PR
Comments
Calendar
New!
歩世亜さん
New!
dokidoki1234さん
New!
feela11さんKeyword Search
Free Space
手話で〈謝りたい〉
昨年10月20日、堺市中区の自宅。
その日は次男が通う作業所は休みだった。
包丁を取りに台所に向かった母親。
背中に包丁を隠したまま次男と向かいあうと、
そのまま首を切りつけた。
腕をバタバタと動かして抵抗する次男の姿に、
涙があふれた。
それでも再び、包丁で切りつけた。
自らの首も切った。
数時間後に意識が戻ると、近くに住む姉にファクスを送った。
「たすけて」-。
大阪地裁堺支部で開かれた母親の被告人質問。
「息子はどういう存在か」。
弁護士がこう問うと、手話を交えながら説明し、目を赤くした。
〈かわいい子〉。
被害者である次男には、
顔を見て自分のしたことを〈謝りたい〉と訴えた。
証人として出廷した長女によると、
「(次男は)母親の言うことだけは『分かった』と素直に聞いていた」。
親子仲は良好だったという。
一命をとりとめた次男は事件後、施設で暮らしている。
事件の影響からか、母親の存在を怖がる一方、
その身を案じることもあるという。
自殺とどまった理由
2人に何があったのか。
判決などによると、母親には長女、長男、次男の3人の子供がいた。
平成25年に長女、29年に長男が独立すると、
以降は次男と2人で生活。
次男との意思疎通は簡単な手話で行われていたが、
自力では入浴や排泄(はいせつ)ができない次男の身の回りの世話は、
母親が一人で行っていた。
ただそんな母親も、
徐々に精神に不調をきたすようになっていた。
事件の3カ月前。
次男が作業所の旅行で家を空けた日を見計らい、
自殺しようと思い、行く当てもなく電車に乗った。
ある駅で降りてしばらく歩いていると、
深い谷にかかる橋にさしかかった。
橋から身を投げようとしたが、それ以上は体が動かなかった。
〈とにかく心が苦しかった〉。
公判で母親が当時を振り返った。なぜ自殺を踏みとどまったのか。
理由は次男の存在だった。
自分が死んでしまうと〈息子が1人になる〉。
長女は母親について「悩みや困りごとを相談できない性格」と述べた。
数年前に亡くなった夫との不和により、
「思っていることを抱え込むようになってしまったのかな」。
一方的な思い込み
厳しい生活だった。
それでも親子は互いを信じ、何とか生きていた。
だが事件直前、決定的ともいえる出来事が起きた。
日本年金機構から母親宛てに届いた通知。
親子の生命線だった障害年金の受給額に関するものだ。
母親は2カ月に1度、約16万円を受け取っていたが、
10月以降は約2千円減額される。
そんな内容だった。
しかし、いつまでたっても次男宛ての通知が届かない。実は今回、
年金が減額されるのは母親だけで、次男への通知は届くはずがなかった。
ただ母親の受け止めは違った。
「次男の年金が打ち切られる」。
生来の性格からか、
年金口座や生活費の管理を任せていた長女にも相談しなかった。
次男の年金が止まれば、収入のおよそ半分を失う。
「このままでは2人で生活ができない」。
早合点からの思い込みだった。
次男を1人にはできない。
将来を悲観した母親は、無理心中を決めた。
「自分を大切に、長生きを」
今年7月17日。
大阪地裁堺支部は懲役3年、
執行猶予4年(求刑懲役3年)の有罪判決を言い渡した。
「少なくとも半年程度、精神的に追い詰められていた」。
安永武央裁判長は判決理由で、母親の心情をこう推し量った。
身勝手な犯行を指弾する一方、
「2人の境遇や生活状況を踏まえると、
自殺する際に次男を殺そうとしたことはあまり非難できない」
とした。
最後に、安永裁判長は裁判員からのメッセージを読み上げた。
「2人とも死なずに済んだことは本当に良かった。
困ったことがあれば周りに相談し、自分を大切にして長生きしてください」。
法廷で母親は目元をぬぐっていた。
[産経新聞]
母親の障害年金の減額通知に、
途惑い、錯乱状態になったことは間違いないですね。
ご無事で本当に良かったです。 ☄