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September 4, 2005
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カテゴリ: 今日もいい日だ
高速道路で大型バイクの二人乗りが許されるようになったのは、確かごく最近のことでしたよね。先日も、愛車プジョーを飛ばして東名高速に乗るためインターに進入したところ、目の前に同じく東名高速に乗ろうとしていた二人乗りの大型バイクを見かけました。

ま、それはいいんです。しかし、ちょっとびっくりしたのは、その大型バイクの後ろに座っていたのが小学校3、4年生くらいの小さな女の子だったことです。どうやらお父さんが小さな娘さんを乗っけてバイクでツーリングするところだったらしいんですね。私なんぞは心配性ですから、「あんな小さな女の子を後ろに乗せて、時速100キロ出すのかよ!?」と思ってしまいましたが、見ているとその女の子も馴れたもんで、別に怖がっているふうでもなく、お父さんの肩にちょこんと両手を乗せてうまいこと背中にしがみついている。なんだか現代版の「子連れ狼」みたいな感じで、子供なりにちゃんと考えながら、無謀な父について行くといった風情です。

もちろん、客観的に言えば、少し危ない。でも、その時私が思ったのは、もし私があのお父さんの立場だったらどうかな? ということでした。もし私がものすごいバイク好きだったとして、自分の娘の小さな手が自分の肩をしっかり掴んでいるのを感じながら高速道路をバイクでのんびり走るとしたら、それはひょっとして、かなり楽しいことなのではないかと・・・。

ま、私にはバイクの免許もないし、まだ子供もいないので、そんなこと考えたって仕方ないのですけれど。

ところが、ごく最近、私の親友が大型バイクの免許をとり始めましてね。それでつい昨日もその教習初日のことを電話で詳しく聞かせてくれたんですが、そんな話を聞いていると、先日の「子連れ狼バイク父娘」の姿とも重なって、私もバイクに乗ってみたいなーなんて、ちらっと思ったり・・。

乗馬の楽しさというのがあるように、バイクという名の鉄の馬に乗って、その強大なパワーを自分の意のままに操ることができたら、それは多分、楽しいことなんじゃないかと思うのです。それに、何と言っても私は映画『イージーライダー』世代であって、心の中ではステッペンウルフの「ワイルドで行こう」が鳴り響いているわけですし。腕時計を投げ捨てて、レッツ・ゴー!ってなもんですわ。

さて、いつの日か、私も免許をとって鉄の馬に跨がり、「ワイルドで行く」ようなことがあるのでしょうか。ま、ないかな・・・。事故を起こしたらどうしようという恐れはもちろんありますし、あるいはもっと具体的に、免許とる時間はあるのか? とか、大型バイクを買うお金はあるのか? という懸念もある。さらに、大型バイクなんて買っちゃってどこに置くんだよ、という心配もありますし。そんなことをいちいち考えていたら、ちょっとこの夢は実現しそうにないなーという気がしてくる。残念ですけどね。

でも実現の可能性の薄い、儚い夢とはいえ、それを持ち続けていれば、何かの拍子にひょいと実現することもあるかも知れません。無理やり放棄することなく、心の片隅にそっと置いておくことにしましょうか。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



前回および前々回のあたりで、ミルズ&ブーン社が貸本屋さんで本を借りて読むような女性読者をターゲットとし、パターンの決まったロマンス小説を次々と出版して、1930年代あたりから業績を急速に上げて行ったというお話しをしました。つまり、総合出版社として1908年に創業した同社が、この頃から次第に「女性のためのロマンス出版社」の色合いを強めていったということなんですね。

ところで、この種の女性向けロマンス小説を書く著者の多くは、そのほとんどが女性です。しかもその大半が、いわば素人(主婦)作家。それは今も昔も変わらない圧倒的な傾向で、ミルズ&ブーン社のロマンスに関してもこの傾向がはっきりと当てはまります。実際、創業から間もない1912年の数字を見ると、この年同社は1000ものロマンス小説の原稿の送付を受けており、このうち75%は女性から、しかもその95%は無名の作家からのものでした。

ですからこの傾向を見てとったミルズ&ブーン社が、これからの時代、小説の執筆者として「女性」がよりクローズアップされるに違いないと考えたとしても不思議はないでしょう。実際、同社の小説部門を統括していたチャールズ・ブーンは、1913年に開かれたとある講演会の中で、はっきりとそのことを述べています。曰く、「貸本屋の状況を見ても分かるように、今や「小説」を享受している読者の大半は女性であるし、また小説を書く方面に関しても今や男性はその分野から身を引いてしまっているので、出版社としては(新興勢力たる)女性作家に頼らざるを得なくなるだろう」と。つまりチャールズ・ブーンは「素人女性作家」がミルズ&ブーン社にとってますます重要な位置を占めるようになるだろうということを、早くから明確に意識していたんです。

で、こういう女性作家重視の方向性ゆえにと言うべきか、ミルズ&ブーン社は1912年に面白い企画を打ち出しています。ま、一種の奨学金制度の導入なんですが、きっかけはメイシー・ベネットという21歳の女性が『輝かしき虚栄』というロマンスを書いてミルズ&ブーン社から出版し、これが好評をもって市場に迎えられたことでした。ちなみに、このベネットという人は貸本屋の店員さんで、その職業柄、どういうストーリー展開のロマンスが女性読者に受けるかよく知っていた。だからその辺の勘所をうまくついて、処女作にして評判になるようなロマンスを書くことができたんですね。ま、そんなこんなでミルズ&ブーン社はこのメイシー・ベネットのことを有望新人作家と見なし、彼女に対して第2作目の執筆に専念するようにと、1年分の奨学金を出すことにしたわけです。もっともこれは永続的な制度というよりは一回きりの思いつきだったようですが、このことが案外大々的に伝えられることになってしまって、世間の評判になったというわけ。当時、そういう新人作家助成制度自体が珍しかったのでしょうな。

もっとも、年額78ポンドの奨学金を得たにも係わらず、ベネットさんの第2作はものになりませんでした。で、こういう奨学金制度も長く続くことはなかった。しかし、ミルズ&ブーン社が一人の無名新人作家に示したこの気前の良さは、同社のイメージアップのために絶大な効果を上げることになったのは事実で、この後、多くの無名新人作家たちが自作原稿の投稿先の筆頭候補としてミルズ&ブーン社を選ぶようになったというのですから、同社は78ポンドというお金を上手に会社の宣伝費に用いたというべきでしょう。

それはともかく、このようにしてミルズ&ブーン社のもとには無数の無名女性作家たちから大量のロマンス原稿が持ち込まれることになったわけですが、同社ではこれらすべての投稿原稿に目を通すというのを「公約」にしており、実際、その公約を果たしていたと言います。彼らはこういう投稿原稿の中に将来のドル箱作家の卵を探していたんですね。たとえば1935年の数字を見ると、同社は531の原稿を受け取っていて、このうち37作を出版しています。そして採用された37人の新人作家の中には、後にミルズ&ブーン社の専属スターライターとなる4人の女性作家、すなわちエリノア・ファーンズ、ヤン・テンペスト、シルヴィア・サーク、ヴァレリー・ネルソンが含まれていた。ミルズ&ブーン社にとって、投稿原稿は宝の山だったんですな。

ところで、積極的に新人女性作家を発掘していこうというミルズ&ブーン社のもくろみは、以前お話しした「ジャック・ロンドン・コンプレックス」の産物でもありました。要するに、流行(男性)作家一人に頼っていては、出版社の土台を安定させることはできないという痛い教訓が、その根本にあるんですね。ましてや、1930年代のミルズ&ブーン社は2週間おきに数冊の新刊を出版していましたから、何年かに一度作品を書くような有名作家に頼ってなんかいられない。かくしてミルズ&ブーン社は、一人の有名(男性)作家への志向をあっさり捨て去り、多数の(無名)女性作家への依存を強めていったわけなんです。ま、悪い言い方をすれば、質より量で勝負する戦略をとったと言ってもいい。

で、質より量をとったからには、発掘した新人女性作家たちには是非とも沢山作品を書いてもらわないといけません。そこでミルズ&ブーン社ではとにかく彼女らを励まし、次から次へと作品を書くよう促すことにしていました。それでまた実際、ロマンス小説というのは一度コツを覚えてしまうと、書ける人ならいくらでも書けるものらしいんですな。例えば1936年組(1936年に同社が発掘した新人女性作家たち)の一人、フランシス・ウェルズリー=スミスは同社のために全部で89冊のロマンスを書いていますし、また同じく1936年組のメアリー・バーチェルとジーン・マクロードは、それぞれ130冊ものロマンスを同社に提供しています。彼女たちは、年間7作とか8作とかいうペースで書き続けたんですね。

ちなみに、こんな感じで多くの作品を書き飛ばしていた女性作家たちの収入は年間1000ポンドほどあったと言われています。これは当時の働く女性の収入としては相当なもので、ミルズ&ブーン社とその専属女性作家たちは、その意味で相互に互恵的な関係を築いていたと言っていいでしょう。本稿の冒頭で私は、ミルズ&ブーン社が「女性のためのロマンス出版社」の方向をとりつつあったということを言いましたが、この「女性のための」というのは、「女性読者のための」という意味だけではなく、書き手の側、すなわち「女性作家のための」という意味合いもあったんですね。

そして、この「女性作家のための」という側面を積極的に担っていたのが、ミルズ&ブーン社の小説部門を率いるチャールズ・ブーンその人でした。彼は自ら発掘した女性作家たちを励まし、彼女たちの創作上の相談を受けて、筋書き上のアドバイスをしたり、作品のタイトルを考えてあげたりしたばかりでなく、彼女らが望めば私生活上の相談にも乗った。彼女らから手紙がくれば必ず返事を出し、彼女らが彼に会いに来れば、たとえどんなに忙しくとも時間を割いて会った。で、そんなふうですから、もちろん彼は自社の専属女性作家たちからこぞって愛されたんですね。チャールズ・ブーンを喜ばすために良いロマンスを沢山書く。そんな意識が、多かれ少なかれミルズ&ブーン社の専属女性作家たちの間にはあったと言います。つまりそこには、「善き父親」と「父親の箱入り娘たち」というような、独特の親密な関係が築かれていたんですね。

ちなみに、これは余談になりますが、後の時代のロマンス批評の中には、「ロマンスは女性のための文学だ」などと言いつつ、ロマンスを出版している出版社に女性重役が少ないではないか、というようなことを批判する人がいます。しかし、そういうよく分からない批判を目にする度に、私は世界初のロマンス専門出版社であるミルズ&ブーン社における、チャールズ・ブーンとその秘蔵っ子たちの間の関係のことを思い出してしまうんです。女性の女性による女性のための文学、それがロマンス小説なのだから、女性が主体となって出版すべきだというフェミニストたちの理論的主張よりも、チャールズ・ブーンと彼の秘蔵っ子作家たちとの間で交わされた細やかな交流という現実の方が、ロマンス小説出版の原点としてふさわしいような気が私にはするのです。






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Last updated  September 4, 2005 05:20:27 PM
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釈迦楽@ Re[1]:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) ゆりんいたりあさんへ  いやあ、メッシ…
ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
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