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2021/10/08
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カテゴリ: ITTETSU GALLERY
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 ITTETSU GALLERY:もう一つの成田一徹(341)~(360)

 バー・シーンを描いた切り絵で有名な成田一徹(1949~2012)ですが、実は、バー以外をテーマにした幅広いジャンルの切り絵も、数多く手掛けています。花、鳥、動物、職人の仕事、街の風景、庶民の暮らし、歴史、時代物(江戸情緒など)、歴史上の人物、伝統行事・習俗、生まれ故郷の神戸、小説やエッセイの挿絵、切り絵教則本のためのお手本等々。

 今回、バー・シーンとは一味違った「一徹アート」の魅力を、一人でも多くの皆さんに知ってもらいたいと願って、膨大な作品群のなかから、厳選した逸品を1点ずつ紹介していこうと思います(※一部、バー関係をテーマにした作品も含まれますが、ご了承ください)。
※故・成田一徹氏の切り絵など作品の著作権は、「Office Ittetsu」が所有しております。許可のない転載・複製や二次利用は著作権法違反であり、固くお断りいたします。


(341)コートを着た漆黒の女性像  1990年代前半
 ※おそらくはミステリー小説の挿絵として制作された作品。黒を強調し、効果的に生かした女性像。カッティング・ナイフで切る本数は極力少なく、シンプルに。乱れた髪を表現した曲線(カーブ)が見事だ。顔はリアルには描かず、まるで未来から来た宇宙人ような雰囲気もある。同様な作品は極めて少ないため、実験的な意味合いもあったのだろう。











(342)クラシック・ファッションのための小品=4点(F)  1990年代前半
 ※この連載で第18回目、48回目、90回目、188回目、236回目と過去5回紹介してきたクラシック・ファッションの作品も今回が最後。いずれも切り絵技法書の「作例」としても掲載された。いずれも1920~30年代の欧米の女性ファッションをモチーフにしており、禁酒法時代(1920~33)の米国の富裕層の女性はこのようなファッションに身を包んでいた。
 なお一徹氏が、ファッション誌から依頼された訳でもないのに、なぜこうしたクラシックなファッションの作品を作り続けたのかは、私自身その理由を把握していない。どなたか生前に一徹氏から何か聞いておられたら、ぜひご教示ください。







(343)「恵美子の手袋」の表紙のために  1994年
 ※猫を抱いた幼い女の子。全体に左にやや傾いた姿で描かれ、動的な印象を与える。作家・山崎秀雄氏(1907~2005)のミステリー小説「恵美子の手袋」(ミステリマガジン94年7月号掲載、早川書房刊)のために制作された。原画と、雑誌で実際に掲載された表紙の「完成見本」を並べて紹介する。なお、この女の子が猫を抱く構図は、第102回でよく似た図柄=1996年制作=を紹介したが、こちらは身体を傾けない姿で描いている(下の画像参照)。







(344)運動会   1990年前半
 ※コロナ禍の学校では、運動会を開催するにもいろいろ制約があり、苦労しているようだ。青空の下で、何の気兼ねもなく開催できる日々が一日も早く来るように祈るばかりだ。このリレー競技中の子どもたちを描いた作品は、自著の切り絵技法書の「作例」として制作された。





(345)中秋の名月   1990年後半
 ※きょう9月21日は旧暦の8月15日、「中秋の名月」らしい。一徹氏の切り絵でこの「中秋の名月」をモチーフにした作品はないかなと探したら、1枚あった(カラーでは「月見」と題した作品=下の画像参照<第73回で紹介>=はあるが…)。
 ちなみに、「中秋の日」が毎年変わることは知っていたが、昨夜のテレビで気象予報士が「今年は満月ですが、中秋であっても、必ず満月であるとは限らない」と話していた(旧暦は月の満ち欠けも関係していたのに対し、新暦は月齢とは無関係であることが理由らしい)。また月見団子にも、関西と関東で違いがあるという。関西はやや細長い団子の上にアンコを添えたような見た目、関東はこの切り絵にあるような丸い団子。この歳でまた一つ賢くなった。






(346)サプライズ・プレゼント   1990年前半
 ※ドアを開けたら、花(チューリップ)を持った男性が立っていたという場面。「サプライズ・プレゼント」と名付けられたこのカラー作品は、切り絵技法書の冒頭、カラーの「作例」を紹介するために制作された。一徹氏は、カラーの花の切り絵は数多く手がけているが、花と人物を組み合わせた作品は意外と少ない。





(347)アイ・ジョージ   2008年
 ※この絵を見て誰かすぐに分かる人は、おそらく50歳代後半以上の方だろう。この連載で過去4回(ちあきなおみ<第31回>、青江三奈<103回>、松尾和子<131回>、フランク永井<197回>)紹介した、ビクターレコードのベスト盤企画CD用につくられた作品。
 歌手アイ・ジョージ(本名は石松譲治。1933年~)。香港生まれ。父親が日本人(石油会社の役員)で母親がスペイン系のフィリピン人だった。父親が出征したため10歳で日本へ渡るが、身を寄せていた父方の祖母が空襲で亡くなったため、事実上孤児となり、長野県の果樹園に引き取られた。
 終戦後、復員した父もまもなく他界したため、ジョージはそれからしばらく、パン屋、運送屋、ボクシング選手などさまざま職業を転々としたという。1953年、流しの歌手としてナイトクラブや米軍キャンプで歌っていた頃、仲間に勧められてテイチクレコードの歌手採用試験を受けて合格。黒田春夫という芸名でデビューした。
 しかし、歌謡曲歌手として売りたいレコード会社の戦略とジャズ歌手として生きていきたい本人の主張が嚙み合わず、テイチクを退社。1959年、当時、大阪最大のナイトクラブ「クラブ・アロー」に、外国人歌手の代理としてステージに立ったところ人気を得て、専属歌手となる。その頃、俳優の森繁久彌に見出だされ、森繁劇団の公演に「流しの歌手役」でも出演していた。
 1959年12月、アイ・ジョージとしてデビュー。再びテイチクとレコード契約を結んだ、NHKの紅白歌合戦には1960年から1971年まで12回連続出場した。レパートリーはラテン系の外国曲が中心だったが、1961年には自作曲「硝子のジョニー」が大ヒットした。他に代表曲は「赤いグラス」(1965年、志摩ちなみとのデュエット)、「別れのバラード」など。
 1980年代以降は目立った歌手活動はしておらず、2000年代以降に、自らの事業に絡む金銭トラブルの話題が週刊誌などに取り上げられたくらいで、芸能界からは事実上姿を消している。









(348)「十三トリス」のコースターのために   90年代後半~2000年
 ※「十三トリス」は1956年(昭和31年)開業という大阪屈指の老舗バーである。一徹氏も大学院での学生時代から通い始め、社会人になってからも、切り絵作家として独立してからも、大阪に来れば必ずと言っていいほど顔を出し、江川栄治マスターとは終生親交を深めた。
 そして時折り、江川マスターの求めに応じて店のコースターやテレホンカードなどのグッズ用のために、オリジナル作品を提供した。コースター用に制作した作品はもう少しあったと記憶しているが、残念ながら、いま手元に残されているのはこの3作品(コースター自体の形は丸型だった)。







(349)小説「カット」の表紙のために   1997年
 ※SF作家・草上(くさがみ)仁氏(1959~)の小説「カット」(早川書房刊、月刊「SFマガジン」1997年8月号所収)の表紙のために制作された作品。上が原画、下は雑誌上での完成予想見本。一徹氏と早川書房との付き合いはプロデビュー前からに遡り、「ミステリマガジン」「SFマガジン」誌上での小説の挿絵依頼は終生続いた。









(350)海の男たちⅡ   1980年代前半   木版画?or ゴム版画?
 ※当時勤務していた神戸港振興協会の広報紙のための作品。この連載の第199回でも紹介した4作品(下のURLからリンクできます)とほぼ同じ時期に制作されたと考えられる。一徹氏の手になる原画は残っておらず、印刷媒体の資料のみが現存するが、絵のタッチからして木版画かあるいはゴム版画ではないかと思われる。のちには同じような構図のものを切り絵でも制作している。





(351)ホット一息   1990年代前半
 ※この連載でも何枚か(例えば、第85回「福寿草」、第158回「サクラ」、第251回「かき氷屋の幟」など)紹介したが、一徹氏が当時、毎日新聞社からの依頼で作った「休刊日お知らせチラシ」のための切り絵。年間10枚ほど制作していた(ところで、このカップに入っているのはコーヒーなのか、紅茶なのか? 微妙な色合いで答えが分からない)。





(352)「イケズやわ」   2002年
 ※この連載の第331回「Rの幸せ」(下にリンク有り)でも紹介した漫画原作者・城アラキ氏の連載エッセイ「男を磨く男のコラム:男包丁」(2002~03年、週刊「漫画ゴラク」=日本文芸社刊=誌上)のために制作された挿絵。第8回「京都女は10年殺し」で使用された。
 「お兄さん、このあとディスコへ連れてってくれへん?」。旬の稚鮎を楽しむ鴨川べりの桟敷にいた筆者は、隣に座った舞妓のTちゃんにそう耳元でささやかれた。しかし、そのあと悩みに悩んだ末、結局、待ち合わせの場所には行かなかった。
 翌朝、京都駅に見送りに来てくれたTちゃんがまた耳元でささやいた。「お兄さんのイケズ」。「10年以上経った今でも胸が痛む。毎年、京都、夏、鮎っていうと思い出す」と記す筆者。で、「京女のイケズは10年殺し」なのだそうだ。
 ちなみに、私なら、たぶん誘いを断るような勇気はなかっただろう。周りから「無謀だ、リスキー過ぎる」と言われてもバー開業へ突っ走ったのと同様、「行かなくて後悔するなら、行ってから後悔しよう」と自分で自分を納得させて…。

 ・第331回「Rの幸せ」は→  こちらへ




(353)ジタン(GITANES)はいかが?  1990年代後半
 ※若い頃は誰しも格好をつけてタバコに手を出したがる。一徹氏も例外ではなかった。20~30代の頃は愛煙家だった。好んだ銘柄はよく覚えていないが、時には、当時「洋モク」(今では死語かも?)と言われた外国製のタバコを持っていた記憶がある。
 私の場合も基本は国産のショートホープかセブンスターだったが、時々、米国製のKENTやLARK、たまにこのフランス産のGITANESにも手を出した。しかし、40歳になる前に禁煙し、以来紫煙とは縁がない。一徹氏も(理由は生前聞き忘れたけれど)50歳を過ぎた頃からほとんど吸わなくなった。
 この作品は、おそらくは、誰かの小説かエッセイのための挿絵として制作されたと思われるが、現時点ではそれ以上の情報はない(※ちなみに2021年現在、GITANESはフランス国内ではなく、ポーランドで生産されているとのこと=出典Wikipedia)。





(354)ザ・シガー・ストーリー「ヘミングウェイ」のために  2002年
 ※一徹氏は、大ヒット漫画「ソムリエ」「バーテンダー」の原作者としても知られる城アラキ氏とタッグを組んで2001年から2002年にかけて、隔週刊の漫画雑誌「スーパージャンプ」(集英社・発行)誌上で、前代未聞の切り絵漫画「ザ・シガー・ストーリー:葉巻をめぐる偉人伝」を連載した。
 城さんの編む原作(話)に従って、漫画のようにコマ割りし、そこを隔週で12頁~16頁分の切り絵で埋めていく作業は、当時の一徹氏本人の言葉を借りれば、「それまでに経験したことがないくらい過酷で、エネルギーを使う作業」だったという。
 通常はA4サイズくらいの切り絵で制作には、どんなに早くでも1~2日かかる。この連載の原画サイズは、1ページが約B4サイズくらいの大きさ。コマ割りもあるので、通常の原画の2~3倍の時間と手間がかかった。なのでこの頃、とにかく寝る間も惜しんでひたすら机に向かい、毎日3~4時間の睡眠だったという。
 しかし、一徹氏は稀代の漫画原作者とのコラボを喜び、「絶対に成功させる」という意気込み通り、全10話を完走した。連載は後日、集英社から単行本にもなり、短期間で完売した(本は現在絶版だが、嬉しいことに最近、電子書籍として復刻されている)。
 本日紹介した切り絵は、第9話「ヘミングウェイ」の中で使われた1頁そのままの原画(本では95頁に)。実際の誌面では、言葉やセリフが加わっている(下の画像ご参照)。嬉しいことにこの原画は現在、神戸・三宮の「パパ・ヘミングウェイ」というバーの壁に飾られている。ぜひとも生の原画をご覧頂き、一徹氏の切り絵への「熱い情熱」を感じてほしい。






(355)「ポケットに栞を」のために  2001年
 ※一徹氏は、文芸評論家・清水良典氏が2000年9月から2003年5月にかけて中日新聞(&東京新聞)文芸面で月1回連載したエッセイ「ポケットに栞を」(計33回)の挿絵を担当した。これはその第14回(2001年10月2日付)のために制作された。この連載では、毎回必ず「グラス+何か」というモチーフで切り絵を作り上げた。10月なので、実った柿とカクテルグラスを組み合わせたが、このグラス自体はその奇妙な形からしても、一徹氏の想像の産物であろう。









(356)石川県観光PR記事のための3枚  1980年代後半
 ※プロデビュー直後の作品。雑誌の石川県の観光PR記事のために依頼されて制作した。それぞれ兼六園、加賀友禅、温泉郷(山中、山代、片山津、粟津、和倉など)をイメージして描いたという。切り絵の線にはまだ後年のシャープさは見られないが、ほのぼのとした感じがよく伝わってくる。絵のギャラは、まだデビュー直後の新人ということもあり、「(1枚当たり)バーに1回行って飲める程度」と安かったが、「ギャラに関係なく、仕事を頼まれること自体が嬉しかった。プロとして認められたみたいな気がした」と後年振り返っていた。





(357)異国にて  1990年代前半
 ※建物の窓から見下ろした街の景色。遠くには霞んだような山が見える。なんとなくヨーロッパのどこかの町のようにも見える。何かの小説かエッセイの挿絵として制作したのだろうか。制作に至った詳細が一切分からない。皆様の中で、この描かれた国・場所はどこなのか何か情報をお持ちの方はご教示願いたい。





(358)秋の農家の庭先で  1990年代前半
 ※切り絵技法書の「作例」の一つとして制作された作品。秋の景色に一番似つかわしい果物と言えば、やはり、柿ではないだろうか? 田舎へ行けばどこででも見かけそうな光景。長閑で澄み切った空気や心地よい風を感じるような絵である。





(359)菊 見  2005年
 ※一徹氏は2003年から2005年にかけて、銀座「和光」発行の月刊誌「チャイム銀座」で、神崎宣武氏(民俗学者)の連載エッセイ「風物詩でティータイム」の挿絵を担当した。この切り絵は、この連載の第27回「菊見」の挿絵として制作したもの(部分的にカラーにしているのは意図的なもので、絵が未完成という訳ではない)。
 かつては秋になると、全国各地で人形仕立ての菊を楽しむイベント「菊人形」が開催されたが、今では集客効果も乏しいのか、すっかり廃れてしまった。しかし、神崎氏によれば、江戸時代は、春の花見(桜)と並んで、秋には菊を愛でる「菊見」が盛んだったという。しかし、花の栽培技術が進んで、年中菊が楽しめるようになり、桜のような有難さも減った。結果、「菊見」は時とともに流行らなくなったという。年中菊が楽しめる現代はもちろん素晴らしいが、菊人形づくりのような職人的な技までこの先消えてしまうのかと思うと、少し悲しくなる。





(360)松 茸  1990年代前半
 ※秋にちなんだ絵(小作品)をもう一つ。味覚の秋の「王者」と言えば、やはり松茸だろう。近頃はスーパーのコーナーでも、外国産の方が幅を利かせている。今年の作柄はどうなのだろうか。一徹氏が描くと、松茸はこうなる。あの香ばしい匂いが伝わるような立派な逸品である。切り絵技法書の「作例」としても掲載された。



◆故・成田一徹氏の切り絵など作品の著作権は、「Office Ittetsu」が所有しております。許可のない転載・複製や二次利用は著作権法違反であり、固くお断りいたします (著作権侵害に対する刑罰は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金という結構重いものです)。

※「ITTETSU GALLERY:もうひとつの成田一徹」過去分は、 こちらへ



★過去の総集編ページをご覧になりたい方は、 こちらへ。

【Office Ittetsuからのお願い】成田一徹が残したバー以外のジャンルの切り絵について、近い将来「作品集」の刊行を計画しております。もしこの企画に乗ってくださる出版社がございましたら、arkwez@gmail.com までご連絡ください。

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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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