味違った「一徹アート」の魅力を、一人でも多くの皆さんに知ってもらいたいと願って、膨大な作品群のなかから、厳選した逸品を1点ずつ紹介していこうと思います(※一部、バー関係をテーマにした作品も含まれますが、ご了承ください)。
※故・成田一徹氏の切り絵など作品の著作権は、「Office Ittetsu」が所有しております。許可のない転載・複製や二次利用は著作権法違反であり、固くお断りいたします。


(261)酒の肴はギターの調べ  1989年
 ※当時、ヤングマーケティング研究所という会社が発行していた月刊新聞「美味しい生活探求誌:BIMY(ビミー)」の表紙のために制作された作品。一徹氏はこのをこの新聞の表紙絵を約1年間担当していた。プロデビュー間もない頃で、「求められたら(公序良俗に反しない限り)どんな仕事でも引き受けていた」という頃。切り絵のタッチはまだ初々しい部分もあるが、細かいディテールも正確に描こうとする姿勢がこの絵にも見てとれる。





(262)星の王子様  2006年
  ※毎日新聞夕刊で2006~07年に約1年間連載された梶川伸氏(毎日新聞編集委員)の記事「もういちど男と女」の1回ための挿絵。主人公が大学生の時、知り合った同じクラスの女子学生とのほろ苦い思い出を綴っている。切り絵は、この記事にも登場する(女子学生から贈られた)文庫本の表紙である。卒業から20年後、同窓会で再会したこの男女。その際、男性は女性からいきなりビンタをされる。その訳は?





(263)美しきものに毒あり  1994年
  ※「生協運動」という雑誌に掲載された里茂京生氏の連載エッセイ「小さな小さな良い子悪い子」の、ある回(94年10月号)のために制作された挿絵。テーマはキノコ。そのなかで、毒キノコに触れた部分にインスピレーションを得て描いた。筆者曰く「形や色が良いからと言って油断しないこと。ゆめゆめスタイルや美しさでもの(キノコ)を選ばないこと」という。出来上がった一徹氏の切り絵は、艶めかしい表情をたくわえた美キノコたちがこちらを見つめているという構図となった。





(264)雑誌「ダカーポ」みのもんた特集記事のための挿絵  2003年
  ※雑誌「ダカーポ」(1981年~2007年、マガジンハウスが月2回発行)の2003年3月19日号に掲載された「人物研究:みのもんた」のために制作した作品。みのさんが最近茶道にはまっているというコラムの挿絵として使われた。





(265)夜長のころ  1994年
 ※何という雑誌かは不詳(何か情報をお持ちの方ご教示を!)だが、「旬のたより」という連載(筆者はその雑誌の編集部)のための表紙絵。絵には大橋越央子さんによる「窓それぞれ人あり燈火親しめり」という一句が添えられている。眺めるこちら側の窓の下には、1冊の本とお酒のロックグラスが配置されているが、これは一徹氏ならではのこだわりだろう。





(266)窓辺の黒猫  1990年代半ば
 ※猫の切り絵をつくることが多かった一徹氏だが、これはなかでも「ザ・黒猫」という感じの作品。おそらくは、誰かのエッセイか何かの挿絵として制作したと思われる(何か情報をお持ちの方はご教示をよろしくです)。





(267)窓に映る枯木と月  1980年代半ば  水彩
 ※プロデビュー前、講談社フェーマススクールズの通信教育を受けていた頃の作品。おそらく、講座の課題として制作したと思われる。少し曇り空の夜。月明かりに照らされて、木造家屋の窓ガラスに、枯木と朧げな月が映っている。板壁には、この家の年輪を感じさせるようなシミがあちこちに。側には積まれた薪も。ただ「静寂」が画面から伝わってくるような絵。水彩だが、白、黒、グレー系の色のみを使っており、まるでモノクロームの水墨画のような雰囲気も漂わせている。







(268)「緋の襦袢」のための挿絵  1994年
 ※直木賞作家・篠田節子さん(1955~)の小説「ケースワーカー事件簿:緋の襦袢」(週刊小説<1994年10月28日号>誌上)の挿絵として制作された。画面全体にメリハリと奥行きを与えるため、衣服の部分にスクリーントーンをコピーした紙を意図的に多用した作品だが、その試みは成功していると思う。













(269)立食パーティーにて(習作5点)  1990年代前半
 ※没後、遺品の中から見つかった5枚の連作。画面には3人の人間がいる。立食パーティーでくつろぐ男と女。そばにはウエイター。男も女も、作品によって顔の向きや服装が微妙に違う。ウエイターの顔を描くか、それともシルエットにするか? そもそもバックは黒にするか、白く抜くか? シンプルな構図でも、これだけバリエーションが出来る(間違い探しのような5枚)。白と黒だけでどのように表現するのが一番効果的か? それを試しに制作して検証してみようと思ったのだろう。貴方はどれが一番お好みですか?





(270)愛の語らいⅡ  1990年代前半
 ※男女がテーブルをはさんで、お酒を飲みながら語らう姿を、一徹氏は何度かいろいろな構図で描いているが、これもそんな1枚。第44回で紹介した絵「愛の語らい」(下のコメント欄ご参照)とは男女の左右の配置が逆で、これはほぼシルエットで真横から描いている(女性の頭部に見える白い小さな丸は何だろう? イヤリングかな?)。






(271)Untitled  1990年代
 ※1~6…と数字が並んだ、切手シートのような紙。5番の部分だけが、今まさに切り取られてようにしている。さて、これは何を意図・意味した絵なのだろう? 貴方はどう思いますか?





(272)朝 顔  1990年代前半
 ※朝顔の切り絵を何枚も手掛けている一徹氏。これは(何度か紹介した)毎日新聞休刊日お知らせチラシのための作品。複数の花輪を描いた第33回の作品(下の画像ご参照)とは違って、大きな一輪をメインに扱った。






(273)試合結果を肴に  1990年代半ば
 ※居酒屋でよく見かける光景。テーブルを挟んで、3人の男女が、きょう(またはきのうの)試合結果を肴に、ひいきチームの戦い方をあれこれと議論している。帽子をかぶっている男が一番熱いのは言うまでもない。真ん中の男は「まぁ、なるようにしかならんで」とでも言ってるような。背中姿の女性は冷静に分析しながら、受け答えしているのか。さて、今年のタイガースはこれからどうなる?





(274)すだち  1989年  切り絵に筆で彩色
 ※1989年の秋、JTBの広報誌上の連載「今が食べ頃 食のHOT情報」のための挿絵として制作された。柑橘のすだちを描いているが、一見すると切り絵には見えず、肉筆画のようにも見える。切り絵をつくった後、筆ですだちの外皮にモノクロームで彩色を加えている。
 1989年と言えば、プロデビュー2年目で、表現手法でまだ試行錯誤していた時期。この絵の仕上がりを本人がどう思っていたのかは分からないが、この後、このような手法の絵はほとんどなくなったことからも、やはり「基本、白と黒だけで勝負するのが大切だ」と思ったのではないか。そういう意味では、切り絵を極める過程の一作品とも言える。





(275)江戸の遊女  1990年代前半
 ※半藤一利さんによる鼎談「新・歴史よもやま話」(1991~96年、文藝春秋刊・月刊「ノーサイド」連載)のために制作。江戸の庶民の暮らしについて語り合った回の挿絵として使われた。このような江戸の遊女を描くのは、浮世絵の模写切り絵を何度も手掛けている一徹氏にとっては得意分野。絢爛豪華で、艶めかしい雰囲気を見事にとらえている。





(276)ナイフ・ロケット  2007年
  ※プロデビュー(1988年)後まもなく、一徹氏は仲の良かった画家のウノ・カマキリさん、楢喜八さんと「八・一トリオ」というユニットを結成。そして生涯、3人で「トリオ展」を毎年のように開催した。これは2007年の銀座での「トリオ展」のための告知はがきのために制作した作品。切り絵作家の”命”でもあるカッティング・ナイフ(「デザイン・ナイフ」とも言う)をロケットに見立てた面白い絵だ。実際、この2000年代になると一徹氏の洗練された芸術性は、ロケットで打ち上げたような高い域に達し、バー業界のみならず、アート関係者の間でも絶大な評価を得るようになっていた。





(277)酒場で待つ女  2000年頃?
 ※発表媒体は不明だが、おそらくは、小説かエッセイの挿絵として制作した作品。横顔が美しい女性が立つ場所は、明らかに酒場(バー)の中だが、手にしているのは煙草とデミ・カップ。カップの中は酒かコーヒーか? 女性は、この酒場で誰かと待ち合わせするために、あるいは来るかもしれない誰かを待っているのか。それとも、男との逢瀬の後、一人で余韻に浸っているのか。一枚の絵からは様々な想像が搔き立てられる。



(278)ハンフリー・ボカート  1990年代後半
 ※Humphrey Bogart(1899~1957)は1940~50年代を代表する米国の俳優。ニューヨーク生まれ。高校中退後、軍役についたが、3年で除隊。その後ブルックリンの劇場で舞台に立ちながら、俳優の道を志す。1930年代からギャング映画に出演し始め、40歳を過ぎて主演した「マルタの鷹」(1941年)や「カサブランカ」(1942年)などで地位を確立。後年は演技派としても活躍し、「アフリカの女王」(1951年)ではアカデミー主演男優賞を受賞した。
 愛称は”ボギー”。「トレンチコートの襟を立て、紙巻きたばこをキザに咥えて吹かす」というスタイルは、トレードマークにもなった。酒豪としても知られ、愛飲酒はドランブイ(スコッチウイスキー・ベースの薬草系リキュール)だったという。私生活では生涯で4度結婚。4人目の妻、女優のローレン・バコールとの間には1男1女をもうけた。1957年1月14日、食道がんのため死去。
 なお、この連載では、ボカートは第14回「カサブランカ」でも登場しています(下の画像ご参照)。






(279)バッタのスケッチ  1993年  ペン画
 ※製図用の径0.1mmのペンを使った、かなり細密な絵。点描と線描を駆使して描いている。生涯、切り絵でも昆虫の絵を何枚も手掛けた一徹氏だが、ここまで細密なものは珍しい。トリノまさる氏との共著「ペンとカラーインクで描く」(グラフィック社・刊)のために、作例として描いた作品(同著の33頁に掲載)だが、1993年と言えば、すでに切り絵作家としての評価・知名度がかなり広がっていた頃。なぜ、一徹氏が(共著とは言え)このような本をつくったのかは、正直言って少し謎である。





(280)すき焼き  1990年代後半
 ※美味しそうなすき焼き鍋の絵。かなり横長の構図のため、例によって、月刊の「文藝春秋」または「小説現代」収録の小説かエッセイの挿絵として制作されたと思われる。



★過去の総集編ページをご覧になりたい方は、 こちらへ。

【Office Ittetsuからのお願い】成田一徹が残したバー以外のジャンルの切り絵について、近い将来「作品集」の刊行を計画しております。もしこの企画に乗ってくださる出版社がございましたら、arkwez@gmail.com までご連絡ください。

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うらんかんろ

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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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